目次

  1. 葬儀社の倒産・休廃業件数が増加
  2. 背景市場 市場拡大でも売上は伸び悩み
  3. 打開策は多様化するニーズへの対応

 帝国データバンクが「葬儀業」における倒産や休廃業、解散の状況について調査・分析したところ、2024年11月までの調査で、倒産(負債1000万円以上、法的整理)が12件、休廃業・解散(廃業)が35件ありました。

 これは前年から1.7倍のペースで増加し、これまで最多だった2007年(42件)を超えて年間最多を更新しています。

 経済産業省の「特定サービス産業動態統計調査」によれば、葬儀業の年間取扱件数は2023年に50万件を超えるなど伸び続けています。また、国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、2050年には年間死者数が160万人を超える「多死社会」がやってきます。こうしたなか「終活」などエンディングビジネスは今後も拡大が予想されています。

 しかし、2023年の葬儀業売上高は5944億円にとどまり、過去最高だった2017年(6112億円)には届きませんでした。

葬儀1件あたりの単価
葬儀1件あたりの単価

 帝国データバンクは「コロナ禍を契機に、少人数の家族葬など簡素な葬儀スタイルの需要が拡大し、葬儀料金の低価格化が進んだことが、葬儀社の収益が伸び悩む要因となった」と分析。大手葬儀社の店舗開設や、低価格業者、異業種からの参入も相次ぐなど競争環境は厳しくなっています。

 打開策として、帝国データバンクは「多様化する葬儀に対応したメニューをそろえることで客単価を引き上げる取り組みが進んでいる」と紹介しています。

 関連産業でいうと、東京都江戸川区のイワタは、葬儀業のプロが遺体を生前の姿に近づけるために使う薬剤や脱脂綿などの企画や卸売りを手がけています。

 商品の製造元となる地元町工場との関係を深め、除菌消臭剤の開発、エンバーミング(遺体衛生保全)を支える海外製薬剤の輸入、脱脂綿など葬儀関連製品のラインアップを拡大したほか、若手社員に商品や新規事業を任せるといった改革も進め、売り上げを3倍に伸ばしました。