ROASはどう計算する?改善方法や分析ツールもあわせて解説
ROASは、広告効果を図るうえで重要な指標です。Web広告にはさまざまな媒体や手法が混在しているため、区別させながら効果を判断する必要があります。そこで、この記事では、ROASの計算方法や重要性、目標ROASの設定・改善方法などについて、Web広告の運用や内製化支援に多数携わってきた筆者が解説します。
ROASは、広告効果を図るうえで重要な指標です。Web広告にはさまざまな媒体や手法が混在しているため、区別させながら効果を判断する必要があります。そこで、この記事では、ROASの計算方法や重要性、目標ROASの設定・改善方法などについて、Web広告の運用や内製化支援に多数携わってきた筆者が解説します。
目次
ROASとは「Return On Advertising Spend」の略で、売り上げが広告費に対してどの程度上がったのかを表す指標です。「広告費用対効果」や「広告回収率」とも呼ばれます。
広告効果を数値化することで、費用対効果の低い広告を優先的に改善できます。
ROASは下記の計算式で求めます。
ROAS = 売上 ÷ 広告費用 × 100(%) |
広告に掛けた費用が何倍になって返ってくるか、すなわち広告費に対する売り上げ比率を測定します。100%を基準に、ROASが高いほど効果の高い広告運用ができていると判断します。例えば、広告費用が20万円で100万の売り上げがあった場合の式がこちらです。
100万 ÷ 20万 × 100(%)= 500% |
この場合のROASは500%となり、広告費1円あたり5円の効果があると判断できます。
このように、ROASは広告費に対する売り上げの貢献度を示します。ただし注意点として、示す数値が「利益」ではなく、あくまで広告費に対する「売り上げ」の割合である点です。そのため、ROASが著しく高くとも利益が少ない場合があります。
損益分岐点を考慮すると、目標ROASを300〜500%程度、少なくとも200%以上に設定するのが目安です。ただし、業種や業界によって細かく異なります。
自社の損益分岐点を把握してから、目標となるROASの数値を設定していくのがポイントです。
損益分岐点となるROASは、以下の計算式で算出します。
損益分岐点ROAS = 顧客単価 ÷(顧客単価 - 原価)× 100(%) |
例えば、顧客単価が100万円、原価が50万円と仮定しましょう。損益分岐点となるROASは、100万 ÷(100万 - 50万)× 100(%) = 200%と計算できます。この場合、200%を下回ると赤字となります。
先ほどの例で粗利の50%を広告費に充当し、残りの50%を利益にしたい場合は、以下の計算式で目標ROASを算出します。
目標ROAS = 100万 ÷{(100万 - 50万)× 50%}× 100(%)= 400% |
目標ROASは、400%となりました。この目標ROASを超える場合、目標の利益を上回るようになります。しかし、利益を重視するあまり目標のROASを高く設定しすぎると、機会損失が起こる可能性もあります。余裕を持って目標ROASを設定しましょう。
ROASに関連する指標としてROIとCPAがあります。いずれも重要な指標であり、これらを組み合わせることで、ROASだけでは見えない要因や製品・サービス自体の改善に生かせます。
ROIとは「Return On Investment」の略で、投資額に対してどれほどの利益が上がったのかを示す指標です。「投資利益率」とも呼ばれます。
ROIは以下の計算式で算出します。
ROI = 利益 ÷ 投資額 × 100(%)=(売上高 - 売上原価 - 投資額)÷ 投資額 × 100(%) |
先ほどのROASは分子が「売上」であるのに対し、ROIの分子は「利益(売上高 - 売上原価 - 投資額)」です。そのため、売り上げだけでなく、投資が実際にどれだけの利益を生んでいるかを把握できます。
ROIの損益分岐点は100%です。この数値を超えていれば利益が出ていると判断できます。
CPAとは「Cost Per Acquisition」の略で、1件のコンバージョンを獲得するためにかかった広告費を示す指標です。「顧客獲得単価」や「獲得単価」とも呼ばれます。
CPAは以下の計算式で算出します。
