マイルストーンとは?意味・活用メリット・具体的な書き方を解説
社会環境の大きな変化に適応するため、新たなプロジェクトに挑戦していく必要性が増しています。そのうえで大切なものは、プロジェクト管理の知識です。この記事では、プロジェクトを推進する人に向けて、成功に導くカギとなる「マイルストーン」についてプロジェクト管理の専門家がわかりやすく説明します。
社会環境の大きな変化に適応するため、新たなプロジェクトに挑戦していく必要性が増しています。そのうえで大切なものは、プロジェクト管理の知識です。この記事では、プロジェクトを推進する人に向けて、成功に導くカギとなる「マイルストーン」についてプロジェクト管理の専門家がわかりやすく説明します。
目次
マイルストーンとは「プロジェクトにおいて重要な意味をもつ時点やイベント」のことで、プロジェクト管理用語の一つです。プロジェクトの過程には、乗り越えなければならない重要な局面が存在します。そんなターニングポイントのことをマイルストーンと呼びます。
もともとのマイルストーン(Milestone)は、Mile+Stoneの言葉のとおり、道路や鉄道にある特定地点からの距離を示す道しるべを意味します。高速道路にあるキロポストや、旧街道沿いにある一里塚などが主な例です。道しるべがあることで、目的地に向かう際に「正しい道を進んでいるか」「どれくらい進んだか」「次にどこに向かえばいいか」を確認しながら、安心して前に進むことができます。
プロジェクトにも道しるべとなるマイルストーンがあると、計画を進めるときにとても便利です。多くのプロジェクトは見かけ以上に複雑であり、途中に障壁が立ちはだかります。迷わずゴールを目指すためには、マイルストーンの活用が重要です。
プロジェクト管理では、マイルストーン以外にもさまざまなビジネス用語が登場します。それぞれの用語の意味を理解せずに何となく使用していると、プロジェクトに混乱を招く恐れがあります。なぜなら、プロジェクトは複数の人々が関与するため、言葉の定義が異なっていると思わぬ勘違いが生じるからです。マイルストーンと混同しやすい用語について、五つ紹介します。
スケジュールとは、プロジェクトが目指す目標までの工程を示した全体計画のことです。全体を示すことで、プロジェクト内で実施する内容やゴールへの到達手段を明らかにします。マイルストーンは、スケジュール上の特に重要なイベントで、ゴールへの進み具合をチェックするポイントとして利用されます。
タスクとは、プロジェクトの目的を実現するために必要となる具体的な作業項目のことです。各作業を実行することでプロジェクトが進行し、目標に近付けます。
マイルストーンとタスクは混同しがちなので注意が必要です。マイルストーンとは、プロジェクト内でも特に重要なイベントやチェックポイントを指します。以下のように考えるとわかりやすいでしょう。
タスク=作業 | 「〜をする」 |
マイルストーン=チェックポイント | 「〜という状態である」 |
例えば、以下の項目はマイルストーンの一例です。
タスクとマイルストーンの関係については、以下の表も参考にしてください。
ガントチャートとは、プロジェクトスケジュールを図示したものです(図表2参照)。縦軸に各タスク内容を記入し、横軸に日付を入れて、各タスクの予定と実績を可視化します。マイルストーンも、タスク同様に縦軸の一項目として記述する手法です。ただし、管理表であるガントチャートとは異なり、マイルストーンはあくまで設定された中間目標を指します。
ガントチャートは、計画時に立案するだけではなく、プロジェクト進行とともに実績を入力して進捗(しんちょく)の確認にも活用します。
ロードマップとは、プロジェクト開始時におおよそのプロジェクト全体像を俯瞰して計画した道筋のことです。「木を見て森を見ず」というように、最初からいきなりプロジェクト計画を細かく書き出すと、重要なマイルストーンやタスクが抜け漏れする危険があります。そのため、まずは全体的な流れをロードマップとして書き出したあとに、ガントチャートなどで詳細スケジュールを計画していきます。
マイルストーンを設定することで、プロジェクトを効率的に管理できます。なぜなら、プロジェクト内で注力すべきポイントが明確になり、メリハリのある管理ができるからです。ここでは、マイルストーンの主なメリットを三つ紹介します。
マイルストーンを設定するメリットは「まずは、ここを目指そう」と手の届く目標ができることです。
例えば、遠くの山の登頂を目指しているとき、視界不良で目指す山頂が見えなかったとします。そんなとき、どのように進めばいいでしょうか?
