目次

  1. 送料に用いる主な勘定科目と仕訳例
    1. 商品販売時に発生した送料は「荷造運賃」
    2. 顧客が負担する送料を立て替えたときは「立替金」または「売掛金」
    3. 郵便局利用時に発生した送料は「通信費」
    4. 商品仕入時に発生した送料は「仕入」
    5. 材料仕入時に発生した送料は「材料費」
    6. 贈答品の発送時に発生した送料は「交際費」
    7. 固定資産の購入時に発生した送料は取得原価に含める
  2. 送料を仕訳するときの注意点
    1. 勘定科目はむやみに変更しない
    2. 購入した際にかかる送料は取得原価とすることが原則
    3. 消費税がかかるときとかからないときがある
  3. 送料は利用する頻度が多くパターンも多い

 送料は、さまざまなシーンで発生します。会計処理を行うときには、同じ送料であっても、その場面にあった勘定科目を採用する必要があります。勘定科目を適切に採用しないと、損益計算や税金計算を誤ってしまいます。

 送料が発生する主なシーンとその際に用いる勘定科目は、以下のとおりです。

送料が発生するシーン 主に用いる勘定科目
商品を販売したとき 荷造運賃
顧客が負担する送料を立て替えたとき 立替金(場合によっては売掛金)
郵便局を利用して発送するとき 通信費
商品を仕入れたとき 仕入(場合によっては仕入諸掛)
材料を仕入れたとき 材料費
お歳暮などの贈答品を発送したとき 交際費
固定資産を購入したとき 購入した固定資産の取得原価に含める

 一つずつ確認していきましょう。

 商品を販売し、販売した側が送料を負担する場合は、荷造運賃という勘定科目を使用することが一般的です。計上区分は、「販売費及び一般管理費」になります。会社によっては、荷造運賃ではなく、運送費や配送費など、別の勘定科目名を採用しているかもしれませんが、基本的には「販売費及び一般管理費」にある勘定科目を採用します。

 荷造運賃は一般的には、段ボールなど、運賃の他に荷造に関する費用も含みます。

【仕訳例】
(例)10,000円の商品を販売し、運送業者に引き渡した。送料800円は自社当社負担としている。

借方 貸方
売掛金 10,000円 売上高 10,000円
荷造運賃 800円 未払金 800円

 商品を販売した際に、送料は顧客負担としている場合があります。この場合、運送業者に支払をするのは、販売した会社が立て替えます。そのため、支払時に立替金を使用することが望ましいです。

 一方で、商品を販売した際に売掛金を計上する場合は、売掛金と立替金、2つの債権が計上されます。2つの債権があると入金時の消し込み作業が手間となるため、送料も売掛金として計上するケースもあります。

【仕訳例】
(例)商品10,000円を販売し、お客さま負担の送料800円を立替払いした。

借方 貸方
売掛金 10,000円 売上高 10,000円
立替金 800円 現金 800円

 送料も売掛金とする場合は以下のとおりです。

借方 貸方
売掛金 10,800円 売上高 10,000円
現金 800円

 請求書などの印刷物を送付する場合は、封筒に切手を貼って発送することが多いでしょう。その場合は、一般的に郵便代金が含まれる勘定科目の通信費がしばしば採用されます。

【仕訳例】
(例)請求書を発行し、封筒に詰めて発送した。切手代は120円だった。

借方 貸方
通信費 120円 現金 120円

 商品仕入の際に発生する送料は、仕入に含めて計上します。これを取得原価に含めると言います。一方、管理面から仕入に含めず、仕入諸掛という仕入に付随して発生したとわかる勘定科目が採用される場合もあります。

 仕入時の送料に対して、仕入もしくは仕入諸掛を使用するのは、仕入れた商品が期末に残ってしまった場合、送料も含めて棚卸資産とする必要があるためです。もし、「販売費及び一般管理費」の荷造運賃にしてしまうと、売上総利益が適切に計算できなくなり、期末に在庫が残った際も棚卸資産にすることが困難になります。

