目次

  1. デマンドジェネレーションとは
    1. アカウント・ベースド・マーケティング、リード・ベースド・マーケティングとの違い
    2. アカウント・ベースド・マーケティングとの違い
    3. リード・ベースド・マーケティングとの違い
  2. デマンドジェネレーションの3つのプロセス
    1. 【見込客の創出】リードジェネレーション
    2. 【見込客の育成】リードナーチャリング
    3. 【見込客の選別】リードクオリフィケーション
  3. デマンドジェネレーションを成功させるポイント
    1. 顧客理解を深める
    2. 良質な情報やコンテンツを届ける
    3. 適切なMAツール、CRMツールなどを導入する
  4. デマンドジェネレーションを活用する際の注意点
    1. メッセージの一貫性を確保する
    2. 部門間の活動意識を合わせる
  5. デマンドジェネレーションの成功事例
    1. ソフトウェアサービス
    2. 中規模の税理士法人
  6. デマンドジェネレーションを活用しよう

 デマンドジェネレーションとは、受注につながる確率が高い有望な見込客を創出する、一連のマーケティング活動を指します。潜在顧客の需要を喚起することで、商品やサービスへの興味関心を高めます。

 デマンドとは、消費者が特定の商品やサービスを購入したいという意向、あるいはその商品やサービスに対する需要のことです。このデマンドを呼び起こすデマンドジェネレーションは、主に法人間取引(BtoB)で用いられており、現代のBtoBマーケティングでは欠かせない考え方となっています。略して「デマジェン」と呼ばれることもあります。

 デマンドジェネレーションに近い言葉として、アカウント・ベースド・マーケティング(ABM)、とリード・ベースドマーケティングがあります。これらの違いは、「想定するターゲット」と「活用シーン」が挙げられます。

ターゲット 志向 活用シーン
デマンドジェネレーション 主にBtoBにおける新規顧客 潜在需要を喚起(創造)し、見込客の認知や興味関心を高め、受注可能性を上げる一連のプロセス 主に中堅中小企業(Small and Medium Business:SMB)の見込み顧客を開拓するとき
アカウント・ベースド・マーケティング 主に大企業や大口の顧客など特定の企業 個別のマーケティングや営業的アプローチ施策をおこなうマーケティング手法

・主に大企業や大口の取引先の新規開拓をするとき
・大口の取引先に自社の提供する商品・サービスなどを追加販売するアップセリング、クロスセリングなどを図るとき

リード・ベースド・マーケティング 主にBtoBにおける新規顧客

・デマンドジェネレーションと類似する概念
・見込客の情報(リード)を獲得、育成し、商談化確率が高くなった案件を営業へ渡すマーケティング手法

主に中堅中小企業の見込み顧客を開拓するとき

 それぞれの違いを詳しくご説明します。

 デマンドジェネレーションとアカウント・ベースド・マーケティングの違いは、想定するターゲットが異なる点が挙げられます。

 デマンドジェネレーションは、顧客となり得る不特定多数のターゲットに対して需要を喚起し、見込顧客化を図るアプローチです。

 一方、アカウント・ベースド・マーケティングは、具体的な企業名や役職者などを指名型でリスト化し、マーケティング部門と営業が一体となって顧客との関係を深めていくアプローチとなります。

 アカウント・ベースド・マーケティングは、ターゲット1社にかかるマーケティングコストや営業コストが高額となりやすいため、高単価商材の販売で活用されることが多くなっています。

 デマンドジェネレーションとリード・ベースド・マーケティングは、類似する概念です。広義のデマンドジェネレーションは、新規リード(見込客)の創出・育成を含み、自社商品やサービスのブランド認知と関心を高め、それにより高品質のリードを生み出すことを目指す概念となります。

 狭義のデマンドジェネレーションにおいては、デマンドジェネレーションとリード・ベースド・マーケティングは、ほぼ同じ概念として解釈してよいでしょう。

 デマンドジェネレーションは、次の3つのプロセスから構成されます。

  1. リードジェネレーション
  2. リードナーチャリング
  3. リードクオリフィケーション
デマンドジェネレーションの3つのプロセス
デマンドジェネレーションの3つのプロセス・著者作成

 一般的にデマンドジェネレーションにより創出・育成・選別されたリードは、受注見込のある見込客として営業へと引き渡され、営業商談として選別し、関係性を深めていきます。

 デマンドジェネレーションの間のリードをMQL(Marketing Qualified Lead)、営業に引き渡された後のリードをSQL(Sales Qualified Lead)と呼びます。また、デマンドジェネレーションを担う組織を、デマンドセンターと呼ぶことがあります。

