目次

  1. 300年以上愛されてきた「白河だるま」
  2. 大学で気づいた「うちって大丈夫か?」
  3. 伝統工芸はデザインで生まれ変われる
  4. 新ブランドを立ち上げ
  5. LINEとのコラボが活路に
  6. 体験を重視した「だるまランド」
  7. コロナ禍の逆境で打った次の一手
  8. 伝統産業はチャンスだらけ

 丸いフォルムに鮮やかな色彩、厳かな表情。「白河だるま」は、300年以上ものあいだ幸運の象徴として人々に親しまれてきた福島県の伝統工芸品です。

 寛政の改革で知られ、白河藩主であった松平定信公が「市民の生活をより元気に」と願って作らせたことから誕生したと言い伝えられ、眉毛は鶴、ひげは亀など、顔の模様が「鶴亀松竹梅」を模して描かれているのがほかのだるまにはない特徴です。家族の健康や会社の繁栄、合格祈願や選挙での当選など、この地域の人々が何かを願う際は必ず白河だるまがそばにありました。

白河だるまの特徴(白河だるま総本舗提供)

 毎年2月11日に行われる「白河だるま市」では約500軒の露店が立ち並び、白河だるまを買い求める15万人もの人々で賑わいます。現在では市内のだるま制作所2軒が伝統を継承していて、「白河だるま市」で販売する約1.5万個のだるまはこの2軒のみで製作をしています。そのうちの1軒が「白河だるま総本舗」。14代目を継承するのが、渡邊高章さんです。

 1992年白河市で生まれた高章さんは、2人兄弟の次男。小学生の時のあだ名は「だるま」で、「だるま屋だから『だるま』って呼ばれるんだ」ぐらいにしか意識していなかったと笑います。

 スポーツが得意で野球少年だった高章さんは、体育教師を目指して都内の大学に進学。そこで時初めて、カルチャーショックを味わいました。

 「自己紹介のときに『実家がだるま屋なんで「だるま」って呼んでください!』とウケを狙ってあいさつをしたら反応が薄くて……。『この中でだるまを買ったことがある人ー?』って聞いたら、手を挙げたのは50人中3人だけだったんです」

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