【7月18日は何の日】52年前、日本で初めて光化学スモッグを確認
「実は10年前のきょう…」「きょうはこんな日なんですけど…」。取引先との雑談や、プレゼンの冒頭、社内の朝礼など、日々のビジネスシーンでのちょっとした会話のきっかけになる話題の“タネ”を紹介します。
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52年前の1970年7月18日、東京都杉並区の私立高校で突然、生徒四十数人が吐き気などを訴えて倒れ、付近の病院に搬送されるできごとがありました。
ほぼ同じころ、同じ杉並区内や隣接する世田谷区でも目の痛みや吐き気を訴える人が十数人相次ぎました。
東京都はすぐに大気汚染が原因と断定し、世界で初めての「複合汚染」、いわゆる「光化学スモッグ」が発生したと発表しました。
この日のできごとについて、朝日新聞では翌19日付の1面トップと、「総合面」と言われる第3面(いずれも東京本社版)で詳報しています。
第3面の見出しは、「“通り魔公害„校庭を不意打ち」でした。
入院した生徒や、この学校の教諭、近隣の人たちが、突然のスモッグの襲来について朝日新聞の記者に証言してくれました。
それを「“毒ガス„の恐怖、被害者らは語る」という見出しとともに伝えました。
大気汚染が起きた現場なのに生徒たちが倒れた学校には物見客が集まったため、「異状ガス発生グランド 立入禁止」という手書きの張り紙が掲示されました。
グラウンドで練習中だった女子ソフトボール部のエースピッチャー(当時16歳)によると、ボールを100球投げ終わったところで呼吸が急に荒くなる症状が出たそうです。
そのままランニングを始めたら途中で呼吸ができなくなり、やがて視界もきかなくなり意識を失ったそうです。
「においはなかったし、空気もいつもと変わらなかった」と振り返っています。
緊迫の証言はさらに続きます。
この学校の教諭(当時36歳)によると、「上空に乳白色の無臭のスモッグが厚いフトンのように立ち込めていた」そうです。
スモッグは暑い太陽に照らされ、やがて低い方へ降りてくるのがはっきりと見え、その直後から生徒がバタバタと倒れる「事件」が起きたようです。
そして、しばらく経って風が吹くと、スモッグは消え、いつもの空に戻ったと伝えています。
新たな大気汚染について、気象庁の専門家は当時、「予測できない事態」と警戒感をあらわにしました。
「警戒態勢を再検討する必要がある」とも訴えたそうです。
環境省によると、光化学スモッグは工場や自動車から大気中に排出された窒素酸化物や炭化水素が太陽の紫外線を浴び、化学反応を起こして変質した「光化学オキシダント」が原因です。
紫外線が強かったり大気中にガソリン由来の揮発性有機化合物が含まれたりすると化学反応が促され、スモッグが生じやすくなります。
特に真夏の日中、日射が強い晴れ空の日に光化学スモッグが発生しやすくなるそうです。
光化学スモッグを最初に確認した杉並区の周辺では、翌8月の23、24の両日にも光化学スモッグが確認されました。
川崎市周辺の京浜工業地帯から流れてきた大気の影響で亜硫酸ガスの濃度が高くなったことが原因のようです。
神奈川県でも8月15日、県内で初めて川崎市内で光化学スモッグを確認しました。
環境省によると、この年の被害者は全国で1万7887人に達しました。
全国で被害がピークだったのは翌年の1971年でした。
この年、光化学スモッグが確認された都道府県は7つ。
被害者数は4万8118人まで増えたそうです。
次のピークは1975年で4万6081人。
京浜工業地帯を抱える横浜市だけで6000人超の被害が発生し、その多くはクラブ活動などで屋外にいた小中学生だったそうです。
国も対策を進め、自動車の排ガス規制を強化したり大気汚染防止法を改正したりして窒素酸化物など原因物質の抑制に力を入れてきました。
自動車の環境技術が進んだ効果もあり、1980年代の後半から光化学スモッグの被害者数は激減しました。
2020年の被害者数は2県(岐阜・埼玉)の4人で、前年(9県、337人)と比べても大きく数を減らしました。
とはいえ、まだゼロになった年はありません。
行政も私たちも、まだまだ注意を怠らないほうがよさそうです。
(朝日新聞社の経済メディア「bizble」で2021年7月18日に公開した記事を転載しました)
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