目次

  1. 最低賃金とは
  2. 最低賃金の種類
    1. 地域別最低賃金
    2. 特定(産業別)最低賃金
    3. 対象となる賃金
    4. 雇用主の義務
  3. 最低賃金の改定・引き上げはいつから?
  4. 最低賃金の計算方法
    1. 時間給の場合
    2. 日給の場合
    3. 月給の場合
  5. 2022年の改定額はいくら?都道府県別の改定額・改訂時期一覧
  6. 政府目標、全国加重平均1000円
  7. 最低賃金の引き上げに役立つ補助金
  8. 最低賃金の引き上げに役立つ助成金
  9. 相談窓口

 最低賃金とは、雇い主が労働者に最低限、払わなければいけない賃金を定めたものです。もし、労使で最低賃金額より低い賃金で合意していたとしても無効となります。最低賃金未満の場合は、雇い主が労働者に差額を支払う必要があります。

 厚生労働省の特設サイトによると、最低賃金には、都道府県ごと定められた「地域別最低賃金」と、特定の産業の労働者に向けて定められた「特定(産業別)最低賃金」の2種類があります。雇い主は、どちらか高い方を払う必要があります。

 今回、大幅な引き上げで話題となっているのは地域別最低賃金です。

2022年度の地域別最低賃金(朝日新聞のデータベースから引用)

 地域別最低賃金とは、パートタイマー、アルバイト、臨時、嘱託などにかかわらず、各都道府県の事業場で働くすべての労働者とその雇い主に適用される制度です。最低賃金は、都道府県ごとに決められています。

 派遣社員の場合、派遣元と派遣先の都道府県が違う場合がありますが、派遣先の都道府県の最低賃金が適用されます。

 地域別最低賃金額を下回る賃金しかを支払わない場合は、最低賃金法で50万円以下の罰金が定められています。

 ただし、次の5つの場合は、雇い主が都道府県労働局長の許可を受ければ最低賃金の減額が認められます。

  1. 精神または身体の障害により著しく労働能力の低い人
  2. 試用期間中の人
  3. 基礎的な技能等を内容とする認定職業訓練を受け、厚生労働省令で定める人
  4. 軽易な業務に従事する人
  5. 断続的労働に従事する人

 特定(産業別)最低賃金とは、地域別最低賃金よりも高い水準を定める必要のある産業で設定されている制度です。全国で228件の最低賃金が定められています(2020年9月時点)。

 特定(産業別)最低賃金額を下回る賃金しか支払わない場合には、労働基準法で30万円以下の罰金が定められています。

 最低賃金の対象となるのは、毎月支払われる基本的な賃金です。残業代やボーナスは含まれませんので、最低賃金を計算するときは下記のような諸手当や賞与を引いて計算する必要があります。

  • 臨時に支払われる賃金(結婚手当など)
  • 1カ月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)
  • 所定労働時間を超える時間の労働に対して支払われる賃金(時間外割増賃金など)
  • 所定労働日以外の日の労働に対して支払われる賃金(休日割増賃金など)
  • 午後10時から午前5時までの間の労働に対して支払われる賃金のうち、通常の労働時間の賃金の計算額を超える部分(深夜割増賃金など)
  • 精勤・皆勤手当、通勤手当及び家族手当

 雇い主は、最低賃金の適用を受ける労働者の範囲、最低賃金額、参入しない賃金及び効力発生日を常時作業場の見えやすい場所に掲示するなどの方法により周知する必要があります。

 地域別最低賃金では、まず国の中央審議会が、47都道府県を分類したグループごとに、経済状況などに応じてそれぞれ引き上げ額の目安を示します。

 2022年は最低賃金(時給)を全国加重平均で31円(3.3%)引き上げ、961円とする「目安」が8月1日に決まりました。この目安を参考にして、都道府県ごとの地方の審議会が引き上げ額を話し合いました。

 各都道府県での答申が8月に出そろい、都道府県労働局での関係労使からの異議申出に関する手続を経た上で、都道府県労働局長の決定により、10月上旬ごろから新しい最低賃金での運用が始まります。

最低賃金とは(朝日新聞デジタルから引用)

 すべての地域別最低賃金と大部分の特定(産業別)最低賃金については、時間給で決められていますが、一部の特定(産業別)最低賃金は、日給と時間給の両方で決められています。

 詳しい計算方法は、厚労省の特設サイトで確認してください。

 時間給≧最低賃金額(時間額)

