プレゼンテーションの上手な話し方 出だしと準備が成功を左右する
プレゼンテーションは企業にお勤めの人も、ご自身で仕事をなさっている人も、まだ社会に出る前の学生の人にも必ず必要なものです。どんな人でも、できれば得意になりたいと考えているのではないかと思います。この記事では、プレゼンテーションの「出だし」や話し方のコツについて解説します。
プレゼンテーションは企業にお勤めの人も、ご自身で仕事をなさっている人も、まだ社会に出る前の学生の人にも必ず必要なものです。どんな人でも、できれば得意になりたいと考えているのではないかと思います。この記事では、プレゼンテーションの「出だし」や話し方のコツについて解説します。
目次
ビジネスには正解はないと良く言われます。成功すること=正解が存在するのであれば、誰もがその正解を目指すわけですが、実際にはうまく大成功するビジネスも、残念ながら撤退せざるを得ないビジネスもあります。
ビジネスを企画する段階では、どこに正解らしきものがあるのかを関係者みんなで議論を尽くし、納得したうえで進むべき方向性を決めます。この方向性を決める際に非常に大切な役割を果たすものが、プレゼンテーションです。
プレゼンテーションは、他の人に納得・理解してもらいたい案件を持つ人が、案件の持つ背景・意義・内容・得られる成果などをわかりやすく説明して、賛同してもらうことを目的に実施されるものです。
ビジネスの推進を決める会議や、資金調達のための投資家への説明で用いられるプレゼンテーション。プレゼンテーションの巧拙が、ビジネスの成否を決めると言っても過言ではないかもしれません。
「プレゼンは苦手なんです」という声を聞くことは少なくありません。私が研究会を立ち上げた背景も、このような声がきっかけでした。しかし、プレゼンテーションで上手く話すことは、それほど難しいものではありません。まずは、事前の準備から説明しましょう。
プレゼンテーションで上手く話すための前準備 |
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・プレゼンテーションの目的を確認する ・シナリオを準備する ・プレゼン資料を作成する ・納得するまで練習を重ねる |
プレゼンテーションの目的を、話し手自身がしっかりと確認することは極めて重要です。しかしながら、目的を飛ばしていきなりパワーポイントの作成を開始してしまう人は少なくありません。
このプレゼンテーションは、どのような聞き手に、何を・どのように伝え、何を得たいのかを明確にしましょう。例えば、「自社の役員」に対して「新規事業推進の内容」を「賛同を得られる」ように伝え「推進に対する応援」を得たい、というようなものです。
プレゼンテーションは、話し手の意図を聞き手に納得してもらうことが目的だとお伝えしました。聞き手に理解して納得してもらうためには、十分に練ったシナリオを準備することが大切です。小説などでは起承転結という型をよく耳にしますが、プレゼンテーションでもPREPやDESCといった型が存在します。
PREPとは、以下のような流れでプレゼンテーション全体を形作るものです。
P(POINT)結論 R(REASON)理由 E(EXAMPLE)例示 P(POINT)結論 |
最初に結論を述べ、その理由や背景を知らせ、具体的な例を用いることで相手の理解を促したうえで再度結論に導くという話の進め方です。結論を最初に持ってくることで、話し手が何を言いたいのかを最初から聞き手に把握してもらえるメリットがあります。
DESCについても同様に見てみましょう。
D (Describe) 描写する E (Express) 説明する S (Suggest) 提案する C (Choose) 選択する |
解決したい課題に対して、現状を客観的に描写して事実を伝えます。この事実に対して、自分の意見や考えを説明し、課題解決のためのアイデアを提案します。そのうえで、提案を受ける場合、受けいれられない場合についての結果などを比較します。客観的事実で相手に寄り添いつつ、自分の意見を伝えるコミュニケーションの形であるといえるでしょう。
プレゼンテーションは口頭だけで実施するケースももちろんありますが、一般的には内容の理解を深めるためのパワーポイント等の資料を作成すること多いと思います。いかにわかりやすい資料を作るかは、極めて重要なポイントです。
