雇用保険被保険者証とは 発行や再交付の手続きまで解説 古いものは?
雇用保険被保険者証(読み方:こようほけんひほけんしゃしょう)とは、労働者が雇用保険に加入しているものであることを示す書類です。雇用主側の視点から雇用保険被保険者証に書かれている内容や必要となる場面を社労士が解説します。雇用保険被保険者証を正しく交付・管理し、労働者とのトラブルを避けましょう。
雇用保険被保険者証(読み方:こようほけんひほけんしゃしょう)とは、労働者が雇用保険に加入しているものであることを示す書類です。雇用主側の視点から雇用保険被保険者証に書かれている内容や必要となる場面を社労士が解説します。雇用保険被保険者証を正しく交付・管理し、労働者とのトラブルを避けましょう。
目次
雇用保険被保険者証とは、労働者を雇用保険に加入させる手続き(雇用保険資格取得手続き)をした際にハローワークが発行する書類です。手続きが完了すると、その旨を通知する書類として、雇用保険被保険者資格取得等確認通知書(事業主通知用)・雇用保険被保険者資格取得等確認通知書(被保険者通知用)・雇用保険被保険者証の3書類が交付されます。
このうち雇用保険被保険者資格取得等確認通知書(被保険者通知用)・雇用保険被保険者証は労働者本人に渡します。雇用保険被保険者資格取得等確認通知書(事業主通知用)は、会社が保管します。
雇用保険被保険者証には、次の内容が書かれています。
記載項目 | 内容 |
---|---|
被保険者番号 | 被保険者となる労働者の雇用保険の被保険者の番号です。7年以上雇用保険の適用事業所で働いていない場合は新規発行されますが、基本は同じ番号が引き継がれます。 |
被保険者氏名 | 被保険者となる労働者の名前が記載されます。 |
生年月日 | 被保険者となる労働者の生年月日が記載されます。 |
会社が被保険者証を必要とするタイミングは主に、新たに資格を取得する場合に限られます。なお、自社に在職している労働者の雇用保険被保険者番号は、雇用保険被保険者資格取得等確認通知書(事業主通知用)で確認が取れます。また、下記いずれのタイミングでも被保険者証自体の添付は必要ありません。
会社が新たに労働者を雇い入れたときは、雇用保険の資格取得手続きをするために、その労働者の雇用保険被保険者番号を知る必要があります。そのため、前職のある労働者を雇い入れた場合は、入社時に前職の雇用保険被保険者証の提示を受けなければいけません。
すでに雇い入れている労働者を、週所定労働時間が20時間以上の労働契約に変更する場合、雇用保険の資格取得手続きが求められます。この場合も、労働者を雇い入れた場合と同様に雇用保険被保険者証で被保険者番号を確認する必要があります。
会社側とは異なり、労働者が雇用保険被保険者証を必要とする場面は主に3つあります。ここでは、それぞれのタイミングごとになぜ必要なのかを合わせて説明します。
転職するときは、転職先に対して、労働者自身の雇用保険被保険者番号を通知する必要があります。その番号の確認書類として、転職先から雇用保険被保険者証の提示を求められることがあります。
ただし、初めて雇用保険の被保険者になる場合、または雇用保険の被保険者資格を喪失して7年を経過している場合は、転職先に通知する必要がありません。
雇用保険の加入期間が1年以上あるなど、一定の受給要件を満たす人が申請すると、その費用の一部が教育訓練給付金として支給されます。この給付金を請求する際には、雇用保険被保険者番号を記入する必要があり、番号の確認書類として雇用保険被保険者証を利用する場合があります。
一定期間雇用保険に加入していた人が65歳より前に離職すると、雇用保険から求職者給付(いわゆる失業給付)が受けられます。この場合、同時に特別支給の老齢厚生年金を受けることはできません。また、60歳時点で給与の額が従前額の75%以下に低減した場合、高年齢雇用継続給付金の支給を受けられます。こちらは一定の減額はされるものの、特別支給の老齢厚生年金の同時受給が可能です。
こうした状況の確認のため、特別支給の老齢厚生年金の請求をする際には雇用保険被保険者証の写しの添付が必要です。
雇用保険被保険者証の交付は下記のステップでおこないます。
それぞれ確認していきましょう。
資格取得の対象となる労働者から、雇用保険の資格取得に必要な上記の情報を聞き取ります。前職がある労働者が離職後に氏名を変更している場合は、氏名変更の手続きをおこなうため、旧姓も確認します。
雇用保険資格取得届に、①で聞き取った情報と合わせ、下記の情報を記載して事業所を管轄するハローワークの窓口へ持参、または電子申請にて届け出ます。
