目次

  1. 仕事でプレッシャーを感じすぎるとどうなる?精神的な負担に潜むリスク
  2. 仕事でプレッシャーに押しつぶされそうになってしまう理由3つ
    1. 資金繰りのプレッシャーが毎月ある
    2. 事業が失敗できない、借金返済の二重のプレッシャー
    3. 従業員から常に見られているというプレッシャー
  3. 仕事のプレッシャーを克服するには?具体的な方法3つと心得
    1. プレッシャーを克服するための具体的な方法
    2. プレッシャーを克服したいなら人に頼ること
  4. 仕事のプレッシャーを克服した事例
    1. 資金繰りに行き詰まり、経営者に向いていないと悩む
    2. 姉の何気ない一言で気が晴れ「どうにかなる」と好転
  5. プレッシャーとうまく付き合えば事業成長につながる

 プレッシャーとは、優れたパフォーマンスを発揮しなければならないという心を刺激する精神的な圧力のことを指します。

 ビジネスの現場では、重要な顧客との交渉を成功させなければならないときや、顧客からの難しい要求があったときに「プレッシャーを感じる」といった使われ方をします。

 プレッシャーには、よい影響と悪い影響があります。

 よい影響には、「集中力が高まる」、「身体が覚醒するので優れたパフォーマンスを発揮できる」ことがあげられます。「火事場の馬鹿力」という言葉がありますが、適度なプレッシャーを感じることは、その人のパフォーマンスを高め、成長する機会にもなります。

 一方、プレッシャーを感じすぎると悪い影響もあります。感じるプレッシャーの一定のレベルを超えると、逆にパフォーマンスが下がってしまうのです。プレッシャーを感じすぎることで判断力が鈍り、結果ミスをしたり、イライラしたりすることがあります。

 さらに、プレッシャーを感じすぎている状態が長期間続くと、食欲不振や睡眠障害、うつといった、身体的な症状に繋がります。症状がひどくなると日常生活が送れず、治療が必要になってしまいます。

 特に、創業したてや事業が急成長している経営者は、事業が忙しいからこそ感じるプレッシャーの量が多くなるとともに、休みがなかなか取れずプレッシャーを感じる時間も長くなりがちです。

 そのため、事業が少し落ち着いたタイミングでそれまで身体に積み重なったプレッシャーから、体調を崩してしまう経営者も見受けられます。

 適度なプレッシャーは人の成長につながりますが、一方でプレッシャーを感じすぎてしまうのはなぜでしょうか。これには、経営者だからこそ置かれた状況がそうさせている面もあると考えます。

 筆者は、複数の中小企業の経営者に、どのようなプレッシャーを感じているかインタビューを行いました。結果、どの経営者も話していたのは、次の3つのプレッシャーでした。

 経営者であれば誰もが持つプレッシャーは、資金繰りといえるでしょう。

 一般的に、事業に必要な経費の支払が先に行われ、売上金の回収はそれから1〜2カ月遅れます。

 したがって、経営者は毎月「支払いのための十分なキャッシュがあるかどうか」「売上金は期日どおり回収できるかどうか」頭を悩ませることになります。

 しかも、これが毎月続くのですから、経営者の心が休まるときはありません。

 資金繰りがショートした場合は取引停止など、大きな信頼低下につながるため、経営者が感じるプレッシャーは、従業員のそれと比較しても大きなものになるでしょう。

 経営者の多くは、事業をするために銀行から多額の借金をしています。特に、設備資金が必要な事業であれば、売上があがるかどうかわからないなかで、時には数千万円の借り入れを背負って、事業をスタートしています。

 前項の資金繰りに通じますが、事業が失敗すれば、この多額の借金を返すことができなくなります。

 したがって、経営者は事業を絶対に成功させなければならないというプレッシャーと、借金を期日通り返済しなければならないという、二重のプレッシャーを感じているのです。

 従業員を雇用している経営者の中には「従業員に社長として見られていることにプレッシャーを感じる」と話す人もいました。

 その経営者は、従業員に気持ちよく働いてもらうために、ちょっとした一言にもとても気を使うと話しています。従業員からの信頼を失ってしまっては、事業を進めることができないからです。