例えば、1ページのなかに大量の文字を書き込んでいるスライドを目にすることがよくあります。言いたいことがたくさんあって書き込みたいという気持ちはよくわかるのですが、読まねばならない資料を提示されると、聞き手側は資料を読むことに集中して、話し手の言葉が耳に入ってきません。
相手に読んでもらう資料なのか、プレゼンテーションをより効果的に高めるための資料なのかは、十分に考える必要があります。
私がお話しする際、1ページに使用する文字数は極めて少量です。パワーポイントは話の補助的なものですので、私の話の展開のきっかけにすぎません。私と向き合って、話を聞いてほしいので、読まねばならない量の文字を記載することはしないのです。スライドに盛り込む論点も1ページにいくつも盛り込まず、できるだけ1ページ1論点と心がけています。
プレゼンテーションが苦手です、というご意見はよく耳にしますが、練習をしないで登壇してはいないでしょうか。私は何度も何度も練習を繰り返します。時間を計りながら練習することが重要です。練習の繰り返しにより、だれでも時間ぴったりで終えられるようになるはずです。
練習を繰り返すことで「どこに力点を置いて説明しよう」「理解しやすいように例示を挟むべきだ」など、さまざまな気付きを得られます。練習という行動で、プレゼンテーションの完成度をより高めましょう。
プレゼンテーションは「出だし」が肝心と言われます。確かに聞き手は最初の30秒で聞きたいかどうかを認識し始め、最初の1~2分で聞きたい・聞きたくないに分別されてしまうように思います。
したがって、プレゼンテーションの出だしの部分で聞き手の気持ちを握ってしまうことがとても重要なのです。
プレゼンテーションの出だしの話し方 |
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・もっとも大切な第一声を意識する ・アイスブレイクを忘れない ・エクゼクティブサマリーで俯瞰図を示す |
プレゼンテーションにおいて、話の出だしは何よりも重要です。最初の第一声で聞き手が話を聞きたいという気持ちにさせられるかどうかで、プレゼンテーションの成否が決まるといっても良いでしょう。
普段、会話をするときの声の大きさでは、残念ながら聞き手の注目を得ることはできません。私は一段高い大きな声で話をスタートするように心がけています。腹式呼吸を意識して、頭のてっぺんから声を出すようなイメージで、これから私が話すんだという意気込みを聞き手に届けるようにしてみてください。
アイスブレイク、まさに凍り付いた会場の氷をかち割るような、聞き手の心に刺さる話ができれば、その後のプレゼンテーションは話し手のリードで会場を沸かせられるでしょう。落語の世界では「枕」と呼ばれますが、一笑いをとれるつかみができると、話し手にとって非常に良いポジションをとることができます。
アイスブレイクで笑いをとるなんてとてもできない、という人は、自己紹介をきちんと行ってみるのもよいでしょう。笑いはとれなくても、聞き手に対して、自分が誰で、どんな経歴・背景を持っていて、本日のテーマを語るには適任であることを伝えられれば、聞き手はあなたの話に耳を傾けようとしてくれるのではないかと思います。
さて、先ほどPREP法で最初に結論を話すことの重要性をお伝えしました。同じく、プレゼンテーション全体がどのようなシナリオになっているかを、エグゼクティブサマリーで伝えることも重要です。
1枚のスライドでプレゼンテーション全体の俯瞰図を示すことで、聞き手に大まかな主張の骨子を理解してもらえる効果を生み出します。なんとなく全体がわかった状態から始めるプレゼンテーションと、ゼロから始めるプレゼンテーション。どちらがより良い評価を得られるかは、火を見るよりも明らかではないかと思います。
エクゼクティブサマリーは、これから山の頂上を目指す人に対して歩き方の地図を与えるような効果があります。エクゼクティブサマリーがあることで、聞き手は話し手の結論や説明の方針を理解できます。プレゼンテーションの途中で集中力を欠き、議論の方向性を見失う、すなわち「迷子」になることを防ぐ効果があるのです。
