在庫確認に1時間かけていた外壁塗装店、ムダなくす管理システムを協業開発
福岡県鞍手町にある地域密着型の外壁塗装専門店は、塗料の残量をリアルタイムに把握できないことや、無駄な在庫を抱えがちなことに、長年頭を悩ませていました。問題を解決するために社長が考えたのは、オリジナルの在庫管理システムを開発・導入することでした。これによって、自社の課題を解決したばかりか、新規事業による売上アップも実現したのです。
福岡県鞍手町にある地域密着型の外壁塗装専門店は、塗料の残量をリアルタイムに把握できないことや、無駄な在庫を抱えがちなことに、長年頭を悩ませていました。問題を解決するために社長が考えたのは、オリジナルの在庫管理システムを開発・導入することでした。これによって、自社の課題を解決したばかりか、新規事業による売上アップも実現したのです。
福岡県鞍手町で外壁塗装・屋根塗装の専門店を営む、フクモト工業。創業60年を超え、住宅の外壁や屋根の塗替えを中心に、高い技術を持った職人による丁寧な施工を武器に、地域に密着した事業を展開しています。
そんな会社が、膨れ上がる残塗料の管理業務に頭を悩ませていました。現場で仕様変更や追加の工事が入ったときに、いま何色の塗料がどのくらい残っているのかが、離れた場所にある倉庫にその都度行ってみないと分からず、確認するのに往復1時間以上もロスしていました。
また、在庫をリアルタイムで把握できていないため、塗料を重複して仕入れたり、現場で余った塗料を最後まで使わないまま倉庫で眠らせてしまったりといったことが頻発。最終的に廃塗料として処分するために、年間100万円以上の産業廃棄物処理費用がかかっていたのです。
そこで、塗料倉庫の整理整頓をしたのですが、それでも課題は解決しません。「きれいになった倉庫は、きれいというだけで必要な在庫を探すのに時間が掛かってました。また倉庫まで探しに行かないと分からなかったのです」
この問題を解決するため、フクモト工業の2代目福本満寿男社長は、滋賀県のシステム開発会社プリムスクリエイティブと手を組み、塗料缶の在庫管理を効率化する、オリジナルのクラウド型在庫管理システムの開発に踏み切りました。
ところが、塗装の知識がない社外パートナーとのやり取りで、当初は福本社長が思い描くイメージがなかなか伝わりませんでした。
↓ここから続き
ただ、丁寧に話し合いを重ねていくうちに、システムの全体像や完成形をメンバーと共有。最終的には、商品と色の組み合わせを考えれば数十万通りになる各塗料メーカーの商品をシステムから直接データベースに登録できる機能も実現してしまうほど、両者の理解は深まっていきました。この仕組みは、福本社長も簡単にはできないだろうと考えていたのだそうです。
ただ、完成したシステムを導入しようとしても、従業員には「新しい手間が増えた」と誤解され、すんなりと受け入れてもらえませんでした。
しかし、急な仕様変更や追加の工事が入ったときでも、現場でスマホから在庫検索ができ、無駄な倉庫の往復時間がゼロになるなど、効果を実感するにつれ、自社になくてはならないシステムだと理解されるようになります。
さらに、在庫を確認しながら新たな塗料を発注できるようになり、重複発注はゼロに。無駄な在庫を抑制するとともに廃塗料の費用も劇的に減り、従業員のコスト意識も高まっていきました。
在庫管理システムは、「気持ちのいい職場」が実現するという、副次的な効果も生まれました。倉庫や事務所、職人の詰め所が、当たり前のように整理整頓されるようになったのです。システムによって、業務効率の改善だけにとどまらず、会社全体が生まれ変わりました。
ちなみに、システム導入までは決して楽な道のりではなく、くじけそうにもなったといいますが、福本社長はそんな時、チキンラーメンができるまでのドラマ「まんぷく」や映画「フジコヘミングの時間」を見て自らを奮い立たせていたそうです。
2020年11月、中小企業の相談所である「直鞍ビジネス支援センター」に、福本社長から「システムが完成したよ」と連絡が届きました。そこで、倉庫で話を聞いたあと、2つの助言をしました。
1つは、長年の知見が詰まった在庫管理システムを、法的に保護するために特許などを申請すること。
そしてもう1つは、同業他社に外販するための、塗料メーカーとの連携です。
さっそく、直鞍ビジネス支援センターが懇意にしている弁理士を紹介、特許を申請した上で、「らくらく塗装屋さん」と名付けて商品名を商標登録しました。
また、共同開発したシステム開発会社が窓口となり、業界向けに販売をスタート。すでに複数の同業他社に導入が始まっており、塗料販売店からも問い合わせが相次いでいます。
福本社長は「私たちは塗料を使う責任として廃棄塗料は減らす必要があると思います。今後は塗料メーカーにも働きかけて一緒に塗料の廃棄量の削減につなげていきたいと思います」と話します。
福本社長は、次なるシステムの改良に注力しています。手作業だった塗料缶の計量を、電子秤と小型コンピュータRaspberry Piを使って自動化し、クラウド上で共有できるように改良しました。
この改良には、福岡県工業技術センターの機械電子研究所から助言を受けたほか、当センターが紹介した直方市のシステム開発会社「キューブリック」が関わりました。
「経営者だけではDX化は実現できない。社外パートナーを募るとともに、自らも知恵を絞り、実現できる方法を考えるべきだ。私も社外のさまざまな方に助けて貰うことで、構想を実現できた」と話す福本社長。
今後は「らくらく塗装屋さん」をさらに進化させ、スマホなしで塗料缶の重量を入力できるように改良していくとともに、塗料メーカーのアプリとも連携させながら、利便性の向上に努めていきます。
コロナ禍は、単なるIT化からデジタルトランスフォーメーション(DX)に舵を切る企業を増加させました。DXは単なる業務効率化にとどまらず、会社全体の変革、そして新しい事業による売上アップをも可能にします。直鞍ビジネス支援センターは、中小企業のお困りごとに耳を傾けながら、1つひとつの事案に対して真摯に向き合い、問題解決に向けサポートしていきます。
(続きは会員登録で読めます)
ツギノジダイに会員登録をすると、記事全文をお読みいただけます。
おすすめ記事をまとめたメールマガジンも受信できます。
おすすめのニュース、取材余話、イベントの優先案内など「ツギノジダイ」を一層お楽しみいただける情報を定期的に配信しています。メルマガを購読したい方は、会員登録をお願いいたします。
朝日インタラクティブが運営する「ツギノジダイ」は、中小企業の経営者や後継者、後を継ごうか迷っている人たちに寄り添うメディアです。さまざまな事業承継の選択肢や必要な基礎知識を紹介します。
さらに会社を継いだ経営者のインタビューや売り上げアップ、経営改革に役立つ事例など、次の時代を勝ち抜くヒントをお届けします。企業が今ある理由は、顧客に選ばれて続けてきたからです。刻々と変化する経営環境に柔軟に対応し、それぞれの強みを生かせば、さらに成長できます。
ツギノジダイは後継者不足という社会課題の解決に向けて、みなさまと一緒に考えていきます。