UGC(ユーザー生成コンテンツ)とは マーケティングで重視される理由と事例
スマートフォンの台頭やFacebook、Instagramなどのソーシャルメディアの世界的な普及に伴い、古くて新しいマーケティングスキームであるUGC(ユーザー生成コンテンツ:User Generated Content)が改めて注目されています。この記事ではUGCの基本や事例、実際に行う際の注意点などについて詳しく解説します。
スマートフォンの台頭やFacebook、Instagramなどのソーシャルメディアの世界的な普及に伴い、古くて新しいマーケティングスキームであるUGC(ユーザー生成コンテンツ:User Generated Content)が改めて注目されています。この記事ではUGCの基本や事例、実際に行う際の注意点などについて詳しく解説します。
目次
UGCとは、User Generated Contentの略語で、「ユーザーが生み出したコンテンツ」のことです。User Created Contentの略語であるUCCとも呼ばれています。
コンテンツは通常、3つに分類されます。
一方、UGCは、文字通りユーザーがユーザーの責任で作り、自分の判断でインターネットやソーシャルメディアに公開したコンテンツです。
一般的なUGCとしては、ブログや掲示板への記事投稿、ソーシャルメディアでのツイートやシェア、YouTubeやInstagramへの動画の配信、通販サイトや口コミサイトでのレビュー投稿などが挙げられます。
例えば、温泉旅行が趣味の人が、実際に宿泊した旅館の建物や温泉施設の写真を撮影し、FacebookやInstagramに投稿した場合、投稿された写真やツイートが旅館にとってのUGCになります。
旅館にとってはノーコストでコンテンツを配信してもらえ、認知が広がりブランディングにも効果的なので、大きなメリットになります。ユーザーにとっても、自分の経験をソーシャルメディアを通じて他者と共有できるというメリットがあります。
UGCは、FacebookやInstagramなどのソーシャルメディアが台頭し始めた2000年代中頃から、本格的な普及が始まったとされています。
特にスマートフォンとソーシャルメディアの組み合わせは、世界中のスマートフォンユーザーを「総ジャーナリスト化」させ、これまではオールドメディアだけが行っていた「報道」を、個人レベルで行うことができる環境をもたらしました。
これにより、消費者が積極的にコンテンツを発信し、他の消費者へ影響を与えるという新たなマーケティング・エコシステムが誕生したのです。
以下、UGCがマーケティングにおいて重視される理由を具体的に説明します。
一般的に、「明らかに広告主と何ら利害関係を持たない」と認識される第三者によるUGCは信頼性が高く、消費者から信用される傾向にあります。UGCプラットフォーム開発のStacklaが2019年に行った調査によると、調査対象者の79%が製品やサービスの購買意思決定にUGCが影響していると答えています。
一方、広告主がコストを支払う広告宣伝については、わずか13%だけが影響していると答えています(参照:Survey Reveals How Consumers Really Judge Brand Authenticity (and Influencers)丨SocialMediaToday)。
UGCを発信しているユーザーは、自らが特定の製品やサービスの購入者であることがほとんどです。自分で実際に利用してみて、それなりのインパクトを覚えたことで情報を他者へ伝達したいと考えています。利害が伴わない純粋な情報を、他の消費者は自然な形で受け入れるのでしょう。
低コストで展開が可能なのもUGCが重視されている理由です。UGCは、当然ながらユーザーのコスト負担で発信されます。また、通常は製品やサービスの購入費用もユーザーが負担し、動画や画像の撮影や編集などのコストもユーザーが負担します。コンテンツの対象となる製品やサービスを提供している「広告主」には、ほとんどコストがかかりません。
広告主がコストを負担する必要がほとんどない一方で、広告主がUGCを管理することはできません。UGCの内容、発信時期、発信頻度といった、「広告管理」に関するルールやスケジューリングの設定などへの関与も不可能です。
