目次

  1. 関税とは?初心者でもわかる簡単な解説
    1. 関税の種類
    2. 関税がかかる品物は?
  2. 関税の納付に関する基礎知識
    1. 関税の納付者は輸入申告者
    2. 納付時期は輸入申告と税関の審査・検査が終わった通関時
    3. 関税は銀行や郵便局で納付するのが一般的
  3. 事業における関税が輸入コストに与える影響
  4. 関税の計算方法
  5. 関税を理解して事業拡大に役立てよう

 関税とは、海外から輸入されるモノに対してかけられる税金です。

 なぜ関税というものがあるかというと、海外から安価な商品が日本に輸入されると、その商品と同様の日本製商品が相対的に高価になり、購入されなくなる恐れがあるため、そしてそのことから国産品と同等の価格になるよう調整する必要があるためです。

 つまり、関税には日本の産業と自国産品を保護する役割があります。

 ひと言で関税と言ってはいますが、実はたくさんの種類があり、大きくは、「法律で定められている関税」と「条約で定められている関税」に分けられます。

 法律で定められているものは国定税率と呼ばれる関税のことであり、次のようなものがあります。

  • 基本税率:国内産業の状況などを考慮し、長期的な視点で設定された標準的な税率です。
  • 暫定税率:政策上の必要性から、基本税率を一時的に修正するために設定される税率で、基本税率より優先して適用されます。
  • 特恵税率:開発途上国・地域からの輸入品に対し、原産地証明書の提出などの条件を満たす場合に適用される税率です。
  • 簡易税率(入国者の輸入貨物に対して適用):旅行者が携帯または別送で持ち込む貨物に適用できる税率で、関税や消費税を総合して設定されています。
  • 簡易税率(少額輸入貨物に対して適用):課税価格の合計が20万円以下の少額の輸入貨物に適用できる税率です。

 そして、条約で定められている関税には次のものがあります。

  • 協定税率:WTO加盟国・地域に対し、一定以上の関税を課さないことを約束した税率で、国定税率より低い場合に適用されます。
  • EPA税率(経済連携協定等に基づく税率):日本が経済連携協定(EPA)を締結している国からの産品に適用される税率で、各協定の条件を満たす場合に適用されます。

 その他には、「差額関税」「スライド関税」「季節関税」「関税割当制度」「特殊関税」などがあります。関税が免除されたり、減税されたりする制度もあります(参照:1105 関税率の種類〈カスタムスアンサー〉丨税関)。

 関税がかかる商品を「有税品」、かからない商品のことを「無税品」といいます。

 有税品である顕著な商品として挙げられるものには、食品、衣料品、革製品、靴などがあります。一方、無税品には、化粧品、電気機器、時計、楽器、家具などが挙げられます。

 それでは、身近にある品物の関税率はどのくらいなのか見てみましょう(参照:1204 主な商品の関税率の目安〈カスタムスアンサー〉|税関)。

商品 関税率
ミネラルウォーター 3%
ソーセージ 10%
チーズ 22.4~40%
アイスクリーム 21~29.8%
革製ハンドバッグ 8~16%
革靴 30%、または4,300円/足のうちいずれか高い税率
繊維製品のジャケット 8.4~12.8%
毛皮のコート 20%

 なお関税には、従価税、重量税、混合税の3種類の計算方法があります。

 従価税とは、課税価格に関税率を掛けた税額です。例えば、課税価格が100万円、関税率が6%の場合、関税額は6万円(100万円x6%)です。

 重量税は、輸入される商品の重量に関税率を掛けた税額です。ウイスキー、ブランデー、リキュール、ワインやペットフードは重量税が適用されます。

 混合税は、従価税と重量税を合わせたものです。

 関税は具体的に誰がいつ、どのように納付するのでしょうか。ここでは関税の納付において知っておきたい基本を解説します。

 関税を納税(納付)する者は原則として貨物を輸入する者、つまり輸入申告者です。

 一般的な輸入申告では、輸入者の申告によって関税額が確定します。輸入者が、私が輸入する商品の関税はいくらですよと、自ら関税額を算出して税関に対して申告する方法で、これを「申告納税方式」といいます。業として商品を輸入する者は、申告納税方式で商品を輸入します。

 そして、納付すべき関税額が専ら税関長の処分により確定する方式を「賦課(ふか)課税方式」といいます。例えば、海外から日本に入国する際、入国時に携帯、または別送することによって輸入するモノの関税や、郵便物に対する関税が賦課課税方式にあたります。

