チャンクダウンとは?ビジネス現場で活用するメリットを専門家が解説
人は、行動指針が曖昧だと主体的に動きにくいものです。しかし、チャンクダウンを使えば、目標や課題を具体化し、行動に移しやすくなります。この記事では、コーチングの専門家がその手法やメリット、実際の活用例を解説します。
人は、行動指針が曖昧だと主体的に動きにくいものです。しかし、チャンクダウンを使えば、目標や課題を具体化し、行動に移しやすくなります。この記事では、コーチングの専門家がその手法やメリット、実際の活用例を解説します。
目次
「チャンクダウン」とは、英語の「Chunk(塊)」と「Down(ほぐす)」が由来の言葉で、大きな塊を小さく分解して物事を具体化する手法です。心理学に基づいたコミュニケーション技法で、コーチングやビジネスでも広く使われています。
チャンクダウンは、目標や課題を達成するための行動を細分化する際に役立ちます。
例えば「売上目標を達成する」という大きな目標をチャンクダウンする場合、下記のように達成までに取るべき行動を分解できます。
顧客単価を上げる → 商品単価を上げる → セット数を増やす → 特典を追加する |
このように分解することで、大きな目標も小さな行動の積み重ねだと理解でき、具体的な一歩を踏み出しやすくなります。
チャンクダウンは目標までに具体的な行動を細分化するために有効ですが、それだけでは視野が狭くなることもあります。視野を広く持ちながら目標までの道筋を立てるには、以下の手法を組み合わせると効果的です。
チャンクアップはチャンクダウンの反対で、物事を大きな単位で捉えます。全体像を把握し、目的を明確にするのに役立ちます。
特に、課題解決のときにチャンクダウンをして手法にばかり目を向けてしまうことがあります。このときにチャンクアップを組み合わせると、そもそもの目的を確認した上で適切な方法を考えることができます。
スライドアウトとは、目標実現のために関連要素を横展開して洗い出す手法です。同じレベルの選択肢を増やすことで、新しい視点やアイデアが生まれます。
例えば、「売上目標を達成する」という目標に対して、チャンクダウンでは「顧客の単価を上げる」タスクを分解しました。ここにスライドアウトを組み合わせると、「顧客数増加」「サービス向上」など別の視点に広げることができます。さらに、これらをチャンクダウンしていくことで、より多角的な視点を持ちながら課題解決に取り組めます。
ビジネスにおいてチャンクダウンを行うことで、物事や行動が具体化されます。それにより次のようなメリットが得られます。
課題解決のためのアイデアをチャンクダウンしていくことで、より具体的な解決策を見出すことができるようになります。それにより、効果が高く実現可能な行動を起こすことができ、課題解決力も次第に向上できます。
大きく見える目標も、チャンクダウンすることにより小さな行動へと落とし込むことができます。
3年後 → 1年後 → 3カ月後 → 1カ月後 → 1週間後 → 1日のようにチャンクダウンを行うことで、大きな目標に対しての最初の一歩を踏み出しやすくなります。
大きな仕事に対して行動レベルまでチャンクダウンすることで、いつ、誰が、どこで、どのように、どのくらい、といった各々の動きを決めることができます。そのため各自が速やかに行動を起こすことができ、結果として生産性の向上も期待できます。
コーチング的アプローチとして「それをやるには何が必要?」「具体的には?」とチャンクダウンすることで、自分の口からやるべき行動を引き出すことができます。それにより行動に対してのモチベーションが向上し、結果を生み出すことにつながります。
チャンクダウンで分解された各々の行動が、チャンクアップすることで大きな目標につながっていることを自覚できます。それにより、業務を協力してこなしていくことができ、みんなで一つの目標に向かうためのチームワークを強化できるのです。
ビジネスにおいてチャンクダウンで行動を具体化し成果を出していくには、以下のようなステップを踏むといいでしょう。
達成したい目標や、解決したい課題を設定します。「売上目標を達成したい」「3年後に事業を成功させたい」など、ここでは大きな塊をイメージしてください。
STEP1で設定した目標や課題をチャンクダウンしていきます。このときに「具体的には?」という問いを繰り返していきます。また「他には?」という問いでスライドアウトを行うことで、タスクの視野を広く持つことができます。
