目次

  1. 東日本大震災を機に社長復帰
  2. 「震災で失った利益を小売りで取り戻す」
  3. 大手の近くにあえて出店
  4. ビルの上階で出費を抑える
  5. 社長の挑戦が社員を動かす
  6. コロナ禍からの回復
  7. プロスポーツチームにスーツ提供
  8. クレームをチャンスに変える
  9. 「迷ったら、茨の道を行け」

 オーダースーツSADAは採寸と縫製は専門の職人が担い、自動化できる型紙作製と生地裁断は中国などの工場で行う分業化で、初回限定1万9800円という低価格のフルオーダースーツを提供しています。佐田さんは2005年に父から経営を引き継ぎ、適正価格への是正や生産性改革で黒字化を果たしましたが、25億円もの負債が重荷に。85%の債権放棄と引き換えに、佐田さんは責任を取って08年に家業を去りました(前編参照)。

 その後、佐田さんは経営コンサルタント会社などで働いていましたが、11年3月の東日本大震災後、会社の引き受け手が不在となり、再び佐田さんに白羽の矢が立ちます。

 宮城県の工場や取引先であるテーラーの多くが震災で被災。その状況下で、当時のオーナー会社が経営を手放すことになったのです。復帰を決意した佐田さんは、それまで卸売りがメインだった自社のフルオーダースーツを直販店で展開する方向にかじを切ります。

オーダースーツの製造は職人の腕がものを言います(同社提供)

 実は1度目の社長就任のとき、佐田さんはフルオーダースーツを直販する店をいくつか展開していました。「当時は卸先であるテーラーさんに、若い人もオーダースーツに興味を持つということを証明する目的で運営していました。実際に販売を開始すると、予想以上にユーザーからの反響があったのですが、本腰を入れる機会は与えられず会社を離れざるを得ませんでした」

 この時の手応えを、2度目の社長就任時に生かすことを考えました。

 とはいえ、東日本大震災による工場や取引先の被災が重なり、1度目の時に立ち上げた店舗やウェブでの注文も、ほとんど動きがありません。社内は「オーダースーツの需要はない」という空気に支配されていました。

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