「外国人採用」が日本企業になじみやすい理由 選考と採用の注意点
少子高齢化の影響で、20~30代の採用はますます難しくなります。『知識ゼロからの外国人採用』(幻冬舎)の著者で、外国人雇用協議会理事の竹内幸一さんは「今後、外国人採用を積極的に行わない中小企業は生き残れない」と言い切ります。では、どのように進めていけばよいか、注意点を聞きました。
少子高齢化の影響で、20~30代の採用はますます難しくなります。『知識ゼロからの外国人採用』(幻冬舎)の著者で、外国人雇用協議会理事の竹内幸一さんは「今後、外国人採用を積極的に行わない中小企業は生き残れない」と言い切ります。では、どのように進めていけばよいか、注意点を聞きました。
外国人を採用するというと、文化や言葉の違いによって仕事がしづらいのではないか、ビザなどの手続きが面倒なのではないか、と不安に思われる方もいるかもしれません。
これまで長年外国人の採用をお手伝いしてきた経験から、こうした不安は「いずれも大きな問題ではない」と断言できます。というのも、「既に日本に住んでいる外国人」を対象にすれば、それらの課題は比較的簡単に解決できるからです。
今後、日本では働き手となりうる生産人口(15~64歳)がどんどん減っていきます。2015年には8000万人強でしたが、2030年には約7000万人、2040年には6000万人弱と、早いペースで減少していくことが分かると思います。同時に少子化の影響によって、20~30代の採用はますます難しくなります。
「社員の平均年齢が上がってきたので、若返りをはかりたい」「次世代を育成するために、若手を採用したい」といっても、それは難しくなる一方です。
実際に新卒採用向けリクルートサイトに求人を出しても、まったく応募が来ない、という企業も珍しくありません。今後会社を長く存続させたい中小企業は、外国人の積極採用に取り組むべきだと考えます。
ここでは単なる「労働者」としてではなく、「将来会社の中心となって長く働いてくれる若手外国人を雇用したい」と考えている方に向けて、押さえておくべきポイントや手続きをご紹介します。
日本に住んでいる外国人は、2020年6月時点の調査で約288万人にのぼり、ここ8年間は年々増え続けています。外国人が日本に住むためには在留資格が必要になります。在留資格はいくつか種類があるのですが、特に「就労が認められている在留資格」と「留学生向けの在留資格」に注目しましょう。
「就労が認められている在留資格」は、日本で働くことを目的とする外国人が取得できるもので、現在83万人が持っています。業務内容ごとに細かく分類が分かれていますが、中でも「技人国(技術・人文知識・国際業務の略)」と呼ばれる在留資格を持つ外国人は29万人で、日本への留学生は約28万人です。この留学生を新卒で採用し、技人国へと切り替えれば就労が認められます。
彼らは日本語がある程度できて、日本文化になじみあり、また日本で長く働きたいと考えている人がほとんどです。採用過程でも、採用後も、比較的日本の企業になじみやすい層といえるでしょう。
採用にあたってまずやるべきことは、次の4つです。
1~3をすべて実行すれば、充分に採用できる可能性があります。1や2は、日本語が使える外国人を対象とするので、求人や自社ホームページのコンテンツを外国語で書く必要もありません。「外国人を積極的に採用すること」を書くだけです。
3については、まずキャリアセンターの担当者にどうすれば外国人の学生を採用できるか、相談してみましょう。求人票を出すだけならウェブで簡単に済ませられますが、「この会社は外国人の採用に非常に前向きだ」と認識してもらうことで、優秀な学生を紹介してもらえる可能性も高くなります。
多少予算がかかっても手間を省きたい場合は、4がお勧めです。成果報酬なので、もし採用できなかった場合は費用が一切かかりません。また、入社した外国人が早期に辞めてしまうことを心配する場合は、一部を返金する制度を用意している人材紹介会社を選べば安心です。
選考過程でチェックすべき点は以下の3つです。
日本人を採用するとき同様、社風に合う人柄かどうかも大切ですが、注意したいのは日本語力の判断です。国際交流基金と日本国際教育支援協会が運営する「日本語能力試験」を基準にするケースが多く、N1~N5の5段階に分かれています。
N1は一番レベルが高く、新聞の論説なども理解できる日本語力が求められます。一般的には新聞や雑誌の記事が理解でき、自然なスピードの会話やニュースを聞いて内容を理解できるN2以上がビジネスレベルと言われます。
それでは、「日本語検定N2のAさん(日本在住歴10年、30歳)」と「日本語検定N3のBさん(日本在住歴1年、22歳)」、どちらかを選ぶとしたらどうでしょう。
