目次

  1. 米国で刺激を受けた巨大物流
  2. 帰国後に痛感した経営課題
  3. 製造と物流のデジタル化を推進
  4. 「適正な商い」で出店を加速
  5. ユーザー発コンテンツを重視
  6. キッチンスぺースで触れあいを
  7. 海外展開も見据えて描く成長曲線

 富澤商店は1919(大正8)年に創業し、約1200人の従業員(2022年6月現在)を抱えます。小麦粉やバターといった製菓・製パン材料から、調理用具、ラッピングの材料まで約8500点にのぼる豊富な品ぞろえを誇り、製パン用小麦粉だけで約25種類を用意しています。売り上げの85%が個人顧客向けで、年商は約136億円となります。

富澤商店は製菓・製パンなどの材料から調理器具まで、多様な商品アイテムを扱っています(以降の写真はすべて同社提供)

 富澤さんは3代目社長・一郎さんの長男として生まれました。「会社と家が近かったせいか、子どものころから自然と家業を意識していました。2代目社長の祖父(正さん)にはかわいがられ、将来自分が継ぐのかなとぼんやり感じていました」

 米国の大学に進学し、2000年の卒業後は家族の知り合いがいた米国の投資会社兼ホテル運営企業に入社し、取締役も務めます。それは経営ノウハウを学ぶための期間でもありました。

 米国では特に巨大物流システムに刺激を受けたといいます。「大きなトラックを走らせる道路や、その荷物を収納する倉庫などが完備され、商品を効率的に回すための基盤が整っていました。当時は米国の物価も安く、労働者もしっかりした会社で働けばいい家に住める。そんな生産性の重要さを感じました」

 将来家業を継ぐことを見据え、「会社を長く続けられるのかという焦りが強かった。目が血走りながら米国で学びました」と振り返ります。

かつての富澤商店

 29歳だった06年に帰国し富澤商店に入社すると、実質的なトップとして経営にあたりました。

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