「消費降級」から自分らしさ追求する「自築消費」へ 中国市場調査

2024年の中国消費市場は「消費降級(消費ダウングレード)」がキーワードだといわれ、先行きが不透明な経済環境の中、コスパ重視の傾向が強まりました。しかし博報堂生活綜研・上海の最新研究レポートによると、消費降級の裏で、消費を通じて自分らしさを再確認し、自己肯定感を高めていく消費行動も生まれているといいます。この記事では、「自築消費」と呼ばれる中国市場の新たなトレンドについて紹介します。
2024年の中国消費市場は「消費降級(消費ダウングレード)」がキーワードだといわれ、先行きが不透明な経済環境の中、コスパ重視の傾向が強まりました。しかし博報堂生活綜研・上海の最新研究レポートによると、消費降級の裏で、消費を通じて自分らしさを再確認し、自己肯定感を高めていく消費行動も生まれているといいます。この記事では、「自築消費」と呼ばれる中国市場の新たなトレンドについて紹介します。
目次
博報堂生活綜研・上海は、中国伝媒大学広告学院との共同研究「生活者“動”察」を行い、中国・上海市にて研究発表会を開催しました。
博報堂生活綜研・上海は調査の概要として、大都市から地方都市在住の20~59歳の男女3000名のインターネット調査、20~50歳の男女400名のQRコード決済アプリの支払い記録とアンケート調査、20~55歳の男女300名の日記調査、20~55歳の男女30名のデプスインタビューを実施したとしています。
2024年の中国消費市場は「消費降級(消費ダウングレード)」がキーワードでした。先行き不透明な経済環境の中、安さと一定の品質を両立する商品やサービスが増加し、低価格商品の買い物を楽しむ中国生活者が増えているといわれています。
一方、博報堂生活綜研・上海がQRコード決済アプリの利用データを分析したところ、支出金額が増加した人と減少した人の数はほぼ同数という結果が出ました。特に保険、飲食旅行、文化・レジャー、電子機器、住宅、医療といったカテゴリーでは、2023年と比較して平均支出金額が増えています。
博報堂生活綜研・上海の最新研究レポートからは、消費降級だけではない中国消費市場の様相がわかります。
調査によると、安さと品質を両立した商品が入手できるようになった現状を歓迎する一方で、昨今の消費降級のムードを、メディアやKOL(Key Opinion Leader)が煽りすぎていると感じている人は過半数を超えています。
また、消費降級というムードが自身の消費行動に影響を及ぼしていると回答した人は4割を超えます。節約や安価な商品を選択し続けることで、生活の質が落ち、自信を失っていくのではないかと不安を感じている人も4割を上回っています。
博報堂生活綜研・上海は、消費降級のムードに違和感を覚える人が増える中で、新たな消費欲求も現れはじめていると分析しています。また、このような消費降級のムードの中で生まれた新たな消費欲求に基づく行動を、「自築(中国語:自筑 Zizhu)消費」と呼んでいます。
博報堂生活綜研・上海は、新たな消費欲求「自築消費」の特徴として、以下の4つの行動をあげています。
コスパを追求するだけではなく、時々は自分の経済力やセンスを再確認するため、やや高価なものを購入したい。
副業で使える、子供のためになるなど、中長期目線で合理的だと思える納得感のある買い物をしたい。
他者の役に立つ自分を見出すため、ギフトや寄付など、誰かを支えるためのものを購入したい。
買い物に失敗して自分の判断ミスにがっかりすることがないよう、信頼するKOLや定評のある店でのみ購入したい。あるいは、AIや性格診断の結果をもとに購入したい。
博報堂生活綜研・上海は、節約志向・コスパ志向という大きな潮流だけではなく、「自築消費」という新たな消費行動に着目することは、今後の中国市場でのマーケティング戦略を考える上で重要な視点になると指摘しています。
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