 デマンドジェネレーションでは最初に創出された見込客を育成し、リードの選別に進むにつれ、対象となるリード数が減少していきます。

 この現象は、英語の漏斗(じょうご)の意味である「ファネル」や「マーケティングファネル」と呼ばれます。

 リードジェネレーションは、各種マーケティング活動を通じて新たなリード(見込客)を獲得することを指します。

 新たなリードを獲得できない限り、その後のリードナーチャリングやリードクオリフィケーションにつなげることができないため、リードジェネレーションはデマンドジェネレーションにおける大切な第一歩となります。

 具体的な方法としては、デジタル広告、WEBコンテンツ、ウェブサイトの最適化、ウェビナーなどのデジタルを用いた手段、そのほかにセミナー、展示会、名刺交換など対面でのリード創出手段もあります。

手法 手法内容 目的・効果
デジタル広告 検索連動型広告やSNS広告など 主にWEB上の問い合わせフォームに誘導し、リードを獲得する
WEBコンテンツ ホワイトペーパーやブログの記事など見込客に有用な情報を発信する 資料のダウンロード時に見込客の個人情報などを入力してもらいリードを獲得する
WEBサイトの最適化 検索エンジン最適化(SEO)やランディングページ(LP)など 自然検索からのWEBサイト流入を増やしたり、特定目的のページ(ランディングページ)を作成したりすることで、WEBからの問い合わせによるリードを獲得する
ウェビナー・セミナー オンラインや対面で説明会や講習会をおこなう ウェビナー・セミナーの申し込み者を増加させ、リードを獲得する
展示会 展示会に出展する 展示会に来場した人のリストを集め、リードを創出する
名刺交換 名刺の情報を集める 名刺の情報を集め、リードを創出する

 リードナーチャリングは、創出されたリード(見込客)が自社の商品やサービスへの興味関心が高まり、購入する準備が整うように育成していくプロセスです。

 リードナーチャリングでは、見込客に対して有益な情報や興味関心のある情報、関連性のある情報を継続的に提供することで信頼と関係を築き、自社の商品やサービスの認知と購買意欲を高めることが狙いです。

 具体的な方法としては、メールマガジン、WEBコンテンツ、オウンドメディア、ウェビナー・セミナーなどの手法があります。

手法 手法内容 目的・効果
メールマガジン 見込客の興味関心のある情報をメールマガジンで案内する

・商品やサービスの認知と理解を深める
・リードナーチャリングの中心施策

WEBコンテンツ WEB上にホワイトペーパーや独自の調査結果などの有益なコンテンツを掲載する

・商品やサービスの認知と理解を深める
・ダウンロード資料とすることで、リードジェネレーション施策としても有効

オウンドメディア 最新のトレンドや自社商品、サービスの活用方法などをブログなどの記事として掲載する

・商品やサービスの認知と理解を深める
・適切に記事化することでリードナーチャリングのほか、SEOによるWEBトラフィックの増加も期待できる

ウェビナー・セミナー 見込客の興味関心が高いニッチなテーマや自社商品、サービスの細かい機能などを紹介するセミナーを開催する

・商品やサービスの認知と理解を深める
・ニーズが顕在化している層や、購買検討に入っている層向けのコンテンツで実施すると効果が高い

 リードクオリフィケーションとは、ニーズが顕在化したリード(見込客)から購入可能性の高い見込客を選別することです。

 リードナーチャリングによって、自社の商品やサービスに関心がある見込客へ効率的に営業活動を行えるようになります。主にマーケティング部門が担当するほか、非対面営業(インサイドセールス)部門が配置され、実施するケースもあります。

 リードクオリフィケーションの手法としては、「得点ベースのリードスコアリング」や「BANTスコアリング」「行動スコアリング」などがあります。

手法 手法内容 目的・効果
得点ベーススコアリング

・特定のリード特性または行動に基づいてポイントを割り当てる
・メルマガに登録したら5ポイント、WEBサイトに訪問したら5ポイントのような形で集計し、ある一定の閾(しきい)値を超えたタイミングで、見込客を営業に引き渡す

商品やサービスの検討確度が高いと考えられる見込客を優先的にフォローできる
BANTスコアリング

・BANTはBudget(予算)、Authority(決定権)、Need(ニーズ)、Timing(タイミング)の頭文字を取ったもの

・これらの要素を評価することで、見込客が製品やサービスを購入する可能性を判断する

・商品やサービスの検討確度が高いと考えられる見込客を優先的にフォローできる

・BANTスコアリングを採用する際は、リードクオリフィケーションの時点で非対面営業(インサイドセールス)部隊が必要になることが多い

行動スコアリング

・リードがウェブサイトでどのような行動を取ったかや、マーケティング施策にどのように反応したかに基づいてスコアリングする手法

・製品のデモをリクエストしたり、価格情報を調べたりするなどの行動は、リードの購買意欲が高いと示す強い指標になる

商品やサービスの検討確度が高いと考えられる見込客を優先的にフォローできる

 デマンドジェネレーションを成功させるために、以下のポイントに留意して進めましょう。

 デマンドジェネレーション成功のためには、顧客理解を深めることが欠かせません。これには、顧客ニーズや解決したい課題、購買行動などの情報をどのように取得するかなども含まれます。

