目次

  1. 全情報が社長に集中
  2. 地元の後継ぎ企業をお手本に
  3. 情報共有で壊した「部門の壁」
  4. ワークショップ運営が育んだ自信
  5. 社員教育は「優しく」をテーマに
  6. 新規事業を若手に任せる
  7. インバウンドでピンチをチャンスに

 谷元さんは2008年の社長就任後、ふすまの市場縮小に危機感を感じ、新事業開拓を試みました。ふすまの代わりにデザイン性の高いドアなどを扱うオンラインショップ「和室リフォーム本舗」を始め、工夫と改善を重ねて売り上げを伸ばしてきました。今ではオンラインショップをはじめとするBtoC事業が売り上げ全体の15%を占めるまでに成長しています(前編参照)。

谷元フスマ工飾のBtoB向け施工事例(谷元フスマ工飾提供)
谷元フスマ工飾のBtoB向け施工事例(谷元フスマ工飾提供)

 和室リフォーム本舗は谷元さんがトップダウンで進めてきた一方、事業成長につれて、社員らが現場でスピーディーに判断できるようにならないと、時代の変化に対応できないのでは、と考えるようになってきました。

 谷元フスマ工飾は父・一男さん(80)の代まで全情報が社長に集まり、従業員への指示もすべて社長から下される「中央集権的な会社」(谷元さん)でした。前職の日本IBMで、チームで情報共有しながら現場で意思決定する風土に慣れていた谷元さんは衝撃を受け、「自分では同じことはできない」と感じました。

 「日本全体が右肩上がりの時代は中央集権型の方が効率もよく、利益も上げられたのは理解しています。でも時代は変わり、特に僕たちの業界は市場が縮小している。もっと現場の情報や若い人の新しい感覚に基づいて社員一人ひとりが判断して動ける組織にしないと、いずれ会社が存続できなくなると思いました」

ふすま紙に刷毛で水をふりかける父・一男さん。張る前に紙を湿らせると乾いた時に張りが出てきれいに仕上がります
ふすま紙に刷毛で水をふりかける父・一男さん。張る前に紙を湿らせると乾いた時に張りが出てきれいに仕上がります

 谷元さんは現場の全社員が自律的に動けるよう、営業、製造、施工など六つある部門のリーダーに指示を伝え、その後に各リーダー経由でメンバーに指示する体制に変えました。とはいえ、長年の指揮系統に慣れたリーダー層を中心に、それまでの癖はなかなか抜けません。

 そこでお手本にしたのが、同じ八尾市の「木村石鹸工業」でした。社長の木村祥一郎さんは谷元さんと同年代の後継ぎ仲間。自律型組織で会社を成長させていた同社の制度について話を聞き、谷元さんが2022年4月から本格的に導入したのが自己申告型の人事給与制度です。

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