目次

  1. 小ロットの段ボール製造に強み
  2. お笑い芸人志望から後継ぎへ
  3. 若者の強みを生かして成果を出す
  4. 赤字体質に悩まされる
  5. 若手社員の工夫で進んだ合理化
  6. 社員との対話で育む「当事者意識」
  7. 手を差し伸べる会社に

 1969年に創業した東京包装は、数量500枚に満たない小ロットの段ボール製造を得意としています。必要に迫られていれば1枚だけの納品にも応じてきました。顧客のほとんどを近隣の中小企業が占め、取引先は産業財の製造業を中心に約200社にのぼります。現在の年間売り上げは約1億円、従業員の数は10人前後になります。

 中小企業では、段ボール箱が急に足りなくなるトラブルが頻繁に起きます。段ボールは生産工程の最終段階で必要になるため、在庫切れに気づくのが遅れてしまうというわけです。納期が迫っているケースも多々あり、小回りの利く東京包装は「縁の下の力持ち」として頼りにされています。

 現社長の順子さん(60)の息子である黒岩さんは「赤字が続いた時期もありましたが、若手人材の活躍で会社の黒字体質ができあがってきました」と胸を張ります。

工場内にある段ボール用の印刷機

 黒岩さんは高校卒業直後の2014年から、家業でアルバイトとして働き始めました。そのころ、お笑い芸人を目指してプロダクションの養成所に通っていたからです。芸人の仕事について「自分のアイデアをすぐ試せるのが楽しかったですね」と振り返ります。事業承継が家庭の話題にのぼることはなく、黒岩さんは夢に向かって邁進していました。

 そんな黒岩さんが、家業を継ぐためにお笑い芸人をやめたのは、20歳になった16年でした。好きなことを仕事に選んだものの、社会人経験が皆無だったことがコンプレックスとして膨らんでいたといいます。

 「段ボールの製造現場はアルバイトの2年間を通じてだいぶ分かるようになっていました。会社を成長させるため、その経験を下地に頑張りたいと思いました」

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