目次

  1. 公益通報者保護法とは
  2. 改正公益通報者保護法 4つの改正ポイント
    1. 公益通報を理由とする不利益な取扱いの抑止・救済の強化
    2. 公益通報に適切に対応するための体制整備の徹底と実効性の向上
    3. 公益通報者の範囲拡大
    4. 公益通報を阻害する要因への対処
  3. 改正公益通報者保護法のスケジュール 

 消費者庁の公式サイトによると、公益通報者保護法とは、簡単にいうと、勤務先の不正を通報した人を保護する法律です。

 企業などの事業者による一定の違法行為を、パートタイム労働者、派遣労働者や取引先の労働者などのほか、公務員も含む労働者・退職後1年以内の退職者・役員が、不正の目的でなく、組織内の通報窓口、権限を有する行政機関や報道機関などに通報することを公益通報と定義しています。

 事業者が、公益通報をしたことを理由として労働者などを解雇した場合、その解雇は無効とされます。

 解雇以外の不利益な取扱い(降格、減給、退職金の不支給等)も禁止されます。事業者は、公益通報によって損害を受けたとして、公益通報者に対して損害賠償を請求することもできません。

 改正公益通報者保護法には以下の4つのポイントがあります。

  1. 公益通報を理由とする不利益な取扱いの抑止・救済を強化するための措置
  2. 事業者が公益通報に適切に対応するための体制整備の徹底と実効性の向上
  3. 公益通報者の範囲拡大
  4. 公益通報を阻害する要因への対処

 4つのポイントを詳しく紹介します。

 公益通報者を保護する上で最も重要なのが、通報を理由とした不利益な取り扱いを抑止し、万一発生した場合には迅速な救済を行うことです。

 今回の改正で、通報後1年以内(事業者が外部通報を知って解雇又は懲戒をした場合は、知った日から1年以内)の解雇または懲戒は、公益通報を理由としてされたものと推定されることになりました。これで、通報者が不利益な取扱いを受けた際に、その不当性を主張しやすくなります。

 さらに、公益通報を理由として解雇や懲戒を行った者に対しては、6ヵ月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金が科され、法人に対しても3000万円以下の罰金が科されることになります。

 また、一般職の国家公務員等に対しても、公益通報を理由とする不利益な取扱いが禁止され、これに違反して分限免職や懲戒処分を行った者には同様の直罰(6ヵ月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金)が新設されました。

 特に、常時使用する労働者の数が300人を超える事業者に対しては、公益通報を受け、調査・是正措置をとる業務への従事者を定めなければならないこととされていますが、今回の改正で、勧告に従わない場合の命令権及び命令違反時の刑事罰(30万円以下の罰金、両罰)を新設します。

 また、現行法の報告徴収権限に加え、立入検査権限を新設するとともに、報告懈怠・虚偽報告、検査拒否に対する刑事罰(30万円以下の罰金、両罰)も新設します。

 事業者と業務委託関係にあるフリーランスが公益通報者の範囲に追加されました。さらに、業務委託関係が終了してから1年以内のフリーランスも保護の対象となります。

 公益通報を妨げる行為や、通報者を特定しようとする行為への対処も強化されました。今回の改正では、事業者が、正当な理由がなく、労働者等に対し、公益通報をしない旨の合意を求めることなどによって公益通報を妨げる行為を禁止しています。

 そして、これに違反してされた合意等の法律行為は無効とされます。
また、事業者が、正当な理由がなく、公益通報者を特定することを目的とする行為をすることも禁止します。

 公益通報者保護法の改正は、これまでの運用で明らかになった課題に対応し、事業者に実効性のある体制整備を義務付け、通報者の範囲を拡大し、通報を阻害する要因を取り除き、そして何よりも不利益な取扱いに対して厳罰化と立証責任の転換を行うことで、通報者が安心して声を上げられる環境の整備を目指しています。

 2025年3月4日に国会に法案を提出し、4月24日に衆議院において修正議決され、6月4日に参議院において可決され、成立しました。

 改正法は6月11日に公布されました。この法律は、公布の日から起算して1年6ヵ月以内に施行されるため、2026年内にも改正法が施行される見通しです。