 関税の納付時期は、輸入申告後、税関の審査・検査が終わった時です。

 一般的には輸入者が通関業者に輸入申告業務を委託し、通関業者が輸入者に代わって税関へ輸入申告をします。税関が書類審査や貨物検査を行い、輸入しても問題ないと判断すると、関税額が記載された納付書が発行されるので、輸入者はそれを持って納付します。そして、納付済であることを示す領収証書を税関に提示すると輸入が許可されます。

 関税は、関税額が記載された納付書を銀行や郵便局で納付する他にも、「マルチペイメントネットワーク方式」や「リアルタイム口座振替方式」などの方法があります。また、国際郵便で輸入した場合は、配達に訪れた郵便局の配達員に納付します。

 関税は、輸入コストに影響を与えます。つまり、関税額はコストとして考えなければならないのです。その点を間違えると、関税額分利益が少なくなってしまいます。

 輸入コストを下げるためには、関税率を低く抑えるための方法を知っておく必要があります。

 関税率の種類の中の、協定税率、特恵税率やEPA税率を積極的に適用することで関税率を低く抑えることができます。そのためには次のような特定の条件を満たさなければなりません。

  • 協定税率
    WTOに加盟している国は、お互いの国から輸入した商品に対して一定率以上の関税を課さないことを約束しています。この税率は一般的に低い傾向にあります。但し、輸入申告時に、WTOに加盟している輸出国原産品ということを証明しなければなりません。WTOに加盟できるのはすべての国または独立関税地域ですが、2025年1月現在の加盟国は166カ国と地域です。

  • 特恵税率
    開発途上国からの輸入に適用される関税率であり、開発途上国の輸出を支援しましょうという趣旨の関税率です。この税率も協定税率同様、輸入申告時に開発途上国原産品であることを証明しなければなりません。証明の方法は輸出国の指定機関が発行した原産地証明書を提出することです。

  • EPA税率(経済連携協定等に基づく税率)
    経済連携協定等を締結している国から輸入する商品に対して適用される税率です。一般的に関税率が一番低い傾向にあります。この税率を適用させるためには、経済連携協定毎に決められている詳細な要件をクリアしていなければならないとても複雑な税率なのです。その大変な壁を超えると低い関税率を適用することが出来ます。日本では2025年2月現在20の経済連携協定が発効されています。

 商品を輸入する際にかかる税金は、関税の他に消費税があります。これは、商品価格に、日本の港に到着するまでの運賃等と関税額を加え、消費税率を乗ずることで算出されます。ただし消費税は、国内でその商品を販売することで戻ってきます。そして最終的に、納税義務者である事業者が消費税を国に納めることになります。

 関税の申告方式には、「申告納税方式」と「賦課課税方式」がありますが、ここでは、一般的な商業輸入の際に適用される申告納税方式における関税額の計算方法を説明します。

 まず、課税価格が20万円以下か、20万円を超えるかで考え方が異なります。

 20万円以下の場合は、一般の関税率とは別に定められた簡易税率が適用されます。ちなみに、友人からの贈り物や無償の商品見本などで、実際にお金を支払わない場合でも課税対象です。このような価格が分からない商品に関しては、税関から課税価格について問い合わせがくることがあり、贈り物をくれた友人に価格を尋ねることや、購入時の領収書を送ってもらうことが必要になる場合もあります。これは無償の商品見本でも同様です。

 では、20万円を超える場合はどうやって関税額を計算するのでしょうか。

 従価税が適用される商品の場合、「課税価格」に「関税率」を乗じれば関税額を計算できます。

 例えば、課税価格が100万円で関税率が3%の場合、100万円x3%の計算から3万円が関税額になります。

 計算自体は「課税価格」×「関税率」と単純ですが、実際に課税価格を算出するには、現実支払価格、特殊関係の有無、加算要素、減産要素などが定義されている関税定率法第4条への理解が求められます。

 また、関税率を知るためには、HS条約で定められた商品コードであるHSコードを輸入商品毎にごとに確認する必要もあります。HS条約では、世の中のすべてのモノが約6,000種類のコード番号に分類されており、HSコードごとに関税率が定められています。つまり、輸入される商品がこれらの番号のどれにあたるかを的確に決めなければならないのです。

 有税品であれば、関税は輸入時に納付しなければならず、そしてそれは輸入コストになります。しかし、特恵税率やEPA税率を適用し条件を満たすことで輸入コストは下げられます。

 すべての商品で関税額を低く抑えることが出来るわけではありませんが、その方法を知ると知らないでは大違いです。この記事で解説した内容を実践することで、事業拡大と利益拡大に役立ててください。

 法律は生き物です。関税を規定している関税法にも毎年変更があります。国家資格である通関士試験に挑戦し、通関の知識を増やすことにチャレンジしてみるのも良いでしょう。