 従業員から常に見られ、自分自身の言動に気を使うということも、仕事をしているときはもちろん、時にはプライベートの過ごし方についても気を使うことにつながり、気が休まるときがなかなかない状態が続いてしまうのです。

 これら3つのプレッシャーをまとめると、経営者が置かれた状況は「プレッシャーが長期化しやすい」「心が休まるときが少ない」ことから、プレッシャーの負荷が大きいといえます。 

 では、このような状況でも、仕事のプレッシャーを克服するためにはどのようにすればいいのでしょうか。経営者にインタビューをしてわかった方法と心得ておきたいことをご紹介します。

仕事のプレッシャーを克服する方法
仕事のプレッシャーを克服する方法(デザイン:吉田咲雪)

①小さな目標を立てて成功体験を積む

 事業を進めていると、毎日のようにトラブルが発生します。その度に「またトラブルだ!」と感じていては、事業がうまく進んでるのかどうか、このまま失敗してしまうのではないか……と不安になってしまいます。

 そこでプレッシャーを克服している経営者が取り組んでいる対策は、小さな目標を立てて、成功体験を繰り返すことです。

 小さな目標を達成することにより「事業が進んでいる、うまくいっている」と自信を積み重ね、プレッシャーからの圧力を跳ね返す原動力にもなっているのです。

 小さな目標の立て方としては、「今月」「今週」「今日」にやるべきことはなにか、どんな小さなタスクでも見える化していく方法があります。

 タスクを見える化することで、「今」何をすればよいのかわかり、事業に迷わず取り組むことができます。

②セーフティネットとなる支援策を知る

 多額の借金をし、事業を絶対に成功させなければならないと思うと、経営者が感じるプレッシャーも大きいものになります。

 そこで、仮に経営状況が悪化したときに利用できる支援制度を知っておくことで、不安を軽くすることができます。

 例えば、「セーフティネット保証5号」制度です。これは、業況の悪化している業種に属する事業で、経営の安定に支障が生じていると市区町村長の認定を受けた中小企業が資金繰り安定のための借り入れをする場合、信用保証協会が通常の保証限度額とは別枠で80%保証を行う制度です。

 また、過去にはコロナ禍で特に経営の打撃を受けた中小企業や個人事業主に対し、事業全般に幅広く利用できる持続化給付金制度が作られました。

 さらに、各都道府県の中小企業支援センターには、無料で中小企業診断士や弁護士などの専門家に相談できる経営相談窓口を有しています。

 このように、事業がうまくいかないときに利用できる支援制度を事前に調べておくだけでも、「もし失敗したときにはここに相談してみよう」と、感じるプレッシャーも楽になるのではないでしょうか。

③なぜ事業をやっているのか「軸」を持つ

 毎日起こるさまざまな課題やトラブルに振り回されていると、「そもそもなぜこの事業を始めたのか」という、当初の志を忘れてしまうことがあります。

 自身が事業を進めるうえでの「軸」がぶれてしまうことで、どう判断すればよいのか迷い、不安感からプレッシャーがさらに大きくなってしまいます。

 そこで、インタビューをした経営者の多くは「なぜこの事業をやっているのか」「私は仕事で何を成し遂げたいのか」といった、自身の行動の土台となる「軸」を見返す機会をつくっていました。

 ぶれない判断軸を持つことで、「どうすればいいのか決められない」といった不安は払拭され、気持ちよく事業に打ち込むことができるでしょう。

 経営者が感じているプレッシャーは、従業員が感じるものとは比較にならないくらい大きいものです。したがって、プレッシャーを克服するには、上記で紹介した方法を取るときにしても、それ以外の方法を取るときにしても、自分一人だけで抱えないことがポイントとなります。