着目すべきは、「日本在住歴の長さに対して、日本語力がどのくらいか」そして「今、何歳か」という点。Aさんは10年も日本に住んでいるのに、N2です。この先、伸びしろがあるかどうかわかりません。一方、Bさんはまだ22歳で、日本在住歴はたったの1年。これからグングン伸びる可能性が充分にあります。
外国人相手に「言わなくてもなんとなとくわかるだろう」というのは通用しません。仕事内容、勤務の流れ、残業がどれくらい発生するかなど、できるだけ詳細に説明し、理解してもらうことが大切です。
といっても、イチから資料を作るというのは手間がかかります。私がお勧めしているのは、現場の社員、特にその外国人と一緒に働くことになる先輩との面談の機会を設けることです。どんな働き方をするのか説明するだけでなく、直接本人から質問してもらうようにすればよいのです。
外国人求職者は疑問を解消でき、採用する企業側は質問内容から人柄や仕事に対する姿勢を判断することができ、一石二鳥です。
直接面接する場合はその場で、オンラインの場合は写真やPDFなどで送ってもらうとよいでしょう。その時、在留カードの種類も忘れずにチェックします。留学やワーキングホリデー(特定活動5号)の在留カードなら、技人国への切り替えが必要です。いくら人柄がよくて日本語が上手でも、不法滞在者は決して採用してはいけません。忘れずに在留カードを確認しましょう。
「外国人を採用したら、何か特別な手続きが必要なのではないか」と思われるかもしれませんが、技人国の在留資格を持っている場合は簡単です。厚生労働省に「外国人雇用状況の届出」をするだけです。
これはハローワークのウェブサイトから登録ができます。その他の雇用保険や健康保険、年金など、入社時に必要な手続きは、すべて日本人を採用した場合と同様です。
ただし、技人国を持っていても、その期限には注意が必要です。例えば、転職直後に技人国が切れるため、入社前に更新手続きを行うケースなどがそれにあたります。まだ前の会社に籍を置いている場合は、前の会社と転職後の会社、両方の情報を書類に記載し、押印欄には前の会社の判を押します。また、前の会社を辞めてから次の会社で働くまでの無職期間中に期限が切れるケースでは、転職先の企業が入社前に更新手続きをすることも可能です。
また、留学の在留資格などから技人国に切り替える場合は、本人または雇用する企業から変更許可申請をする必要があります。こちらは企業の規模によって多少用意する書類が異なるので注意しましょう。グローバルパワーのサイトにチェックリストを用意しています。
外国人を従業員として迎えるにあたって、2つの点を心がけてください。
社内で拒絶反応や偏見がある可能性もあります。トップから社員に向けて、なぜその外国人を採用したのか、その人の持つスキルや知識、どういった活躍を期待しているのかをしっかり共有します。
中には、日本語があまり堪能ではないからと外国人の能力を過小評価する人もいるので、「充分な能力を持っていること」は必ず伝えましょう。
ここは、見落としがちな点です。外国人が帰省する場合、移動に長時間かかる場合もあります。
たとえば、インド出身の外国人が家族に会いに帰るとして、成田空港からデリーまで直行便で約9時間半かかります。さらに空港から実家までが遠く、8時間かかるとしたらどうでしょう。乗り継ぎや時差などを考慮すると、移動だけで丸1日以上かかるかもしれません。
4日の連休をとっても、移動に丸2日取られたら、家族と過ごせるのは2日ほど。家族想いの彼らにとっては、短すぎるでしょう。「有給を長く取りたがる=怠けている」という意味ではないことを理解しましょう。
既に日本に住んでいる外国人を対象にすれば、ビザや言葉の違いは大きな問題になりません。また海外からの風を入れることで、グローバル展開など新しい動きが見えることもあるでしょう。
2020年には新経済連盟と外国人雇用協議会が後援する『Global one team Award(グローバル・ワン・チーム・アワード)』が初めて開催され、外国人を積極的に採用した企業が表彰されています。
最優秀賞とオーディエンス賞受賞を受賞したのは、ロボットパッケージ製造販売事業を営むロボコム・アンド・エフエイコム(福島県相馬市)。14名の外国籍のエンジニアが在籍し、会社の成長を支えています。
「少子化で若手が採用できない」と嘆く前に、「世界へと視野を広げて若手を採用する」という方向に転換し、会社の継続的な成長を目指しませんか。
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