UGCは、あくまでもユーザーのユーザーによるユーザーのコミュニティのためのコンテンツであり、最初からマーケティング目標が設定されたペイド・コンテンツ(Paid Content)とは性質が違うのです。
企業とユーザーのコミュニティが構築できることもUGCが重視されている理由です。ホテルなどの宿泊業ではホテル予約サイトが多用されていますが、ほとんどのホテル予約サイトではユーザーが「口コミ」を投稿できるようになっていて、実際に宿泊者の多くが感想などをレビューとして投稿しています。
ホテルの中には、そうした口コミに対してまったく対応していないところもありますが、多くは口コミに対して何らかの対応をしています。そして、中には口コミに非常に丁寧に対応し、ユーザーと事実上の「対話」を行うレベルに達しているところも存在します。
単に宿泊のお礼を述べるにとどまらず、地域の今後のイベントなどの情報や、特別な宿泊キャンペーンのお知らせなども発信しています。そうした「対話」からリピート客が生まれ、さらに「対話」が進むという善循環を生み出しています。
UGCの多くはユーザーからの一方通行的なものですが、中には口コミサイトのような双方向の対話が可能なものも存在します。それらの多くは無料か低コストで利用可能なので、しっかりと活用すべきでしょう。
では、ここで実際にUGCを活用したマーケティング事例を2つご紹介します。
UGCがよく活用されている代表的な業界が飲食業界です。特に使われているのがInstagramで、自らの飲食経験を撮影した動画や画像などが多数投稿されています。
アメリカの飲食店経営コンサルタントとして、数千件の飲食店を見てきたライアン・グロムフィン氏も、最近の指導方針として飲食店の集客にInstagramによるUGCを活用するようにアドバイスしています。
グロムフィンさんは、地元の名物料理や伝統的な料理などを提供している店は、特にInstagramによるUGCが効果的だと言います。そうした料理は一般的に「Insta映え(インスタ映え)」するものが多く、画としてInstagram受けされやすいからです。また、そうした「Insta映え」する料理がない場合でも、新たに「Insta映え」する料理の提供を始めることにより、UGCを拡散させることは十分に可能だとしています。
実際にグロムフィンさんが関わったある地方のレストランのケースでも、派手な「Insta派え」する料理の提供を始めたところ、Instagramのフォロワーが増加し、地元客以外の集客につながったそうです。Instagram以外でも、口コミサイトのYelpなどで情報が拡散し、そこからも集客できているとのことです。
ホテル業界も飲食業界と同様にUGCの活用が盛んな業界です。アメリカのある高級ホテルチェーンは、自社のウェブサイトに掲載するホテルの写真を、すべて実際の宿泊客が撮影した画像へ切り替えるキャンペーンを開始しました。
ユーザーから画像シェアの許諾をもらい、専用のハッシュタグをつけてInstagramに投稿したところ、ホテルの利用を検討している人によるアクセスが殺到、Instagramだけで2万人を超えるフォロワーを集める結果になりました。
同ホテルはまた、Instagram以外にもUGCを転用し、自社ホームページ、ブログ、FacebookページなどでUGCが閲覧できるようにしたほか、UGCを撮影した本人のウェブサイトにもリンクし、UGC以外の画像なども閲覧できるようにしました。
「実際に宿泊した人の体験がもっとも多くを物語る」という理念とともに始まった同ホテルのUSGマーケティングですが、まったく修正が施されていない宿泊客のUGCが、潜在客の心を相応につかんだようです。「ありのままの状態」をそのまま公開するというやり方は、UGCのポテンシャルを十分に理解したからこそ実行できたのでしょう。
UGCを活用したマーケティングを行う手順ですが、一般的には以下のプロセスを辿ります。それぞれステップごとに説明します。
最初のステップはキャンペーン内容の検討です。ここで言うキャンペーンとは、UGCを活用したマーケティングを行うための企画を指します。
