アウトバウンド営業とは インバウンド営業との違い・新規開拓のコツを解説
アウトバウンド営業とは、広告やDMなどを用いて、企業から消費者へアプローチする営業手法です。B2Bの企業や業界などで改めて注目を集めています。本記事では、アウトバウンド営業について、書籍『インバウンド マーケティング』の訳者が、インバウンド営業との違いなどを交えて解説します。
アウトバウンド営業とは、広告やDMなどを用いて、企業から消費者へアプローチする営業手法です。B2Bの企業や業界などで改めて注目を集めています。本記事では、アウトバウンド営業について、書籍『インバウンド マーケティング』の訳者が、インバウンド営業との違いなどを交えて解説します。
目次
アウトバンド営業とは、インバウンド営業の対のコンセプトであり営業手法です。
マーケティングの現場では近年、「インバウンド」と「アウトバウンド」というタームが多用されていますが、元々は筆者が翻訳させていただいたアメリカのマーケティングテキスト『インバウンド マーケティング』(すばる舎リンケージ)で、著者のブライアン・ハリガンとダーメッシュ・シャアが提唱したものです。
『インバウンド マーケティング』の中で両氏は、「マスマーケティングの時代は終わった」とし、これまでの従来型のマーケティング手法である企業から消費者への一方通行的な情報伝達スキームは今や効果的ではなく、今後は消費者がみずから情報を探して企業へアプローチするマーケティングスキームが主流になるだろうと主張しました。
つまり、従来型の企業から消費者への一方通行的な情報伝達スキームを「アウトバウンド」とし、消費者の方から企業へアプローチするマーケティングスキームを「インバウンド」としたのです。
よって、アウトバウンド営業とは、企業から消費者へアプローチするスキームをベースにした営業手法であり、インバウンド営業とは、消費者から企業へアプローチしてもらうスキームをベースにした営業手法です。
アウトバウンド営業の具体的な手法としては、テレビ・ラジオ・新聞などのマスメディアを使った広告、テレマーケティング、ダイレクトマーケティング、電子メールDM、FAXDM、ポスティング、訪問営業などがあげられます。
一方、インバウンド営業には、ブログを使ったマーケティング、SNSマーケティング、動画マーケティング、ホワイトペーパー(白書)を使ったマーケティングなどがあります。
では、アウトバウンド営業のメリットとデメリットは何でしょうか。インバウンド営業のそれと比較しやすいように、表にまとめたのでご覧下さい。
メリット | デメリット | |
---|---|---|
アウトバウンド営業 | 企業の都合や目的にあわせて自主的に展開できる | 過度に行うと消費者に反発される可能性がある |
インバウンド営業 | 他社との差別化が図りやすい | 効果が出るまでに相応の時間・労力・コストがかかる |
以下、それぞれについて詳しく解説します。
アウトバウンド営業の最大のメリットは、企業の側で一方的にイニシアティブをとれることです。つまり、企業の都合や目的に合わせて自主的に展開できることです。
インバウンド営業の場合、企業や製品・サービスの存在を消費者に見つけてもらう必要があり、企業の都合や目的に合わせて展開させることがほぼ不可能です。
一方、アウトバウンド営業のデメリットは、過度に行った場合などに消費者に反発される可能性があることです。
最近は少なくなりましたが、一方的にかけてくるテレマーケティングや、資源の無駄遣いのようなFAXDM、大音量で情報を発信するテレビコマーシャル等々、やりすぎると逆に消費者にそっぽを向かれる可能性すらあります。
インバウンド営業のメリットは、消費者に反発される可能性が少ないことと、他社から大きく差別化できることです。
インバウンド営業では、消費者に見つけてもらうためのコンテンツを用意する必要がありますが、消費者に有益な優れた独自コンテンツを用意でき、消費者と良好な関係が構築できれば、他社には真似できない強力なツールになります。
一方、インバウンド営業のデメリットは、効果が出るまでに相応の時間と労力、場合によってはコストがかかることです。
特に他社にはない優れたコンテンツを用意するにはそれなりの時間と労力が必要です。
ブログや動画などのコンテンツを使ったインバウンド営業をする場合、効果が出るまでに数カ月程度、長い場合で1年程度かかるケースもあります。
アウトバウンド営業とインバウンド営業のメリットとデメリットを踏まえた上で、改めてアウトバウンド営業の意義について考えてみましょう。
アウトバウンド営業は、どのようなケースや会社において行われるべきでしょうか。
この世にまだ存在していないものを販売する場合、選択肢はアウトバウンド営業一択になるでしょう。
筆者のクライアント企業で、ヨーロッパから特殊な建設資材を輸入している会社があります。
その建設資材はイタリアの会社が開発したもので、日本ではまだ販売されていない未知の製品です。当然ながら日本ではその製品の存在を知っている人はゼロです。
そのようなケースにおいては、インバウンド営業はほとんど効果が期待できないでしょう。アウトバウンド営業で積極的にアピールする必要があります。
ライフサイクルが短い製品・サービスを販売する場合もアウトバウンド営業がおすすめです。
ライフサイクルが短い製品・サービスとは、例えば映画などのコンテンツ、コンサートなどのイベント、スポーツ観戦等々です。期間限定製品やシーズン製品などを含めてもいいかもしれません。
