目次

  1. 事業継続力強化計画とは
  2. 事業継続力強化計画のメリット
    1. 補助金審査で加点
    2. 税制措置
    3. 金融支援
  3. 認定を受けられる中小企業の規模とは
  4. 事業継続力強化計画に書くべき内容
    1. 事業継続力強化の目的の検討
    2. 災害リスクの確認・認識
    3. 初動対応の検討
    4. ヒト、モノ、カネ、情報への対応
    5. 平時の推進体制
  5. 申請に必要な書類
  6. 申請書の入手先と提出先
  7. 認定までにかかる期間
  8. 備えは万全に

 事業継続力強化計画とは、中小企業が自社の災害リスクを認識し、防災・減災対策をするための第一歩となる計画のことです。経済産業大臣がこの計画を認定します。中小企業庁の手引き(PDF形式、1.71MB)が70ページ超ありますので、これをもとに概要を説明します。

事業継続力強化計画の概要(中小企業庁の手引きから引用)
事業継続力強化計画の概要(中小企業庁の手引きから引用)

 「中小企業の事業活動の継続に資するための中小企業等経営強化法等の一部を改正する法律(中小企業強靱化法)」が施行され、この制度がつくられました。計画に書く項目は次の通りです。

  • ハザードマップ等を活用した自社拠点の自然災害リスク認識と被害想定の策定
  • 安否確認や避難の実施方法など、発災時の初動対応の手順
  • 人員確保、建物・設備の保護、資金繰り対策、情報保護に向けた具体的な事前対策
  • 訓練の実施や計画の見直しなど、事業継続力強化の実行性を確保するための取り組み

 事業継続力強化計画は、単独の企業で申請する類型のほか、複数の企業が連携して計画・申請する「連携事業継続力強化計画」もあります。

 認定を受けた中小企業は、防災・減災設備に対する税制優遇、低利融資、補助金の優先採択など、さまざまな支援を受けることができます。具体的には次の通りです。

 たとえば、ものづくり補助金の申請をする場合は、審査をする上で加点されます。

 認定計画に従って取得した一定の設備等について、取得価額の20%の特別償却を受けることができます。事業継続力強化計画の認定を受けた後に、対象設備を取得する必要があります。

 日本政策金融公庫の低利融資、信用保証の別枠など、計画の取組に関する資金調達について支援を受けることができます。

 認定を受けられる中小企業の規模は、中小企業等経営強化法に定められており、以下の通りです。

認定を受けられる中小企業の規模
認定を受けられる中小企業の規模(中小企業庁の手引きから)

 計画には、災害時の取り組みとして、従業員の避難・被害状況把握の体制整備、社内体制の設定などの初動対策や、人員、設備、資金繰り、情報保全などで必要な対策の検討、従業員への訓練による計画実効性の確保などを盛り込むことになります。
申請書は、5つのステップを踏んで作りましょう。

事業継続力強化計画の申請書作成に必要な5つのステップ
申請書作成に必要な5つのステップ

 まず「何のためにこの取組を行うのか」を明らかにすることから始まります。目的については、自社の事業継続力を強化することで、サプライチェーンや地域経済全体に与える影響の軽減に役立てる点を踏まえて記載する必要があります。

 ハザードマップ などを活用しながら、まずは事業所・工場などが立地している地域の災害リスクを調べてください。そのうえで「ヒト(人員)」「モノ(建物・設備・インフラ)」「カネ(リスクファイナンス)」「情報」の4つの切り口から自社にどのような影響があるかを考えましょう。

 初動対応として、次の取り組みが求められます。

  • 人命の安全確保
  • 非常時の緊急時体制の構築
  • 被害状況の把握・被害情報の共有

 上記で調べた「ヒト(人員)」「モノ(建物・設備・インフラ)」「カネ(リスクファイナンス)」「情報」への対応を考えます。たとえば、社員の多能工化を進める、設備の耐震化、保険の加入、バックアップデータの取得などが考えられます。

記載例
記載例(中小企業庁の手引きから)

 事業継続力強化のためには、平時からの備えが大切です。平時からの取り組みを考えるときには次のことに注意してください。

  • 経営層の指揮の下、事業継続力強化計画の内容を実行すること
  • 年に1回以上の訓練を実施すること、内容の見直しを定期的に実施すること

 申請に必要な書類は、次の4つです。

  1. 申請書(原本)
  2. チェックシート
  3. BCP(事業継続計画)の参考書類がある場合は、その書類
  4. 返信用封筒(A4の認定書を折らずに返送可能なもの。返送用の宛先を下記、切申請書類と同程度の重量のものが送付可能な金額の切手を貼ってください。

 申請書は、中小企業のサイトで入手できます。このサイトに提出先も書かれています。このなかから、事業継続力強化計画をつくった企業の主たる事務所の所在地を管轄する経済産業局に提出してください。

 認定までには、標準でおよそ45日かかります。ただし、書類に不備があると、手続時間が長期化する場合があります。様々な優遇措置に影響する場合もあるので、余裕をもった申請をしましょう。

 中小企業庁は「事業継続力強化計画」の認定を受けた事業者を公表しています。詳しくはサイトを確認してください。
 新型コロナウイルス感染症の感染拡大など、予測できない事態はたびたび起こります。自然災害もその一つです。事業継続力強化計画を策定することで、いざという時の心づもりに役立ちます。