どうしたらプレゼンテーションがうまくいくのですか?と質問されることがあります。プレゼンテーションが抜群にうまい人がいるのは事実です。ただ、全員が天賦の才に恵まれているわけではありません。ほとんどの人は、長い時間をかけての練習・訓練のたまものであると私は考えています。
以下にプレゼンテーションを成功させる話し方のコツをお伝えしますが、どれも練習や訓練で身に着けることができるものです。
プレゼンテーションを成功させる話し方 |
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・声のハリを意識する ・明瞭な話し方に気を付ける ・言葉選びに注意する ・見た目も気にする |
プレゼンテーションの出だしの項で、第一声は一段高い大きな声で話をスタートすることが重要と申し上げましたが、声のハリはプレゼンテーションを通して維持すべきものです。
聞こえない・何を言っているかわからない話は、聞こうとする気持ちが萎えてしまいます。伝えたいことがあるのであれば、伝える気持ちをしっかりと持つことが大事です。
伝わらなければ意味がないので、伝わるだけの十分な声のハリは常に意識しておく必要があるでしょう。繰り返して練習すること、あるいは意識することで、ハリのある声は出せるようになります。
明瞭な話し方に気を付ける必要があります。滑舌が悪い・語尾が消える・「えー」とか「あの」といういわゆる言葉のバリは、練習によって解消できます。
滑舌が悪いと言われる人も、口や舌の動かし方の訓練で改善できます。滑舌が悪いという状況は、いわゆる発音があいまいで聞きづらいということです。この場合、「あ」と発音したいのに口の形は「お」の形で開いている場合が多いため、正しく「あ」の形で口を開けばしっかり「あ」と発音できます。
アナウンサーが早口言葉や外郎売の口上を練習しているように、滑舌は練習で向上できます。アナウンサーのような極めて明瞭な話し方ができる人でさえ、このような練習を重ねているということは、我々のような一般人にとって、あくなき練習が必要であることは言うまでもないのではないでしょうか。
いろいろなプレゼンテーションを聴いていると、時々極めて残念な場面に接することがあります。専門用語や話し手のいる組織内だけで使われている言葉や英語での用語を駆使した結果、聞き手の理解が遠のいてしまうというものです。
できる限り専門用語は使わない。使わねばならない場合には、必ず一般的な用語で解説を加える努力が必要です。自分が所属する組織では普通に使う用語が、実は世の中一般では知られていないことはよくあります。
冒頭でお伝えしたように、プレゼンテーションの目的は相手に理解して賛同を促すものです。相手にわからない言葉を使って、理解できないのは聞き手の知識不足であるとするのは、極めて傲慢な話し手であると言わざるを得ません。
自分がプレゼンテーションで使用する言葉が適切かどうか、入念に準備する必要があるでしょう。第三者、たとえば、業務と関係のない家族に聞いてもらって、しっかりと伝わっているかという試みはとても有効だと感じます。
あなたはどんな人の話を聞きたいと思いますか?怒ったような顔の人やおどおどとして自信のなさそうな人の話を聞くよりも、笑顔でにこにこと楽しそうで、めりはりのある動きでイキイキと伝えてくれる人の話の方が聞きたいと思われるのではないでしょうか。
これは、誰もが当然のように感じるものです。自分のプレゼンテーションの場面で、緊張のあまりひきつった顔をしてしまったり、意味なく髪を触ってしまったりすることは、自分の意図とは真逆の方向に聞き手を引きずり込んでしまう恐れがあります。
プレゼンテーションの場にふさわしい衣装は当然ですが、それ以上に笑顔で聞き手の心をがっちりつかんでしまうことがとても重要です。
プレゼンテーションは、時としてコンペティションのように差をつけることが求められる場面に遭遇することも少なくありません。このような場面で、どうすれば周りと差をつけることができるのか、簡単に取り組めるポイントをいくつかご紹介します。
プレゼンテーションで周りと差をつけるポイント |
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・間を使いこなせると差がつく ・聞き手とのアイコンタクトを忘れない ・双方向のやり取りに挑戦する ・最後のまとめで印象に残す |