 これらを理解することが、顧客に響くコンテンツを作成し、それをもっとも効果的なルートで配信するための基盤となります。

 デマンドジェネレーションは、見込客が知らない情報や見込客にとって有用となるコンテンツを継続的に提供することがポイントです。良質な情報やコンテンツを届けることで、見込客と良好な関係を築き、最終的には製品やサービスへの需要を高められます。

 見込客の行動を定性面だけでなく、定量面やデータとして捉え分析するために、MAツール(マーケティング・オートメーションツール)やCRMツール(Customer Relationship Management)などを導入しましょう。

 例えば、MAツールの導入は、見込客行動のデータ化と追跡が可能になります。さらに、Eメールの自動配信や見込客に対して個別の施策を取れるパーソナライズなど、マーケティング活動の効率化にもつながります。

 また、 顧客との関係性に関する情報を一元化し、管理するためのデータベース「CRM ツール」の導入も効果的です。

 デマンドジェネレーションを活用する際は、その効果を適切に発揮させるために以下の2点に注意しましょう。

  1. メッセージの一貫性を確保する
  2. 部門間の活動意識を合わせる

 順にご紹介します。

 WEBサイトや広告、セミナーなど、すべてのデマンドジェネレーションの施策において、一貫したメッセージを伝えてください。これにより見込客は、一貫した経験を享受し、商品やサービスに対する信頼感が高くなります。

 もし、施策ごとに異なるメッセージを提供した場合、見込客の混乱を招くばかりか、信頼を損ねることにもつながります。

 デマンドジェネレーションの推進では、マーケティング部門と営業部門の連携が不可欠となります。

 デマンドジェネレーションの過程では、マーケティング部門が営業部門より先に活動を始めることが一般的です。そのため、施策や訴求メッセージを営業部門へ情報を共有することや、認識を合わせることがおろそかになる可能性があります。

 この状況のままでは、絞り込まれた見込客に対する適切な営業フォローアップを行えなくなるかもしれません。

 また、デマンドジェネレーションを効果的に展開するためには、各施策や目標に対する管理指標を設定し、適切なPDCAサイクルを回す必要があります。そのためにも、マーケティング部門と営業部門の活動や管理指標の認識を合わせ、ギャップを最小限に抑えることを意識しましょう。

 筆者が携わった顧客のデマンドジェネレーションの成功事例を紹介します。

 あるソフトウェアサービスでは、マーケティング部門、非対面営業部門(インサイドセールス)、対面営業部門(フィールドセールス)の3つの部門が、役割に応じた業務を行ったことで、安定的に新規顧客を獲得しています。

 マーケティング部門は、リードジェネレーションとリードナーチャリングを担当し、スコアリングの高い見込客に対して、インサイドセールス部門がリードクオリフィケーションを行いました。

 具体的には、育成されたリード(見込み客)に対して電話やメールなどを行い、BANTスコアリングを中心に情報を収集します。

 BANT情報の2項目以上が具体化している顧客は、フィールドセールス部門に引き渡し、受注成約に向けた営業的な深耕を実施します。それぞれの部門ではKPIが細かく定義されており、常にチューニングがおこなわれています。

 一例では、マーケティング部門ではWEBアクセスやWEB広告からの問い合わせ数(コンバージョンレート)、インサイドセールス部門は見込客から具体案件の転換率、フィールドセールス部門は具体案件の成約率などが代表的な管理指標となっています。

 このような取り組みを継続的におこなったことで、この企業は安定的な成果を出し続けています。

 ある税理士法人では、マーケティングの専任者を配置したことで、WEBからの引き合いや説明依頼などの依頼が大幅に増加し、新規顧客の開拓につながっています。

 セミナーや機関紙などでの情報発信は行っていましたが、紹介が中心の業態ということもあり、マーケティングや営業に対する理解や感度が高くありませんでした。

 セミナー開催後のリードフォローなども特におこなわれていなかったため、まずはWEBサイトをリニューアルし、WEBサイトから問い合わせを受け付けられるようにしました。

 また、セミナー開催後に、メールマガジンで次回のセミナーの案内、最新の税制改正などを告知するように改善しました。

 デマンドジェネレーションを推進するために、マーケティングの専任者を配置したことがこのような良い結果につながっています。

 デマンドジェネレーションは、現代のBtoBマーケティングでは欠かせない考え方となっています。

 もし、これまで見込客を獲得しただけで、成約につなげられなかったという課題をお持ちの人は、デマンドジェネレーションを活用してください。ターゲットとなる見込客に適切なメッセージを届け、安定的に新規顧客を獲得できる仕組みを作りましょう。