目次

  1. 建築家の道から家業へ
  2. 価格勝負からの脱却を目指して
  3. デザイナーと根源から議論
  4. 独自の貼箱がグッドデザイン賞に
  5. 高級感のある書類ケースも評判に
  6. デザイナー3人の得意を生かす
  7. 小ロット高付加価値で売り上げ倍増
  8. 地力をつけてさらなる高みへ

 一新堂は1956年、本土さんの祖父・敏夫さんが創業し、有田焼を運ぶ梱包箱の製造がルーツです。今は紙器製造業、パッケージデザイン企画、商品梱包など幅広く手がけています。仕事の9割は受注生産で、グラスや洋服、アクセサリーなどに合わせた贈答用のオリジナル貼箱を製造しています。

 2018年のグッドデザイン賞を受賞した組み立て式収納ボックス「ISSHINDO FOLDING BOX」、マグネット付きの書類ケース「DOCUMENT CASE」などデザイン性の高い自社製品も手がけています。売上高は約1億2千万円で、15人ほどのスタッフを抱える企業です。

一新堂の工場内
一新堂の工場内

 本土さんは高校3年生のとき、ドイツ・マイセンへの交換留学で建築物やインテリアに刺激を受け、建築家を目指しました。大学で建築を学び、卒業後は大手ゼネコンに就職。将来、建築家として独立するため、多くの時間を設計関連に費やしました。

 父・武夫さんから「戻ってきてほしい」という電話が入ったのは、そんなときでした。本土さんは「継ぐかどうかは1年間働いたあとに考える」と伝え、2015年から一新堂で働き始めました。

 一般社員として入社後は工場の仕事から始めました。働いてみると、リピートで受注する受け身の仕事が多かったため、価格競争が加速し、利益がほとんど出ないものもありました。大量生産の弊害で、品質が低下しクレームも多発。品質が優先できる仕事だけの受注を試みたところ、年間売り上げが約1億円から約3千万円減少しました。スタッフの退職も続出したといいます。

 一方、誰もが知るハイブランドの贈答品用化粧箱などを手がけていたというプラスの発見もありました。父が営業で広告会社との関係を築いていたのはもちろん、他社では貼りにくい紙や、手加工が必要な品も積極受注していたことで、特殊な製品から量産品まで対応できるというのが強みでした。

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