プレゼンテーションは、多くの情報を聞き手にもたらせば良い、というものではありません。重要なポイントを、しっかりと理解してもらわねばなりません。ここで使うべきテクニックが「間」です。
お笑いの芸を見ていて、面白い芸人は間の取り方が極めて上手です。同じセリフをいったとしても、面白い・面白くないの区別は「間の取り方の違い」であることも少なくありません。
本当に伝えたい部分に入る前に一呼吸、間を置くこと、大切な部分を敢えてゆっくりと語るというのも印象的なテクニックです。「間」を使いこなすテクニックを練習で身に着けて、プレゼンテーションで差をつけてみてほしいと思います。
この記事の冒頭から、ずっと話し手と聞き手の関係性についてお話ししてきました。「どうすれば聞き手に響く(心をわしづかみにする)プレゼンテーションができるのか」というものです。
心をわしづかみにする第一歩ともいえるのが、アイコンタクトです。聞き手の一人ひとりと目を合わせながら話を進めていく。極めて重要なテクニックです。
大きな会場で数百人のお客様の前で話す場合には一人ひとりとアイコンタクトを取るのは物理的に難しいかもしれませんが、話し手なりに一人残らずアイコンタクトをとっているという意識が大切です。
社内会議のような一人ひとりが認識できる場では、一人ずつ目を合わせてうなずきながら話を進めていくことで、納得感は極めて高まります。
オンラインでの会議の際には、アイコンタクトを取ることは正直難しいと思われるかもしれません。本当にテクニック的な話になりますが、パソコンに内蔵されているカメラを正面から見ることで、聞き手にとってのアイコンタクトに等しい効果を与えられます。
話し手が自分のPCに投影されている資料を見ているとオンラインの参加者とは目線があいませんが、カメラを見ることで参加者は自分自身に話しかけられているような錯覚を感じます。あえて数秒に一度でもカメラ目線にチャレンジしてみてください。
アイコンタクトも相手の心に訴える手段ですが、もう一歩進んで、相手に話しかけるというテクニックも有効です。少々、上級者向けかもしれませんが、意見や感想を求めることで、聞き手を当事者の立場に立たせ、話し手のチームに取り込めます。
ただし、場にそぐわないやり取りや、答えにくい質問を投げかけてしまうことで、聞き手の心を離反させてしまうリスクもあります。このテクニックは、十分に練習して自信をもてるようになってから使うことをおすすめします。
最後に、誰でもできるポイントをお伝えしたいと思います。プレゼンテーションの最後に、全体まとめを挿入するというものです。
冒頭でエクゼクティブサマリーをお伝えして、プレゼンテーションの俯瞰図を聞き手に示すべきだと前述しました。最後のクロージングの場面でも同様に、プレゼンテーション全体を振り返る「まとめ」をお話しすることが重要です。聞き手にとってプレゼンテーション全体の記憶を呼び覚まし、結論に至る道筋を再確認できるため、極めて印象に残ります。
プレゼンテーションの資料の最終ページに「ご清聴ありがとうございました」と記載している人を良く見かけます。しかし「ありがとうございました」という言葉は口で言うべきで、スライドで見せるものではありません。
その言葉のかわりに、最終ページに「プレゼンテーション全体のまとめ」を差し込むことで誰もが意識して見ることのない「ありがとうのページ」と比べて100倍の差をつけることができるのではないかと思っています。
今回は、プレゼンテーションをどのように使いこなすか、という観点での記事を書かせていただきました。いろいろとコツやポイントを書いてきましたが、本当に重要なことは、皆さんが聞き手に伝えることを楽しんでいる姿勢です。
自分の言葉で聞き手が納得してくれている、わかってくれているということに対して、これ以上ない喜びを感じて楽しんで話ししている人のプレゼンテーションは、きっと聞き手の心に響いているだろうと思います。
どうすれば聞き手に伝わるだろう?どう工夫すればわかってもらえるだろう?そんな思いで練習を繰り返したプレゼンテーションは、きっとワクワクしてたまらないものになるだろうと思いますし、話し手のワクワク感は必ず聞き手の心に刺さるものだと信じてやみません。
皆さんの次回のプレゼンテーションが、大成功となることを心より願っています。
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