インバウンド受入環境整備高度化事業 観光庁が2025年度の公募を開始
杉本崇
(最終更新:)
インバウンド受入環境整備高度化事業の概要(観光庁の公式サイトから https://www.mlit.go.jp/kankocho/kobo08_00034.html)
観光庁は、訪日外国人旅行者の周遊の促進と消費の拡大を図るため、2025年度「観光振興事業費補助金(インバウンド受入環境整備高度化事業)」の公募を2025年4月25日(金)から5月30日(金)までの期間で開始しました。事業は、訪日外国人旅行者の来訪増加が見込まれる市区町村(特定観光地)で、公共交通機関の駅等から個々の観光スポットに至るまでの散策エリアにおける「まちあるき」や広域的な周遊の環境整備を一体的に進める事業を支援します。
インバウンドとは
インバウンドとは、訪日外国人旅行のことを指し、政府が立てた「観光立国実現に向けたアクション・プログラム」をもとに、2013年には訪日外国人旅行者数が初めて1000万人を上回り、翌年には訪日外国人による旅行消費額も2兆円を突破した。コロナ禍で一時的に落ち込んだものの、その後は旅行者数も消費額も伸びています。
インバウンド受入環境整備高度化事業の目的
観光庁の公式サイトによると、インバウンド受入環境整備高度化事業は、公共交通機関の駅等から個々のスポットに至るまでの散策エリアにおける「まちあるき」や広域的な周遊に係る環境整備を一体的に進め、訪日外国人旅行者がストレスを感じることなく、快適に日本での旅行を満喫できる環境を整備することを目的としています。
インバウンド受入環境整備高度化事業の補助対象事業
具体的には、補助の対象となる事業は、以下の事業です。
賑わい環境の創出
- ナイトタイムエコノミーの環境整備
- イベント開催等により賑わい拠点となる屋外広場の整備
- 廃屋撤去
新たなニーズへの対応・新技術の活用
- ワーケーション環境の整備
- ICT を活用したゴミ箱の整備
- 多様な移動手段の整備
- 飲食店、観光案内所等を対象としたロボット等の導入
ストレスフリー・快適な旅行環境の整備
- 多言語案内の整備
- 観光スポット等の掲示物等の多言語化整備
- 無料公衆無線 LAN 環境の整備
- 飲食店、小売店等も含めた地域における多言語対応、先進的決済環境の整備
- トイレの高機能化及び洋式便器の整備
- 手ぶら観光カウンターの機能向上
ユニバーサル対応
- 段差の解消
- 子供連れ環境の整備
- 近距離移動支援モビリティの整備
拠点機能の整備・改良
- 外国人観光案内所の整備・改良
- 観光スポット情報・交流施設の整備・改良
- EV急速充電器の整備
- 既存おもてなし観光施設(トイレ施設を含む)における魅力度向上のための整備
インバウンド受入環境整備高度化事業の補助対象経費・補助率
補助対象経費は、使用目的が本事業の遂行に必要なものと明確に特定でき、補助金交付決定後に契約・発注により発生し、証拠書類・見積書等によって契約・支払金額が確認できる経費。原則として、国による他の補助金等の交付を受けている事業は対象となりません。
補助率は補助対象経費の1/2以内です。ただし、一部は、最大2/3以内となります。
インバウンド受入環境整備高度化事業ののスキーム
高度化事業は、以下のフローで進む予定です。
インバウンド受入環境整備高度化事業の事業スキーム図
- 受入環境整備高度化計画・要望書の提出(5月30日まで):高度化計画策定者(市区町村、都道府県、DMO、民間事業者など)が、特定観光地ごとの高度化計画と、実施する補助対象事業に関する要望書を提出します。
- 計画認定の通知及び補助金額の内示(6月下旬めど):観光庁が提出された高度化計画を審査し、認定した場合、高度化計画策定者に認定通知と補助金額の内示を行います。
- 交付申請書の提出(6月末めど):認定を受けた高度化計画に基づいて、補助対象事業者が交付申請書を提出します。
- 交付決定通知書(7月上旬めど):観光庁が交付申請書を審査し、補助金の交付を決定した場合、補助対象事業者に交付決定通知書を送付します。
- 事業実施(交付決定~2026年3月):補助対象事業者は、交付決定に基づき事業を実施します。
受入環境整備高度化計画:誰が、何を、どのように計画するのか
申請のなかで、とくに重要な書類が、受入環境整備高度化計画(高度化計画)です。高度化計画は、以下の高度化計画策定者が、特定観光地ごとに単独で、または共同で策定します。
- 市区町村: 当該特定観光地に係る市区町村。
- 都道府県: 当該特定観光地において事業を行う都道府県。
- 観光地域づくり法人(DMO): 当該特定観光地において事業を行う観光地域づくり法人(DMO)またはその候補として観光庁長官の登録を受けた法人。
- 民間事業者: 当該特定観光地において事業を行う民間事業者。
市区町村以外の者が高度化計画を策定しようとする場合は、あらかじめ特定観光地の市区町村の同意を得て、地方運輸局等に提出する必要があります。
また、特定観光地には、訪日外国人旅行者の来訪増加が見込まれる市区町村に隣接する市区町村の区域を含むことも可能ですが、その際は、上記の市区町村の同意に加えて、隣接する市区町村の同意も必要となります。
高度化計画には次の要素を盛り込む必要があります。
「策定者の住所」「名称及び住所」
「計画の全体像」
「関連事業者との連携状況」
「計画スケジュール」
「計画の目標」
「補助対象事業、補助対象事業者及び補助対象経費の見込み等」
高度化計画の認定基準
観光庁は、提出された高度化計画が以下のすべての基準を満たすと認められる場合に認定を行います。認定にあたっては、有識者の意見を聴くこととしています。
- 観光に関する国の基本的な政策に適合するものであること。
- 高度化計画の対象区域における訪日外国人旅行者の周遊の促進及び消費の拡大に相当程度寄与するものであると認められること。
- 円滑かつ確実に実施されることが見込まれるものであること。
なお、高度化計画において民間事業者が実施する整備を含む場合、当該民間事業者の整備を通じた生産性の向上や労働能率の増進等により期待される従業員の賃金待遇の改善についても参考とされます。
整備計画策定者が「歴史的資源を活用した観光まちづくり専門家会議」において「面的転換地域」として承認されている場合には、計画認定時に加点評価されます。
公募期間・提出方法
公募期間は2025年4月25日(金)~5月30日(金)17:00(必着)。予算が無くなり次第、公募受付は終了となります。
申請書類の提出先は観光庁の公式サイトで確認してください。
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この記事を書いた人
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杉本崇
ツギノジダイ編集長
1980年、大阪府東大阪市生まれ。2004年朝日新聞社に記者として入社。医療や災害、科学技術・AI、環境分野、エネルギーを中心に取材。町工場の工場長を父に持ち、ライフワークとして数々の中小企業も取材を続けてきた。
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