父が「社会貢献したい」と創業

 静科は2006年、俊二さんの父親で先代の邦雄さんが設立しました。エンジニアだった邦雄さんは33歳で独立し、アルミ材料の加工や段ボールの組み立て、印刷などを手がけました。60歳を過ぎてからは新幹線やヘリコプターの部材を製作するなど、経営は順調でした。

 あるとき、「社会に持続的に貢献できる製品を開発したい」と思い立ち、工場や飛行機などから出る騒音で悩む人が多いことに気づきました。

 従来の騒音対策製品は、鉄で囲った骨組みにグラスウールやウレタンを封入したものが主流。重くて大型だったため、零細企業や一般の人が手軽に利用するのは、難しい状況でした。邦雄さんはこれまで培った技術に加え、新たに技術者を迎え入れて新しい遮音材の開発に乗り出し、独自製品の「一人静」を開発しました。

 一人静はセラミックを染み込ませた紙製のハニカムに発泡材を封入し、従来品より高い遮音性を実現しました。「ハニカム」は、蜂の巣や昆虫の複眼など正六角形が集まって作られる構造体で、強度が優れていることから、フォーミュラーカー、航空機、戦車などのボディにも使われています。

 一人静には、それだけではなく、放・断熱や電磁波の防御、ホルムアルデヒドの無害化などの効果も加えました。それでいて、厚さや重みは従来製品の約3分の1に減らしました。

「静科」が独自開発したハニカム構造により従来製品よりも高い遮音を実現しました(同社提供)

 邦雄さんはこれまでの事業を整理し、防音事業に専念。社名も製品名の「静科」と改名しました。俊二さんが36歳のときでした。

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