こうした製品・サービスを販売する場合も、インバウンド営業では対応が困難です。
すぐに結果が欲しい場合もアウトバウンド営業がおすすめです。
上述の通り、インバウンド営業は結果が出るまでに相応の時間がかかります。例えば大量の在庫をすぐに処分したい場合や、売上がすぐに欲しいといった場合、アウトバウンド営業が適しているでしょう。
実際にアウトバウンド営業を行う際は、次のようなポイントをおさえるといいでしょう。
アウトバウンド営業を行う際の最初のポイントはターゲットを絞ることです。
アウトバウンド営業で陥りがちなのは、ターゲットを絞らずにやみくもにアプローチをしてしまうことです。
マッチしないターゲットへメッセージを送っても、効果がないばかりか、かえって反発を招く可能性も生じてしまいます。
筆者のクライアントに建物の構造計算専門の設計事務所がありましたが、意匠設計専門の設計事務所のリストを入手して定期的に葉書DMを送っていました。多い時で60%もの反応があり、関係者全員で驚いたことがあります。
このようにターゲットを絞り、適切なメッセージを送れば高い反応が期待できます。
ターゲットを絞るときは、まずペルソナを設定しておくとスムースにやりやすくなります。
ペルソナとは、製品・サービスの訴求先として理想的な人物像を具体的に表したものです。
年齢、性別、職業、家族構成、趣味、主義、信条などといった点を明らかにした仮のイメージと言ってもいいでしょう。
ペルソナを設定することで、おのずとターゲットが絞れてきます。
アウトバウンド営業を行う際の第二のポイントは、受け手の立場に立ってメッセージを書くことです。
アウトバウンド営業で陥りがちなのは、「ウチの製品はこんなに凄いんです。ぜひ買って下さい」などと、自分の立場に立ってメッセージを書いてしまうことです。
そうした一方的なメッセージを書くのではなく、「弊社の製品を使っていただくとコストが○○%削減できます」「営業効率が○○程度向上します」など、受け手の立場に立ってメッセージを書くことが重要です。
受け手の立場に立ってメッセージを書くためには、メッセージを送る候補者に実際にメッセージを見てもらい、反応を検証することが有効です。
可能であればパネル調査やアンケート調査などで事前に検証するといいでしょう。
適切な媒体を選ぶことも重要なポイントです。適切な媒体とは、定めたターゲットにもっともリーチでき、結果を出せる媒体を指します。
ただ、ここで注意したいのが「この企業には、こういう媒体が向いている」「その製品なら、あの媒体が有効」と一様に成功パターンが決まっているわけではないことです。
適切な媒体をどのように選べばいいのか、これは実に難しい問いであり、筆者の答えは、「試行錯誤しながらより適切な媒体を探し続けるしかない」です。
筆者のクライアントに都心で営業している整骨院がありました。腰痛治療を専門としていて、集客方法を相談されました。
当初はワードリスティング広告で「○○駅 腰痛」などのキーワードでホームページに集客していたのですが、競合が多くてなかなか結果が出せませんでした。
そこでターゲットを20代から40代の女性に絞り、電子メールDM、タウン雑誌、フリーペーパー、女性用ウェブマガジン、オプトインメール、ソーシャルメディア広告等々、思い付く媒体のほとんどを試しました。
その結果、一番集客できたのは最寄り駅での無料体験チケット付きティッシュだったのです。
そのように、試行錯誤をせずに最初から適切な媒体を選ぶのは非常に難しいのです。よって、使えそうな媒体をリストアップし、一つずつ試すほかありません。
効果を検証する期間を設け、その間にどのくらい顧客を獲得できたのか、逆にどのくらいの費用がかかったのかを集計し、その割合を比較しながら適切な媒体を探していきましょう。
アウトバウンド営業を展開するに際し、ITツールの導入が必要だとする声を少なからず聞きます。
筆者は、ITツールはあればあった方がいいが、必ずしもすべての企業に必要であるとは考えていません。
なぜなら、業界や業態によっては、人脈営業や電話営業、あるいは訪問営業といった古典的な営業手法の方がはるかに有効だからです。
ですので、ITツールの必要性については、その会社の業界や、営業スタイルによると考えています。
アウトバウンド営業はもう古い、今やインバウンド営業が主流だという声を少なからず聞きます。
筆者は、書籍『インバウンド マーケティング』の訳者ですが、アウトバウンド営業は決して古びておらず、今もなお有効だと考えています。
アウトバウンド営業とインバウンド営業とは、決して利益相反の関係にあるわけではありません。両者はむしろ、それぞれの弱みを補いあう補完関係にあると言うべきでしょう。
筆者が知る企業でも、インバウンド営業で長期的に潜在客を囲い込み、顧客に育て上げる一方で、短期の売上獲得やイベントなどでアウトバウンド営業を活用し、上手に使い分けているといった企業が少なくありません。
アウトバウンド営業とインバウンド営業を組み合わせるときは、それぞれの持ち味を十分に理解し、その上で最適なところで最適な時にそれぞれ活用することがポイントになります。
両者をしっかりと理解し、どちらの営業手法にするべきかではなく、広い視野を持ち、それぞれの強みを活かすようにしてみて下さい。
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