CPA = 広告費 ÷ コンバージョン数 |
例えば、ある商品に広告費を10万円かけたとしましょう。商品購入が20件であればCPA = 10万円 ÷ 20件 = 5,000円となります。
CPAが低いほど、広告のコストパフォーマンスが高いことを示しています。ROASは広告の費用対効果を表しますが、CPAはコンバージョン獲得にかかる広告費(コスト)です。
ROASを改善するには、「売り上げを増加させる」もしくは「広告費を抑えつつ効率を上げる」必要があります。
ROASの改善方法は次の9点が考えられます。
それぞれの内容を詳しく解説しましょう。
CVR(コンバージョン率)を高めることで、同じ広告費でも売り上げが上がるため、ROAS向上に直結します。
CVRとは「Conversion rate」の略で、Webサイトやアプリを利用した人のうち、コンバージョンに至った確率を示す数値です。
以下の式で計算できます。
CVR = コンバージョン数 ÷ セッション(訪問)数 × 100(%) |
訪問数に対して、なるべく多くコンバージョンにつなげることが重要です。
CVRを改善させるには、次の施策が効果的です。
CVRが上昇すると売り上げが高まり、ROASの改善につながります。
広告掲載媒体(Google広告やYahoo!広告、Meta広告など)には種類ごとに特徴があり、閲覧ユーザーの特徴やユーザー層が異なります。そのため、製品やサービスと合致したターゲットにアプローチできる媒体を選ぶことで、広告効果の改善につなげやすくなります。
自社の製品やサービスのターゲットをしっかりと把握したうえで、媒体選定をおこないましょう。
掲載広告のクリエイティブの見直しにより、広告のクリック率やコンバージョン率が向上し、ROASの改善につながることがあります。
主な方法としては、広告見出しの変更、説明文の変更、画像の配置変更、素材画像の変更、文言の文字色や位置の変更、訴求内容の変更などです。
広告クリエイティブを見直す際に重視すべきポイントは、以下のとおりです。
以上の3点を入念に確認しましょう。
広告のターゲット設定の見直しも、広告のクリック率やコンバージョン率を向上させ、ROASの改善につながることがあります。
ターゲット設定を見直すときは、パーチェスファネル(ユーザーが製品やサービスを認知してから購入するまでのプロセス)を活用します。パーチェスファネルで分けられるユーザーの種類は、次の3つです。
また、ユーザーによって当然年代や性別、地域や興味関心、趣味嗜好も異なります。そのため、自社の製品やサービスの置かれている状況や、市場のボリュームをチェックしましょう。どういった層のユーザーへアプローチするべきか、戦略的にターゲティング設定をおこなうことが重要です。
掲載広告の検索キーワードの見直しも、広告のクリック率やコンバージョン率およびROASの改善につながることがあります。
設定したキーワードが検索ユーザーのニーズに合わない場合、狙った広告効果を見込めないどころか、関連性が低いとみなされて広告の配信すらできないかもしれません。
適切なユーザーに対して、ニーズどおりの情報を届けられるように検索キーワードの見直しもおこないましょう。
広告の予算配分をうまく見直せば、CPAが改善されるとともにROASも高められます。
CPAは、1件のコンバージョンを獲得するためにかかった広告費です。広告予算を過剰にかけてしまうと、CPAを悪化させる恐れがあります。なぜなら、自社の製品やサービスとマッチしないユーザーにも配信せざるを得なくなるためです。
そのため、広告予算が増えたとしても、1つの媒体だけに集中しないようにしましょう。CPAの上昇が見られたら、別の媒体にも分散させたうえでの出稿をおすすめします。
客単価の増加によって売り上げが増加し、ROASの改善につながることがあります。
客単価とは、1人の顧客がサービスや商品を購入する総額のことです。顧客1人あたりの購入金額が増えれば、同じ購入数でも全体の売り上げは増加します。
客単価を増加させる取り組みの具体例は、以下のとおりです。
それぞれの方法を参考に、ROASを改善していきましょう。
リピート率の改善によって売り上げが増加し、ROASを高めることもあります。