一口にUGCマーケティングといったところで、内容が十分に練られていないと成功は覚束ないです。目的は何か(新製品の認知拡大なのか、リアル店舗への集客なのか等々)、それを果たすための方法はどうするのか(常連客のレビューを拡散させるのか、Instagram撮影用スポットを用意してInstagramで拡散させるのか等々)を含め、可能な限り具体的にキャンペーン内容を決める必要があります。
キャンペーン内容が決まったら、次はターゲットユーザーへのアプローチです。例えば新製品を紹介して認知を広めるキャンペーンの場合、それに参加してくれそうなユーザーに直接アプローチして依頼します。FacebookやInstagramなどのソーシャルメディアではユーザー同士のメッセンジャー機能が使えるので、それを使ってアプローチします。YouTubeもメッセージでアプローチするのが一般的です。
一般的にUGCマーケティングは無償で行われるケースが多いようですが、筆者は、可能であれば参加してくれるユーザーへインセンティブを提供することをおすすめします。インセンティブを提供することにより、ユーザーの参加意欲とモチベーションをアップさせられるからです。
インセンティブとしては、賞金や賞品といった物理的なプライズの他、ブランドアンバサダーやエバンジェリストといった称号や、クーポンやディスカウントなどが考えられます。ユーザーのやる気を十分に引き出すインセンティブを用意する必要があります。
キャンペーンを開始したら、効果を測定しましょう。例えばInstagramの場合、「いいね数」「保存数」「フォロワー数」などをコンテンツごとに測定し、記録します。また、コメントの数とともにコメントの内容も精査し、実際の目的につながったのか検証する必要があります。
なお、UGCを活用したマーケティングを行う際には、以下の点に注意するよう気をつけてください。
UGCを活用したマーケティングを行う際の最も重要なポイントが「ヤラセをさせない」です。UGCマーケティングの醍醐味は、ユーザーの本音が生で聞ける点にあります。嘘偽りのない第三者の意見が聞けるからこそ、多くの人はUGCを傾聴するのです。それに対し、ユーザーに製品やサービスを誇大に評価させたり、実際とは真逆のコメントをしたりするよう促すなどすれば、直ちにユーザーの信頼を失ってしまいます。
少し前に、ボランティアにお金を払って自社製品に前向きなコメントを投稿してもらうステルスマーケティングが流行りましたが、それなどもっての外です。「第三者による正直な意見」こそUGCマーケティングを成立させるのです。
UGCは基本的にユーザーが作った成果物であり、著作権は原則ユーザーに属します。よって、動画、写真、文章などのコンテンツを著作権者の許諾なしに利用することはできません。ユーザーのコンテンツを利用するに際しては、かならず著作権者であるユーザーの許諾を得る必要があります。
UGCは基本的にユーザーが作った成果物であり、その内容はユーザーの判断で決まります。よって、コンテンツによっては表現の内容が必ずしも正確でなかったり、あるいは明らかに非科学的であったりすることもあり得ます。表現の中でも、人体への効果効能をうたう場合は特に注意が必要です。
これらについてできる対策としては、UGCが新たに投稿された場合、まず内容を十分にチェックし、表記などがコンプライアンス的に問題がないか確認することです。また、問題が確認された際はただちにユーザーへコンタクトし、修正を依頼するなどの対応があげられます。
UGCのキャンペーン内容は、目的に応じてさまざまであると書きましたが、いずれにせよ、UGCの目的は「自社ユーザーを同志にすること」です。自社ユーザーに自社製品のファンになってもらい、その良さを周囲に伝えてもらい、彼・彼女らと共通の価値観と体験を共有する。一般的にはエバンジェリストと呼ばれる役割を果たしてもらうことが究極の目的です。
そのためには、ユーザーが真に感動し、他に伝えたくなるような製品やサービスを作り出すことが必要です。そうした製品やサービスなしにUGCマーケティングを展開することは困難です。「ワクワクするような製品やサービスを作り出すこと」からUGCマーケティングが始まるということを忘れないでください。
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