雇用保険資格取得届の手続き期限は雇入れ日・契約変更日の翌月10日までです。詳しい記入の方法は資格取得届裏面に記載方法がありますので参考にしてください。
なお、原則として添付書類は必要ありません。雇用保険資格取得届はハローワークのWebサイトから入力・作成が可能ですが、最寄りのハローワークで用紙を受け取ることもできます。
雇用保険資格取得手続きが完了すると、雇用保険被保険者資格取得等確認通知書(事業主通知用)・雇用保険被保険者資格取得等確認通知書(被保険者通知用)・雇用保険被保険者証の3書類を受け取れます。ハローワークの窓口で申請した場合は、即日での受け取りが可能です。
雇用保険被保険者証は、雇用保険被保険者資格取得等確認通知書(被保険者通知用)と合わせて、労働者本人に渡す必要があります。被保険者となった労働者本人が確実に資格取得をしたことを確認できるようにするためです(参照:雇用保険の手続きはきちんとなされていますか?|厚生労働省)。
雇用保険被保険者番号は、離職後7年を経過すると失効します。そのため、新たに労働者を雇い入れるときでも、その労働者が前職をはなれて7年経過している場合は、雇用保険被保険者証の提示を求める必要はありません。
雇用保険の対象者は、原則として週20時間以上、かつ31日以上引き続いて雇用される者です。そのため、この条件に当てはまらない就労形態で働いていた人には雇用保険の被保険者になる資格がなく、雇用保険被保険者証は交付されません。
雇用保険被保険者証を紛失または毀損(きそん)した場合は、再交付を受けられます。ここでは、雇用保険被保険者証の再交付を受けたい人に向けて状況別の対応や方法を解説します。
再交付を受けられる人は、原則として被保険者である労働者本人に限られます。最寄りのハローワークの窓口へ、マイナンバーカードまたは運転免許証などの本人確認書類を持参する必要があります。
労働者から依頼を受けて会社が雇用保険被保険者証の再交付の手続きをおこなう場合は、雇用保険被保険者証再交付申請書に加えて下記の書類が必要です。
なお、再交付申請書についてはハローワークのWebサイトから入力・作成が可能です。
会社が自社で雇用する労働者被保険者番号や資格取得時期などを確認したい場合は、雇用保険被保険者資格取得等確認通知書(事業主通知用)を確認しましょう。そのほか、雇用保険適用事業所情報提供請求書で全員分の雇用保険の加入記録がわかる台帳を請求することもできます。
雇用保険適用事業所情報提供請求書の書式は東京労働局のWebサイトからダウンロードが可能です。
なお、雇用保険適用事業所情報提供請求書の提出先は、所轄のハローワークの窓口です。
ここでは、雇用保険被保険者証に関してよくある3つの質問と回答を紹介します。
週20時間以上の雇用契約で雇い入れた労働者は、パート・アルバイトであっても雇用保険の加入が必須です。資格取得手続きの際には、雇用保険被保険者証の提示を求める必要があります。また、資格取得後は労働者本人へ新たな雇用保険被保険者証を渡さなければいけません。
派遣社員は、雇用保険の加入義務が派遣元企業にあります。そのため、受入企業は雇用保険被保険者の資格取得や雇用保険被保険者証の提示を求める必要はありません。
雇用保険被保険者証は、資格取得のたびに発行されます。失効した雇用保険被保険者証は、処分しても保管していても問題ありません。
例えば、A社で正社員として5年間働いた人が離職後1年以内にB社に入社したとします。この場合、雇用保険被保険者番号はA社・B社で同じ番号を使用しますが、雇用保険被保険者証は2枚手元に残ります。番号に紐づいた情報はハローワークのデータベースに残っています。
A社を離職後10年経過してからB社に就職した場合は、雇用保険被保険者番号は新しいものに変更されます。この場合も雇用保険被保険者証は2枚手元に残りますが、番号は変わります。
したがって、どちらの場合でも古い雇用保険被保険者証は処分しても問題ありません。
雇用保険被保険者証は、労働者本人が会社で週20時間以上、かつ31日以上の雇用契約で働いていたことを示す書類です。したがって、健康保険の保険証や、ほかの証明書の代用にはなりません。
雇用保険被保険者証は会社が労働者を適正に雇用保険に加入させた証明となる書類です。資格取得の手続きをした場合は、速やかに被保険者となる労働者本人に交付しましょう。
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