目次

  1. アパレル店舗の運営経験を生かす
  2. 自分用のノートを新人教育に活用
  3. アイデアベースの相談にも丁寧に
  4. 経営者として心が鍛えられた仕事
  5. 父と広げる町工場の輪

 金属部品を製造している栗原精機は1968年に創業し、精密加工に強みを持つ町工場です。医療機器から産業機械まで様々な部品を、OEM(相手先ブランドによる生産)で製造してきました。19年に立ち上げた自社ブランド事業では精密加工の機能美を生かして、文房具やアウトドア用品の開発に挑んでいます。現在、22人の従業員が働いており、年間売り上げは2億5千万円の規模で推移しています。

自社ブランド商品の金属リング(カラビナ)とその製作の様子(右)=栗原精機提供

 栗原精機は2003年から稔さんが2代目として社長を務めてきました。稔さんは自社製品の幅をそれまでの産業機器部品から大幅に広げ、「町工場プロダクツ」では発起人として、同じような立場の町工場とのネットワークを築いています。そして23年5月、以前からの計画通り、息子の匠さん(33)に3代目の社長を譲り渡し、自身は会長になりました。

 匠さんは栗原精機に入社する前は、新卒で大手アパレルメーカーに勤めていました。コンセプトショップの店長だった時期には、店舗の管理運営から店頭での接客まで何でも1人でこなしていました。

 前職の経験について匠さんは「接客の経験が新規のお客様対応に生かされています。町工場に初めて相談するといった方が最近では少なくありませんが、丁寧に対話しながらお客様の理想像を具体化するのが得意です」と語ります。

 18年、栗原精機に入社した匠さんは、会社の改革に稔さんと二人三脚で取り組んできました。入社してからの日々を「理想の会社作りに関わるなかで、社長のあるべき姿について実践を通じて学ぶことができました」と振り返ります。

社長に就任し決意を語る匠さん

 栗原精機に入社した匠さんは、最初の2年間で職人の仕事を習得します。狙いのひとつは、稔さんの担当工程を匠さんが引き継ぐことでした。

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