 日給÷1日の所定労働時間≧最低賃金額(時間額)。ただし、日額が定められている特定(産業別)最低賃金が適用される場合には、日給≧最低賃金額(日額)

 月給÷1カ月平均所定労働時間≧最低賃金額(時間額)

 答申によると、最低賃金は、2022年(令和4年)の全国加重平均額31円の引上げは、昭和53年度に目安制度が始まって以降で最高額でした。47都道府県で、30円~33円の引上げとなり、具体的には30円は11県、31円は20都道府県、32円は11県、33円は5県でした。

 都道府県労働局に設置されている地方最低賃金審議会が答申した2022年度の地域別最低賃金の改定額は次の通りです。都道府県名、答申された改定額【円】、 ()内は改定前、改訂月日の順に紹介します。

北海道 920円(889) 10月2日
青森県 853円(822) 10月5日
岩手県 854円(821) 10月20日
宮城県 883円(853) 10月1日
秋田県 853円(822) 10月1日
山形県 854円(822 ) 10月6日
福島県 858円(828 ) 10月6日
茨城県911円(879) 10月1日
栃木県913円(882) 10月1日
群馬県 895円(865) 10月8日
埼玉県 987円(956) 10月1日
千葉県 984円(953) 10月1日
東京都 1072円(1041) 10月1日
神奈川県 1071円(1040) 10月1日
新潟県 890円(859) 10月1日
富山県 908円(877 ) 10月1日
石川県 891円(861) 10月8日
福井県 888円(858) 10月2日
山梨県 898円(866) 10月20日
長野県 908円(877) 10月1日
岐阜県 910円(880) 10月1日
静岡県 944円(913) 10月5日
愛知県 986円(955) 10月1日
三重県 933円(902) 10月1日
滋賀県 927円(896) 10月6日
京都府 968円(937) 10月9日
大阪府 1023円(992) 10月1日
兵庫県 960円(928) 10月1日
奈良県 896円(866) 10月1日
和歌山県 889円(859) 10月1日
鳥取県 854円(821) 10月6日
島根県 857円(824) 10月5日
岡山県 892円(862) 10月1日
広島県 930円(899) 10月1日
山口県 888円(857) 10月13日
徳島県 855円(824) 10月6日
香川県 878円(848) 10月1日
愛媛県 853円(821) 10月5日
高知県 853円(820) 10月9日
福岡県 900円(870) 10月8日
佐賀県 853円(821) 10月2日
長崎県 853円(821) 10月8日
熊本県 853円(821) 10月1日
大分県 854円(822 ) 10月5日
宮崎県 853円(821) 10月6日
鹿児島県 853円(821) 10月6日
沖縄県 853円(820) 10月6日
全国加重平均 961円(930)

 最低賃金について2017年3月の働き方改革実現会議が決定した「働き方改革実行計画」で年率3%程度を目途として、名目GDP成長率にも配慮しつつ引き上げ、全国加重平均が1000円になることを目指すとされています。そのため、最低賃金は今後も引き上げられる見込みです。

 一方、中小企業、小規模事業者の影響が大きいため、生産性向上などの支援や取引条件の改善を図ることが掲げられています。

 政府は、中小企業や小規模事業者への支援メニューとして様々な補助金を用意しています。事業再構築補助金では、最低賃金の引き上げの影響を受け、その原資の確保が難しく、業況の厳しい中小企業などを対象とした「最低賃金枠」が設けられました。

 中小企業の補助率が4分の3と、通常枠の3分の2より高く、他の枠に比べて採択率を優遇されるメリットがあります。また、仮に不採択となっても通常枠で審査されます。

 このほか、小規模事業者持続化補助金にも特別枠「賃金引上げ枠」が設けられています。

 事業場内最低賃金を地域別最低賃金より+30円以上(達成済みなら、現在支給している、事業場内最低賃金より+30円以上)とした事業者が対象。また、業績が赤字の申請事業者は、補助率を3/4へ引き上げ、優先採択されます。

 中小企業・小規模事業者の生産性向上を支援し、事業場内で最も低い賃金の引き上げを目的とする業務改善助成金もあります。支給には次の4つ要件を満たす必要があります。厚生労働相は、2022年度も引き続き業務改善助成金特例コースを実施することを明らかにしています。

 就業規則の作成方法、賃金規程の見直し、労働関係助成金の活用などは全国にある「働き方改革推進支援センター」を活用してください。