目次

  1. QBR(四半期ビジネスレビュー)とは
  2. QBRを実施する目的と効果
    1. クライアントとの関係維持
    2. 進捗度の確認
    3. 戦略の確認と見直し
  3. QBRを実施する流れ
    1. 達成状況や成果を確認
    2. 達成状況に対するヒアリング
    3. 取り巻く環境の変化を確認
    4. 今後の戦略を検討
  4. QBRを実施するときのポイント
    1. 成果や議論を見える化する
    2. 事前に議題を共有する
    3. 進行の時間を決めて取り掛かる
    4. コーチング的アプローチをする
    5. 議事録は速やかに発行する
  5. QBRの事例
    1. 部署ごとにアクションプランを作成
    2. 管理職コーチングの実施
  6. QBRはコミュニケーション手法のひとつ

 QBR(Quarterly Business Reviewの略)とは、3カ月ごとに目標や行動計画に対する現状や成果をクライアントとに確認し、次に行うべき行動や戦略を検討する会議のことです。四半期(3カ月)ごとに行うことから、日本語では「四半期ビジネスレビュー」と呼ばれます。

 QBRでは、クライアントが達成したい年間目標に対して必要なことを議論します。たとえば、以下のような内容が挙げられます。

  • 進捗状況や課題
  • 外部環境の変化
  • 解決策や行動スケジュール

 また、QBRの参加者は、プロジェクトのメンバーなど実務を担当する人になります。

 コンサルタントがクライアントに対して実施することが多い一方、組織内においては上司が部下に対して実施することもあります。部下の目標達成に向けて、達成度や進捗を確認しながら、次の行動を明確にします。

 QBRを実施する目的を具体的に3つご紹介します。

  1. クライアントとの関係維持
  2. 進捗度の確認
  3. 戦略の確認と見直し

 QBRには、クライアントとのつながりを保ち、関係維持を図る目的があります。

 たとえば、年に一度会う人と、3カ月ごとに会う人では、当然ながら3カ月ごとに会う人を信頼するでしょう。

 これは「ザイオンス効果」や「単純接触効果」と言われ、何度も接することでその人に対する好感度が高まり、信頼につながる心理的な現象です。そのため、定期的にクライアントと会うことは関係性の構築や維持につなげられます。

 関係性が構築されることで、内部情報など重要なことを得られやすくなり、より適切なアイデアを提供できるでしょう。

 なお、直接会うだけでなく、メールや電話などの非接触によるコミュニケーション手段も有効です。より関係維持を強化するには、日頃から定期的に連絡を取りあうとよいでしょう。

 QBRには立てた戦略に関する進捗度に問題がないか、関係者一同で確認する目的があります。

 進捗度は全体の目標に対するものではなく、カテゴリーやステップごとに細かく設定しておくことで、管理しやすくなります。QBRにはテーマに対する関係者が多く参加しているため、全体で認識を合わせられます。

 もし、課題や問題などがあり、想定している進捗度になっていなければ、遅くとも3カ月に1回はその課題を明確にできます。課題などが大きくなる前に、解決行動を起こせるということです。

 また、進捗度の確認はクライアントが自身の成長を実感する機会になり、その後の向上心を高められます。人は自分が成長している、進んでいると確認できると、さらに次を目指そうという意欲につながります。

 思ったように成長していなければ、戦略の改善を検討することになります。

 QBRには、ビジネスを取り巻く環境に合った戦略の確認と見直しを図る重要な目的があります。

 ビジネスを取り巻く環境変化のスピードは早く、3カ月前の状況と今の状況では大きく変化していることがあります。3カ月前に立てた戦略がすでに通用しなくなっていることも考えられるのです。

 今の環境に合っていない戦略では、期待する効果は得られません。そこで、3カ月ごとに戦略を見直すことで、いち早く変化に対応して適切な戦略に修正できます。

 QBRは、3カ月ごとにクライアントと面談すればよい、というものではありません。実際の手順について解説します。

  1. 達成状況や成果を確認
  2. 達成状況に対するヒアリング
  3. 取り巻く環境の変化を確認
  4. 今後の戦略を検討

 前回のQBRから今回までの、各項目の達成状況や成果を確認します。

 達成状況や成果を定量的に確認するために、KPIに関するものは、正しい数値データを準備しておきましょう。なお、ここでは客観的な事実のみを確認します。

KPIとは、業績管理評価のための重要な指標のこと。受注率や売上額、売上件数など、企業が目標を達成するうえで必要不可欠な情報。

 達成できた目標に対して、どのような行動によって成果を得られたのか、具体的なアクションや取り組みをクライアントから引き出します。

 また、成功の原因を探り、それが再現可能か、ほかのプロジェクトなどにも対応するのかを確認しましょう。クライアント自身が成功体験を再認識することで、自信を持つきっかけになります。

 達成できなかったことに対しては、なにが問題でうまくいかなかったのか、具体的な原因をヒアリングします。ここで大切なのは、ただ言い訳を聞くのではなく、客観的に事実を確認し、どのような課題や問題が生じたのか、その原因を明らかにすることです。

 定期的にクライアントのビジネスを取り巻く環境を確認します。これには、業界全体や競合他社の動向、市場環境の変化などが挙げられます。

 クライアントのビジネスに影響を及ぼす可能性がある、社会全体の動きもチェックしましょう。これらの情報を収集し分析することで、クライアントが直面している課題や、将来発生するかもしれない問題を対策できます。

 コンサルタントは、クライアントに関わる業界情報や地域の環境変化などについて情報を収集しておきましょう。

 クライアントの成果や課題を確認した後、今後の戦略を検討します。たとえば、以下のように課題に対する解決策を議論します。

課題 戦略
顧客獲得数が目標を下回っている ・マーケティング戦略の見直し
・新たなプロモーションの導入
市場シェアの低下 ・販売店舗数の追加
・販売エリア拡大
・営業担当を増員
プロジェクトの進行が遅れている ・スケジュールの見直し
・リソースの再配分

