オーバーツーリズム(観光公害)とは 政府が京都などの事例と抑制策を公表
政府の観光白書でも指摘されているように、オーバーツーリズム(観光公害)とは、特定の観光地で訪問客の著しい増加が、市民生活や自然環境、景観などへの負の影響をもたらしたり、旅行者の満足度も大幅に低下させたりするような観光の状況のことを指します。こうしたなか、政府は「オーバーツーリズムの未然防止・抑制に向けた対策パッケージ」を公表しました。タクシー不足への緊急措置にも言及しています。
政府の観光白書でも指摘されているように、オーバーツーリズム(観光公害)とは、特定の観光地で訪問客の著しい増加が、市民生活や自然環境、景観などへの負の影響をもたらしたり、旅行者の満足度も大幅に低下させたりするような観光の状況のことを指します。こうしたなか、政府は「オーバーツーリズムの未然防止・抑制に向けた対策パッケージ」を公表しました。タクシー不足への緊急措置にも言及しています。
目次
オーバーツーリズムとは、騒音や混雑のため地域住民らの静穏な生活環境が乱されるといった観光客の集中による弊害のことです。日本では、観光公害とも呼ばれています。
観光庁の報告書(PDF方式)によると、オーバーツーリズムという言葉は、2016年に米国の旅行業界向けメディア「スキフト(Skift)」によって初めて生み出されたという言葉です。
オーバーツーリズムは、イタリアの水上都市ベネチアや、スペインのバルセロナなど世界各地で問題となっています。国交省によると、日本各地でもオーバーツーリズムによる問題起きています。
北海道美瑛町では、美しい風景の写真を撮るために農地(私有地)への立ち入りが多数発生するほか、観光客により交通渋滞が発生したり、生活道路や農道への違法駐車により、生活交通が妨げられたりしているといいます。
鎌倉市では、人気アニメ「スラムダンク」の舞台となった踏切周辺で、写真撮影のため多くの観光客が公道に滞留し、観光客によるごみの投棄も問題となっています。
京都市では、主要観光地へ向かうバスの運送能力を超える乗客によりバスターミナルや車内が混雑。また、大型手荷物の持ち込みにより運行にも支障が起きています。
さらに、芸舞妓を無断で写真撮影したり、車道まで広がっての歩行、私有地への無断立ち入ったりしている事例も起きています。
2023年8月の外国人延べ宿泊者数は1034万人で、コロナ前の2019年同月比の109%となりました。ただし、観光需要は、三大都市圏で7割を超えるなど偏在しています。
観光客が集中する一部の地域や時間帯によっては、混雑やマナー違反による地域住民の生活への影響や、旅行者の満足度の低下への懸念も生まれています。
こうした問題に対応するため、政府は10月18日、観光立国推進閣僚会議を開き「オーバーツーリズムの未然防止・抑制に向けた対策パッケージ」を決定し、公表しました。
対策パッケージは、以下の3本柱で構成されています。
それぞれの対策について具体策を紹介します。
観光客による混雑への対応として、観光客が集中する地域における交通手段や観光インフラの充実を掲げています。
具体的には、京都市では、観光客が集中する路線バスから鉄道への分散・乗り換えを促進・支援します。また、京都駅では、大型手荷物を持ち運ばない「手ぶら観光」の促進のための実証実験を始めています。広島市では、長編成LRT車両・連節バス導入などにも取り組んでいます。
さらに、実情に応じた入域管理や異なる需要に対応した運賃設定の促進などにも取り組みます。
沖縄や西表島では、エコツーリズム推進法や自然公園法に基づく入域規制やガイド同伴の義務化を挙げています。富士山での適正な入山管理、軽装登山、ごみ投棄についても今秋から協議を開始しています。
さらに、空いている時間帯・時期・場所への誘導・分散化にも取り組みます。美瑛町、鎌倉市には、観光スポットや周辺エリアの混雑状況の可視化・リアルタイム配信の導入支援をするといいます。
都市部を中心とした一部地域への集中を是正するため、地方誘客の拡大にも取り組みます。たとえば、以下のようなモデル地域で高付加価値なインバウンド観光地づくりに取り組みます。
観光庁は、地域の実情に応じた上記の対策を促進すべく、住民を含めた地域の関係者による協議に基づく計画策定・取組実施への包括的な支援を全国約20地域で実施し先駆モデルを創出しようとしています。
自治体・DMOや事業者が地域住民に積極的に働きかける取り組みも推し進める予定です。
政府は対策パッケージのなかで、タクシー不足に対応する緊急措置も発表しました。タクシーの供給が需要に追いつかないエリア・時間帯が生じているため、以下の対策を緊急的に実施するといいます。
政府は11月10日、臨時国会に向けて2023年度補正予算案に「オーバーツーリズムの未然防止・抑制による持続可能な観光推進事業」を計上しました。関連事業もあわせると305億円規模となります。
受入環境の整備・増強、需要の適切な管理、需要の分散・平準化、マナー違反行為の防止・抑制、地域住民と協働した観光振興に取り組む先駆モデルとなる約20地域を選び、補助上限8000万円(補助率2/3)の支援を計画しています。
また、地域の観光関係者が連携して実施するオーバーツーリズムの未然防止・抑制のための面的な取り組み(民間事業者等が主体となる場合、地方公共団体との連携が必須)に対し、補助上限5000万円(補助率1/2)の支援を計画しています。
観光庁は10月25日「オーバーツーリズムの未然防止・抑制に向けた相談窓口」を設置し、自治体・DMOからの相談を受け付けています。
相談は、観光庁観光地域振興部 持続可能な観光推進室へ。TEL:03-5253-8111(内線:27-918、27-915)
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