目次

  1. 10万着のオーダースーツを製造
  2. 「大きくなったら継ぐ」と決意
  3. 父へのあこがれが「完全に崩壊」
  4. 「御用聞き営業」にメス
  5. 価格是正で黒字転換を実現
  6. 債権放棄を招いて会社を去る

 大手企業が多数参入するビジネススーツ業界にあって、オーダースーツSADAはフルオーダースーツに特化し、急成長を見せています。店内では経験豊富なスタッフが顧客の体に合わせて採寸し、そのデータは、宮城県や中国・河北省にある工場に送られます。

 CAD(自動設計システム)によって型紙を作製し、CAM(自動裁断システム)で生地を裁断します。その後は、熟練の職人の手で一つひとつ縫製するといいます。オーダースーツの要となる採寸と縫製は専門の職人が担い、自動化できる型紙作製と生地裁断は機械化でコストを削減。この分業で、初回1万9800円という低価格での提供につなげています。

オーダースーツの製造工程(オーダースーツSADA提供)

 2022年7月期の売上高は約33億円、店舗数は48店で従業員数は214人。オーダースーツの年間製造着数は10万6千着にのぼります。

【ダイジェスト動画】佐田展隆社長のインタビュー

 4代目の佐田さんは05年に一度社長となり、黒字転換を果たすなどの成果を残しながら、多額の負債のため一度会社を去ります。しかし、11年の東日本大震災で会社が危機に陥り、再び社長に復帰。卸から小売りへのシフトで、18億円台だった売り上げを数年で30億円台まで押し上げました。

 スーツのカジュアル化が進むなか、佐田さんは「スーツは本来、向き合う相手に敬意と感謝を伝えるためのアイテムです。その思いを表現するには、フルオーダースーツでないと不十分と思っています」という信念で事業を拡大しています。

フルオーダースーツは丁寧な採寸がカギを握ります(同社提供)

 オーダースーツSADAは1923年、佐田さんの曽祖父である定三さんが東京・日本橋に創業した服飾雑貨店からスタートします。2代目となる祖父の茂司さんは戦後、東京の焼け野原から店を再起させ、60年にスーツの工場生産をスタート。埼玉県と宮城県に工場を新設し、CADを導入して生産力を向上させていきました。

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