 このような戦略を立案し、次の3カ月間、クライアント自身がどのような行動を取るべきかを明確にしましょう。このほかにも、今ある強みを伸ばす戦略も有効です。

 QBRを効率よく、効果的に行うためには、次の5つのポイントを押さえておきましょう。

  1. 成果や議論を見える化する
  2. 事前に議題を共有する
  3. 進行の時間を決めて取り掛かる
  4. コーチング的アプローチをする
  5. 議事録は速やかに発行する

 順に解説します。

 QBRは3カ月ごとの成果を図る場になります。そのため、達成した成果を具体的に見える化することが重要です。

 成果を見える化するために、目標はできるだけ定量化し、KPIとして測定できるものを目標に選ぶとよいでしょう。たとえば、新規顧客獲得数や生産数量、従業員の離職率などが挙げられます。

 また、議論した内容をその場で見える化することも重要です。ホワイトボードや付箋紙などで、議論の過程や結論を記録しておきます。とくに、議論において重要なポイントや課題は明確に記述しておきましょう。

 見える化しておくことで、コンサルタントもクライアントも今考えるべきことや取るべき行動が、明確になります。

 次回のQBRのスケジュールや、議題をクライアントへ事前に共有しておきましょう。事前に共有しておくことで、クライアントも必要な資料を準備しやすくなります。

 たとえば、次回のQBRで営業成績を分析する場合、クライアントには直近の売上データや市場動向などの資料の準備を依頼します。

 可能であれば、QBRの最後に次回のスケジュールや議題を伝えておくとよいでしょう。クライアントは3カ月後のQBR向けて、議題の内容を意識しながら行動します。

 QBRを実施する流れに従い、どの項目をどの程度時間を割いて実施するのかをあらかじめ決めておきます。たとえば、達成状況や成果の確認に全体の30%、ヒアリングに20%、環境変化の確認に20%、戦略検討には残りの30%といった具体的な時間割を設定しておくとよいでしょう。

時間割の配分
時間割の配分のイメージ・筆者作成

 そのためには、コンサルタントがファシリテーターとなり、時間を管理しながら議論する必要があります。

 このとき、あらかじめヒアリング用のテンプレートを作成しておくと、スムーズに進められます。

KPTテンプレート
KPTテンプレート・筆者作成

 なお、筆者はKPTテンプレートを使用しています。このほかにもインターネットには、多くのテンプレートが公開されていますので、これらを活用するとよいでしょう。

 もし、議論がそれがちな場合や予定時間を大幅に超えそうな場合は、再度目的やゴールを共有するなど、議論をコントロールすることも重要です。

 クライアントが自分の行動を自分で考えられるように、コーチング的アプローチをしましょう。コーチング的アプローチとは、「提案型」ではなく、「質問型」のアプローチ方法になります。クライアント自身に考えさせ、自発的な行動を促すことで、問題解決につなげるものです。

 たとえば、「達成するには、どのような行動が必要ですか?」など、オープンクエスチョンを活用し、クライアントの考えを引き出します。また、クライアントの回答に対して、「その行動をするにはなにが必要ですか?」といった質問を投げかけることで、具体的な行動計画を作りあげられます。

 クライアントは自分で考えたことでやる気を出し、自主的な行動をしやすくなります。

 なお、コンサルタントは、参考的な情報提供として自分の考えを提示しましょう。

 QBRで議論した内容の議事録は、速やかに発行しましょう。議事録は、会議の結果を正確に伝えるために重要なものです。

 議事録が遅れると、クライアントは具体的なアクションプランを理解しにくくなり、「なにを」「いつまでに」「どのような」行動を起こせばよいのかが明確になりません。

 可能であれば、その場で議事録を作成しながら進行し、QBRが終了したらすぐにクライアントに渡せるとよいでしょう。事前にテンプレートを用意しておき、効率的に議事録を作成できるようにします。

 実際にQBRを実施した事例について紹介します。

 年度の開始時に各部署で明確な目的(スローガンの作成)と達成すべき目標を設定し、一年間のアクションプランを作成してもらいました。

 このアクションプランの達成度を3カ月ごとのQBRで確認しました。その際、進捗状況に応じてアクションプランを修正し、次の3カ月に向けた行動を明確にします。

 このアプローチをとある企業の6部署で実施した結果、多くの部署が設定した目標を達成できました。そのなかには、設定した目標を大きく上回る結果を出したところもあったのです。

 定期的な進捗状況の確認と、必要に応じたアクションプランの修正により、多くの部署が目標を達成できたという事例になります。

 管理職に対して、QBRを用いて現状のヒアリングを行いました。これは、目標の確認と課題の把握、その解決に向けた具体的なアクションプランを検討するためのものです。

 ヒアリングは1人当たり約30分を目安に実施しました。ヒアリングでは、テンプレートに沿って自分の課題を明確にしてもらい、これからのアクションプランを管理職自身の口から明言する機会を設けました。

 このときに明らかになった組織全体の課題は、経営者層に報告します。経営者の目が届かない細かな現状についても把握でき、組織全体の改善に役立てられます。

 QBRは、クライアントの目標を達成させるためのツールのひとつです。また、定期的にクライアントの状況やニーズを確認し、それに対する提案や解決策を提供することで、よりよい良好な関係を築けます。さらに、お互いに新しい気づきを生み出す場になるのがQBRです。

 QBRを単なるビジネスツールとして捉えるのではなく、良好な関係性を築くためのコミュニケーション手法のひとつとして捉え、有効に活用していきましょう。