【仕訳例】
(例)3,000円の商品を仕入れた。その際、送料500円が発生した。

借方 貸方
商品仕入 3,500円 買掛金 3,500円

 仕入諸掛を採用する場合は、以下のとおりです。

借方 貸方
商品仕入 3,000円 買掛金 3,500円
仕入諸掛 500

 材料を仕入れた際には、取得原価として材料費を用いるのが一般的です。材料費にすることで、製造原価計算を適切に行うことができます。また、商品仕入と同様、売上総利益の適切な計算や、棚卸資産の適切な算定をすることが可能となります。

【仕訳例】
(例)1000円の材料を仕入れ、そのときに送料300円が発生した。

借方 貸方
材料費 1,300円 買掛金 1,300円

 企業の付き合いとして、購入したお歳暮などの物品は交際費であり、それに付随して発生する送料も交際費として計上します。

 交際費は、法人税の計算において、上限額(※)を超えると損金として認めてもらえないなどの制約があります。

(※)上限額は、期末の資本金または出資金の金額が1億円以下である法人の場合、800万円までです。ただし、この800万円の基準は、接待飲食費の特例とあわせて使えないので注意する必要があります。また、資本金が1億円を超えると、贈答品のような交際費は全額損金として認めてもらえません。

 そのため、贈答品に関する送料は、分けて計上して税金計算の際に合算するよりも、最初から交際費として計上をした方が、後の税金計算で楽になります。

【仕訳例】
(例)得意先に対して百貨店で贈答品5,000円と送料800円を現金で支払った。

借方 貸方
交際費 5,800円 現金 5,800円

 100,000円以上の工具器具備品や機械装置など、固定資産を購入した際に発生した送料は、固定資産の取得原価に含める必要があります。これは企業会計原則や、法人税法などで定められています。

【仕訳例】
(例)350,000円の機械装置を購入し、送料が20,000円発生した。

借方 貸方
機械装置 370,000円 未払金 370,000円
送料に用いる主な勘定科目と仕訳例
送料に用いる主な勘定科目と仕訳例(デザイン:吉田咲雪)

 送料を仕訳するときには、主に3つの注意点があります。

 送料は、さまざまなシーンで発生するため、いくつかの勘定科目を使用することを紹介しました。しかしながら、シーンごとに定めた送料の勘定科目については、1回決めたら変更することは会計の原則からできません。また、変更をしてしまうと送料の分析をすることが難しくなり、管理面においても不具合が生じます。

 そのため、まずは勘定科目の定義づけをして、一度勘定科目を決めたらその勘定科目を使用しましょう。

 物を購入した際に発生した送料は、荷造運賃などの勘定科目は使用せずに取得原価とすることが原則です。取得原価とは、購入した科目で計上することで、取得した際の金額を構成するということです。

 これは、企業会計原則という会計に関する原則を規定しているものや法人税法などで求められています。取得原価にすることで、売上を計上したときに売上原価に計上したり、減価償却を通じて費用処理できたりと適切な損益計算を行うことができます。

 一方、商品を発送したり、書類を送付したりした場合は、荷造運賃など取得原価と別に計上します。

 大きく区別すると、この2つのパターンになるため、判断に迷った場合は何か物を購入したときか否かを確認してみてください。

 日本国内で発生した送料には消費税がかかるため、課税仕入として計上しなければいけません。

 ただ、顧客負担の送料を立て替えている場合は、不課税取引になります。また、海外での輸送の場合も消費税はかかりません。これは発行される請求書を確認して計上する必要があります。

 消費税のパターンが複数想定されることから、送料に関する仕訳を起票する際は、税区分にも気をつけましょう。

 送料は、ビジネスを行う上でさまざまな場面で発生します。すべてを荷造運賃とすることができれば簡単です。しかし、仕入や固定資産の取得に関して発生する場合は、その科目に含める必要があるなど、パターンによって使用する科目が多岐に渡ります。

 また、国内だけであれば問題ありませんが、海外で発生した場合は免税取引になり、消費税区分にも影響を及ぼします。

 そのため、送料を取り扱うときは、ある程度のパターン分けはしつつも、新たな取引の際には慎重に判断する必要があります。