顧客が一生を通じて、その企業に対してもたらす利益をLTV(Life Time Value:顧客生涯価値)と呼びます。LTVの金額を増加させるには、リピート率の改善が必要です。リピート率を改善させる例として、以下の方法があります。
自社で実践できそうな方法から試してみましょう。
ROASを向上させるためには、検証と改善が欠かせません。広告戦略や広告素材の効果を定量的に評価し、データにもとづいた意思決定が重要です。
ROASはあくまで最終結果の指標に近いため、CPAやCVRなどの指標に分けて検証と改善を繰り返しましょう。広告の効果的な要素や問題点を把握できれば、ようやく目標を上回る広告運用が可能になります。
ROASは以下のツールを活用することで分析・改善に役立ちます。
それぞれの内容を詳しく解説しましょう。
アクセス解析ツールは、サイトやアプリを利用したユーザー属性や行動履歴、コンバージョンなどのデータを記録・分析できます。
主な例が「Google Analytics」や「Google Search Console」です。
これらのツールを利用すると、離脱率の高いページやCVRの高いページ、ユーザーの関心が高い情報などがわかります。そのため、広告戦略のPDCAを回すうえで必要不可欠なツールです。
A/Bテストは、AパターンとBパターンの効果を実際に検証し、どちらが優れているかを判断する手法です。
ツールとしては「Google Optimize」が代表的でしたが、2023年9月をもって終了となります。ほかには「Optimizely」「DLPO」「Ptengine」などが挙げられ、Google広告やFacebook広告にもA/Bテストの機能があります。
A/Bテストでは、キャッチコピーやボタンの色、バナー画像などの良し悪しを比較してください。上述のツールを利用することで、効率的かつ容易にテストをおこなえます。そのため、素早い改善検証を繰り返しながらROASの向上に貢献できます。
Web接客ツールは、おすすめの商品をポップアップバナーで表示したり、よくある質問にチャットボットで答えたりするツールです。サイト訪問者に最適なオンライン接客を提供します。
Web接客ツールには次のようなものがあります。
これらのツールを活用すると、ユーザーの行動や問い合わせ内容に合わせた最適なレコメンドが可能となります。その結果、CVRの向上やサイトの離脱率の改善、および購入単価の上昇につながり、ROAS改善に貢献します。
指標を見るうえで、ROASが重視される理由について解説します。
ROASは、広告の効果を定量的な数値で客観的に評価できます。ROASをもとに最適化のための改善を継続して進めましょう。具体的な課題点を発見でき、収益の最大化につながります。
ROASで指標を見ることで、広告の効果が明確になります。広告費や社内外のリソースを効果の高い広告に集中させることで、効率的に広告効果を改善できます。
ROASを把握することで、広告の売り上げへの貢献度が明らかになります。多くの広告施策のなかから、どの広告が自社製品の売り上げに寄与しているのか一目でわかるためです。
ただし、売り上げだけでは広告効果を正確に判断できません。投資利益率を示すROIや獲得単価の指標であるCPAなども合わせて、適切に活用してください。
これらの指標をもとに検証と改善を繰り返せば、リソースを無駄にしない効率のよい広告運用が可能です。
Web広告の費用対効果を分析するべく、ROASを計算できるようにしましょう。
おすすめのニュース、取材余話、イベントの優先案内など「ツギノジダイ」を一層お楽しみいただける情報を定期的に配信しています。メルマガを購読したい方は、会員登録をお願いいたします。
朝日インタラクティブが運営する「ツギノジダイ」は、中小企業の経営者や後継者、後を継ごうか迷っている人たちに寄り添うメディアです。さまざまな事業承継の選択肢や必要な基礎知識を紹介します。
さらに会社を継いだ経営者のインタビューや売り上げアップ、経営改革に役立つ事例など、次の時代を勝ち抜くヒントをお届けします。企業が今ある理由は、顧客に選ばれて続けてきたからです。刻々と変化する経営環境に柔軟に対応し、それぞれの強みを生かせば、さらに成長できます。
ツギノジダイは後継者不足という社会課題の解決に向けて、みなさまと一緒に考えていきます。