インサイドセールスとは?特徴やメリット、導入手順を簡単に解説
インサイドセールスは、1980年代に欧米諸国で誕生したマーケティングコンセプトです。古くて新しいコンセプトですが、最近のMA(マーケティング・オートメーション)の普及などにより、近年改めて注目されています。本記事ではインサイドセールスについて解説します。
インサイドセールスは、1980年代に欧米諸国で誕生したマーケティングコンセプトです。古くて新しいコンセプトですが、最近のMA(マーケティング・オートメーション)の普及などにより、近年改めて注目されています。本記事ではインサイドセールスについて解説します。
目次
インサイドセールス(inside sales)とは、文字通り社内(inside)におけるセールスつまり営業活動のことです。
社内における営業活動は顧客と直接対面せず、さまざまなツールなどを使ったコミュニケーションをベースにしたものになります。
アフィリエイトやWeb広告などで発生したリードに対して、電話、メール、ビデオ通話、あるいはソーシャルメディアを通してアプローチし、実際に商品の購入やサービスの利用をしてくれる顧客にまで育成(ナーチャリング)するのがインサイドセールスです。
インサイドセールスは、特にIT企業やIT系スタートアップ企業がこぞって導入していることでも注目されています。
日本においても、インサイドセールスは外資系IT企業を筆頭に導入が進んでいるとされ、競合する日本企業が追随する形で導入するケースも多いとされています。
インサイドセールスの対義語にはアウトサイドセールス(outside sales)またはフィールドセールス(field sales)があります。これも文字通りで、社外(outside)における営業活動のことです。
社外における営業活動では、営業マンが顧客を訪問して商談などを行います。社外における営業活動は、営業マンと顧客の対面でのコミュニケーションがベースとなります。
では、インサイドセールスにはどのような特徴や強みがあり、どういった課題を解決できるのでしょうか。
インサイドセールスが解決できる最大の課題とされるのが営業コストです。
アウトサイドセールスの場合、営業マンの人件費、移動のための交通費、通信費、車両費、会議費などの相応のコストが必要になります。また、商談一回に対する時間もそれなりにかかります。
インサイドセールスであれば、そうした営業コストと時間を削減することが可能です。
なお、アメリカのコンサルタント会社ZSアソシエーツによると、アウトサイドセールスからインサイドセールスに切り替えることで、最大90%の営業コストを削減することが可能としています(参考:The Difference Between Inside Sales and Outside Sales│internalresults)。
営業効率の改善もインサイドセールスで解決できる課題です。
一般的にインサイドセールスはMAやSFA(セールスフォースオートメーション)などのインサイドセールス支援ツールをベースに行われるため、商談のランク付けができます。
質の高いリードを優先して営業、質の低いリード――例えば明らかに情報収集をしているだけのリードや冷やかしのリードなど――にはメールで情報を送ってナーチャリングだけする、とレベル分けして対応することが可能です。
インサイドセールスを導入すれば、営業効率の改善に必要な「ここは営業リソースを投入する/当面回避する」といった判断が迅速にできるようになるのです。
インサイドセールスは上述のインサイドセールス支援ツールをベースに行われるため、顧客や商談などの情報を容易に共有できます。
営業ノウハウなど、クロージングのためのティップスを組織全体で共有することで、個々の営業マンのクロージング率が向上し、結果的にチーム全体のクロージング率向上が期待できます。
また、情報が営業マン個人に属人的に属さないため、すべての顧客に対してチームメンバー全員で対応することが可能になります。
それにより、特定の営業マンの不在により顧客とのコミュニケーションが途絶えてしまうといったシチュエーションを回避できるようになります。
一方、インサイドセールスは必ずしも万能ではありません。インサイドセールスの展開に際しては以下に注意する必要があります。
一般にインサイドセールスは、アウトサイドセールスのように営業マンと顧客との強固な人的つながりが確保しづらいとされています。
優秀な営業マンの多くは、顧客との強固な人的つながりを有しています。対面で対話し、時間をかけて話を聞き、適切なアドバイスやソルーションを提案します。
B2B商材や、高額な製品や複雑な製品を販売するといったケースでは、そうしたプロセスやそれから生じる人的つながりが結果につながる可能性が高いでしょう。
インサイドセールスはMAやSFAなどのインサイドセールス支援ツールをベースに行われるため、実際の展開に際してはそうしたツールを使いこなせるITリテラシーの高い人材が必要になります。
例えば、ITリテラシーが高くない営業チームをアウトサイドセールスからインサイドセールスへ切り替えるといった場合、相応の教育コストや、外部からの人材招聘コストが必要になる可能性があります。
インサイドセールスでは顧客や商談などの情報をチーム全体で共有するため、情報が営業マンに属人的に属しません。
これはチーム全体で営業するというメリットをもたらしますが、一方で、営業マン個人が個人として商談をクローズさせるモチベーションを奪ってしまう副作用ももたらします。