①仕事はどんどん周りに任せ、経営に集中する

 プレッシャーと上手くつきあっている経営者は、自分だけで仕事を抱えず、従業員に任せたり、外部パートナーに委託しています。

 経営者でなくてもできる仕事はどんどん周りに任せることで、経営者は自分がすべき仕事だけに集中できるのです。

 仕事を任された従業員は、その仕事を達成することで、成長する機会につながります。外部パートナーに頼る場合でも、自社だけでは気がつかない視点や、ノウハウの取得ができることで、長期的に企業の成長につながるのです。

②何でも相談できるコーチをつける

 経営者はとても孤独です。経営の意思決定は自分で最終判断を下さなければなりませんが、それを社内や社外の人に気軽に相談できるかというと、そうではありません。

 自分が決定した判断が本当に正しいのかどうか、正解が見えないビジネスの世界では、迷いや不安が生じ、そのために大きなプレッシャーを感じてしまいます。

 そこで、経営者のなかには、社外になんでも相談できるコーチをつけている人もいます。

 このコーチは、コーチングの専門的なトレーニングを受け、資格を取得したコーチの場合もありますが、家族や信頼できる友人、少し先をいく起業家の先輩など、コーチングとは全く関係ない人の場合もあります。

 コーチや信頼できる人に相談するメリットは、人に話すことで自分を客観的に見つめることができ、自分だけでは思い浮かばなかった視点が得られることです。

 モヤモヤしていた頭の中が整理され、課題に対しての解決策が見つかることで、感じていたプレッシャーも軽くなるでしょう。

 ここで、食品製造業を起業して4年目の、A社社長の事例をご紹介します。

 A社の社長は、会社員時代に出会ったある食材の可能性を高く感じ、その食材を気軽に食べることができる食品開発事業を起業しました。

 さらに社長は、開発した食品とのシナジーが見込め、経営リスクを分散化する目的で、起業2年目から飲食業を始めました。

 しかし、飲食店事業を開始した頃にコロナが流行したことで、顧客が想定どおり伸びませんでした。飲食業を始めるために投資した設備費や店舗運営の人件費、そのための借入金返済が経営を圧迫し、資金繰りに息詰まるようになりました。

 資金繰りの悩みが頭の中に常にあることで、事業への迷いも大きくなり、ついには「自分は経営者に向いていないのではないか」と自身を攻めるとともに、体調も悪化してしまいました。

 この社長がプレッシャーを克服したきっかけは、プライベートで久しぶりに会った姉に、ふと事業がうまくいっていないことを話したことでした。

 その姉から「あなたは昔から人がいいから、経営者に向いていないよ!」とはっきり言われたことで、社長は「そうだ、私は経営者に向いていないんだ。だからこそ、自分だけでやらず、他の人に頼ろう」と、ぱっと気がはれました。

 もし姉以外から「経営者に向いていない」と言われたら気に触ったかもしれませんが、社長の人柄をよく知っている姉からの一言は、素直に受け入れることができたといいます。

 また、プレッシャーに押しつぶされそうになったからこそ、なぜ自身が会社員を辞め起業をしたのか、自身の「軸」を考え直すことにもつながりました。

 そこからは、外部パートナーに相談したり、利用できるセーフティネットを調べたりしました。それにより、「資金繰りは厳しいけれども、なんとかなるだろう。だめだったら会社を畳んで、また会社員に戻ろう」と前向きに捉えることができたそうです。

 この社長は、今別の飲食店事業を新たに立ち上げるほか、外部パートナーとともに新商品開発に取り組むなど、事業に奮闘しています。

 経営者が感じるプレッシャーは大きいものですが、うまく付き合うことで、事業を成長させる土台となります。

 本記事で解説したように、プレッシャーは自分だけでかかえず、組織や外部パートナーの力を頼ることとで、さらに事業を伸ばしていきましょう。