目次

  1. すべてが手作業のホームスパン
  2. 直木賞候補作のモデルにも
  3. 小物中心のラインアップに
  4. “世界で一つだけのもの”をつくる
  5. 顧客に丁寧なヒアリング
  6. ユニオン結成で地域ブランドを拡大
  7. ホームスパンを作る仲間の先頭に

 「鶴の恩返し」のように、トントンとリズミカルに木製の機織り機を動かす音が、静かな約30畳の作業場に響く――。盛岡市中心部に近い住宅地にある中村工房を訪れると、3人の職人がそれぞれ黙々と、羊毛を紡いだカラフルな糸の絡みを目で確かめながら織り進めていました。

黙々と機織り機を操作する中村和正さん(右)

 ホームスパンは明治時代に英国から伝わった技術で、「HOME」(家)と「SPUN」(紡いだ)という言葉どおり、「家で紡いだ布」という意味です。

 中村工房では羊毛を糸に紡ぎ、染め、織るという工程のすべてが手作業です。主力商品のマフラー1点の場合、糸を紡ぐだけで1週間から10日、染め上げるのに1日程度、織り上げるのにも1日から2日かかるそうです。

 そうして仕上がった毛織物は手に取ってみるとどれも軽くて柔らかく、実際に身に付けてみると、ふわっと暖かい。冬の外出時には重宝しそうです。

 中村工房では夏場の主力商品として薄手のストールも同じ製法で制作しています。マフラー、ストールの価格帯は小物で1万円台からで、100%シルクの高級品になると10万円を超えるものもあります。

ホームスパンで織り上げた夏向けのストール

 盛岡市のホームスパン織元が舞台になった「雲を紡ぐ」は2020年上期の直木賞候補に選ばれました。中村工房も著者の伊吹有喜さんから取材を受けました。

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