最終的には、5W1Hが明確になる行動レベルまでチャンクダウンを行います。一例として、「売上目標を達成する」目標について5W1Hを明確化するには下記のようなイメージです。
目標:売上目標を達成する |
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行動内容 When(いつ):来月から1カ月間 Where(どこで):店頭で Who(だれが):チーフを責任者とした販売員が What(なにを):お客様アンケートを実施 Why(なぜ):顧客のニーズを把握するために How(どのように):アンケートに答えていただいた人に粗品をプレゼントする |
タスクごとの緊急度に合わせて、行動の優先順位や流れを決めます。このときに担当ごとのタスクの流れも意識してください。これらをまとめるには、下記のようなガントチャート(進行状況を管理する表)を用いてスケジュール管理を行うといいでしょう。
各々の行動が決まれば実行に移ります。その後、定期的に進捗状況や内容を確認し、必要であれば軌道修正を行います。
このとき、PDCAサイクルを意識するためにDo(実行)のあとにChack(評価)を行います。「うまくいったこと」「うまくいかなかったこと」を明確にし、さらにそれがなぜそうなったのかを考えます。そしてAction(改善)を考え、軌道修正のための案を出し合います。そうすることにより、軌道修正を行った次のPlan(計画)を立てられます。
ここではチャンクダウンをビジネスで活用した事例を紹介します。
新規事業を立ち上げるときには、取るべき行動がたくさんあります。まずはどのようなフェーズで進めるのかをチャンクダウンします。その後、各々のフェーズで取るべき行動をさらにチャンクダウンをして明確にしていきます。
具体的なフェーズをチャンクダウンすると「ビジネスモデルの構築」「実施計画の策定」「採算性の算出」といったものがあります。
「ビジネスモデルの構築」をさらにチャンクダウンすると「事業背景」「事業概要」「商品・サービス」「ターゲット顧客」などが挙げられます。これらを繰り返しチャンクダウンしていくことで、各々の項目に対しての行動とスケジュールを設定することができます。
大きな成功も小さなステップの塊であることが理解できれば、そこまでの道のりもそう遠くは感じなくなるでしょう。
上司が部下との個別面談など1on1で個人目標達成をサポートするときにもチャンクダウンは大いに活用できます。
まずは部下の目標を聞き出し、それを達成させるための方法についてスライドアウトを用いながらいくつか聞き出します。それぞれに対してチャンクダウンで行動を具体化させ、どの方法を用いると自分に合っているのかを考えさせます。行動レベルまでチャンクダウンをして具体化することで、当人も行動イメージが湧くので行動の優先順位がつけやすくなります。
これはコーチングで目標達成を行うときの方法であり、上司は部下に対して「具体的には?」「もっと詳しくすると?」といった質問を繰り返すといいでしょう。
業務マニュアルを作成するときに、チャンクダウンをして考えるとわかりやすくなります。まずは作成する業務に対して、大きな行動レベルを大項目としてチャンクダウンして考えます。それをさらにチャンクダウンをして中項目を決め、もう一段チャンクダウンをして細かい行動レベルの小項目を決めます。
例えば、機械操作であれば「準備」「操作」「片付け」の大項目を決めます。さらに「準備」をチャンクダウンして「材料準備」「安全確認」「保護具準備」といった中項目を決めて、各々に対して細かい動作の小項目をチャンクダウンしていく、といった手順となります。
チャンクダウンは意識的に活用することで、ビジネスにおけるさまざまなタスクを具体化できます。これにより、一人ひとりの行動が明確になり、速やかな活動へと促すことが可能となります。
チャンクダウンを繰り返し実践していくことで、一人ひとりが自らタスクを分解し、主体的に行動を起こせるようになります。
このように、チャンクダウンの効果的な活用は行動的な組織を築くことにつながり、事業成長の促進も可能となるでしょう。曖昧なものごとをチャンクダウンして、今すぐ行動を起こせる自律型人財を育てていきましょう。
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