コミッションベースで仕事をしている優秀な営業マンであれば、そうした事態を好ましく思うことはないでしょう。
インサイドセールスでは、優秀な営業マンを独占的に囲い込むのは難しいかもしれません。
インサイドセールスには営業コスト削減や情報共有などのメリットがある反面、営業マンにモチベーションを付与しづらいといったデメリットもあります。
特に、営業マン個人が属人的に顧客との人的つながりを有している企業は、導入を検討する際には注意する必要があります。
なお、インサイドセールスを導入するおおまかな手順は以下の通りです。
以下、順に詳しく見ていきます。
インサイドセールス導入の最初のステップは営業フローの確認です。
リードジェネレーション(商談・見込客獲得方法)からスタートし、ナーチャリング(顧客育成)やコミュニケーション、クロージング(商談完了)までのすべてのフローを明確にします。
下図も参考にして下さい。
なお、フローチャートを作成する際に、具体的に用いる手法を決めることになりますが、どの手法が良いかは企業や導入するツールの内容や機能により大きく違ってくるため一概には言えません。
そのため、「使える手法はすべて使う」というスタンスで取り組むといいでしょう。
一般的にインサイドセールスはMAやSFAなどのインサイドセールス支援ツールをベースに展開されます。
一方、MAやSFAといったツールは世に数限りなく存在します。
必要とするツールの機能や予算、社内のITリテラシーなどを総合的に鑑みてベストなツールを選択する必要があります。
筆者のおすすめとしては、スマートキャンプ株式会社の「Bales Cloud」や、ベルフェイス株式会社の「bellFace」などが比較的導入が簡単で運用も楽だと思います。
いずれもインサイドセールスに特化しており、機能を使いこなせれば相応のパフォーマンスが期待できます。
なお筆者は、最初は必要最低限の機能からスタートし、社内スキルの習熟に合わせて徐々に拡張してゆく「アジャイル方式」をおすすめしています。
インサイドセールス支援ツールの選定と導入の次のステップは、インサイドセールスチームの組成です。
ITスキル・リテラシー、コミュニケーションスキル、営業スキルなどを踏まえ、ベストな人材を配置して下さい。
インサイドセールスはツールを用いて実践するため、相応にITリテラシーが高い人材が必要です。
ツールの使い方などを教える社内トレーニングを実施することで補うことも可能ですが、外部から適切な人材を招聘する必要なども生じるかもしれません。
社内でITリテラシーが低い人に教育コストを投じるよりも、かえって安くつく可能性があるからです。
インサイドセールスチームを組成したら、いよいよ実施です。
このステップでのポイントは、リードジェネレーションからクロージングまでの営業フローの各ステップにKPI(キーパフォーマンスインディケーター)を設置し、パフォーマンスをモニタリングすることです。
フローの各ステップで設置するKPIには、次のようなものがあります。
・リードジェネレーション
KPI例…ウェブサイトのアクセス数、問合せメール件数、問合せ電話件数
・ナーチャリング
KPI例…メールのコミュニケーション数、電話会話件数、SNSのエンゲージメント数
・クロージング
KPI例…商談件数、クロージング件数、クロージング金額
また、すべての商談のデータはMAやSFAなどのシステムにストアし、チーム全体で共有できるようにしてください。
定期的に各KPIを検証し、PDCA(Plan, Do, Check, Act)サイクルを実施して下さい。
KPI | 主な検証方法 |
---|---|
ウェブサイトのアクセス数、問合せメール件数、問合せ電話件数 | 月次ベースでの件数推移、増減率 |
メールのコミュニケーション数、電話会話件数、SNSのエンゲージメント | 月次ベースでの件数推移、コミュニケーションの内容とクオリティ |
クロージング件数、クロージング金額 | 月次ベースでの件数推移、金額推移、クロージングの内容とクオリティ |
たとえば、検証によってウェブサイトのアクセス数が芳しくなく、さらに問合せメール件数も低いのであれば、そもそものウェブサイトのコンテンツの内容が原因と考えられるので、コンテンツの大幅な刷新か、新たなコンテンツの追加が必要になるでしょう。
PDCAサイクルを実施することで、営業フローの各ステップのブラッシュアップが可能になり、結果的にインサイドセールス全体のパフォーマンス向上につながります。
米国の通信コミュニケーション企業パシフィッククレストによると、20%以上の売上成長率を3年以上確保している成長企業の37%が、インサイドセールスを自社の主なマーケティング手法として採用しているそうです。
一方で、アウトサイドセールスを自社の主なマーケティング手法として採用している成長企業も27%あるとのことです(参考:7 Must-Track KPIs for Inside Sales Success│KRYON)。
インサイドセールスは、プラスとマイナスの両面を持つマーケティング手法です。
すべての会社にとって万能なものではありません。自社の顧客や市場、マーケティング戦略などを総合的に勘案しつつ、導入を検討すべきでしょう。
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