この場合は、闇雲に前へ進むのではなく、まずは山頂に至る道程を地図で確認して、次の道しるべを目指すのが確実です。これはプロジェクト進行時も同様です。スケジュールで工程を確認して、次のマイルストーンを目指します。
難易度の高いプロジェクトは、視界不良に陥りやすくタスクが停滞する可能性があります。人は理解不十分な状態だと「できない」「無理だ」など消極的な考えに囚われやすいためです。
そんなときは、実現しやすい中間目標を目先のマイルストーンとして設定しましょう。ハードルを下げた目標を手前に加えることで、「できるかも」「やってみよう」など前向きな意識に変えられます。関係者のやる気を引き出し、パフォーマンスを向上できれば、プロジェクトの成功確率も高められます。
「ここまで来たな」と進捗を把握できる点も、メリットの一つとして挙げられます。
大きなプロジェクトになると、プロジェクトを構成するタスク数が増加します。そんなタスクの進捗状況を細かく管理するのは大変です。とはいえ、タスク状況を把握しないと遅延に気づかず手遅れになるなどして、プロジェクトの成功が危うくなるかもしれません。
効率的に管理するコツは、管理対象をプロジェクト全体に影響を及ぼす箇所だけに絞ることです。その際に役立つのがマイルストーンです。マイルストーンは、プロジェクトにおける重要な意味を持つ時点やイベントを示しています。つまり、マイルストーンが計画どおり達成できているかに着目することで、プロジェクトの状況を把握できます。
例えば、納期必達のプロジェクトの場合を想定してみましょう。ある時点までに達成しているべきマイルストーン(「◯月◯日までに試作開発が完了していること」など)が未達なら、納期遵守が危うい状況だと判断できます。
ほかにも「計画に対して進捗が未達だ、どうする?」と困ったとき、適切に計画を変更できる点もマイルストーンの強みです。
プロジェクトは水物です。どんなに緻密な計画を立てても、その通りに進むとは限りません。正しい方向へ向かうためには、状況に応じて計画を見直す必要があります。その状況を判断するタイミングとしてマイルストーンを活用します。
マイルストーンが未達であることが明白なら、そのまま前進するのは危険です。「このまま進むのか、変えるのか、止めるのか」と何らかの判断が求められます。
あらかじめマイルストーン未達の場合の対策(バックアップ策)を検討しておき、いざとなったら進路変更の方針を定めておくことを、プロジェクトのリスク管理といいます。
プロジェクト管理において便利なマイルストーンですが、いつどのように設定または活用すればいいのでしょうか。その具体的な方法について説明します。
主な活用法として、スケジュールにマイルストーンを設定する方法があります。スケジュールを計画する際には、最初にプロジェクトのロードマップ(図表3参照)を作成して概要を定めましょう。概要が作成できたら、節目となる箇所にマイルストーンを設定します(例:プロトタイプの完成、試作の完成など)。
次に、プロジェクト目標を達成するために必要なタスクを洗い出していきます。そのうえで、重要なタスクやイベントといったターニングポイントをピックアップしてマイルストーンとします。
なお、スケジュール計画では、期限内にプロジェクトが完了できるようマイルストーンの日付や各タスクの期間を定めてください。
また、その際、日程にバッファ(余裕)を設けましょう。バッファで多少の遅れを吸収できるようにすれば、全体の工程に影響を及ぼさずに済みます。バッファを設けるときはプロジェクト内での優先順位が高いマイルストーンの前だけとし、必要以上に持たないのがポイントです。
プロジェクトの成否を左右するポイントは、納期・費用・品質です。プロジェクト内でこれら3項目に影響を及ぼす重要タスクがあれば、そのタスク完了または開始を以下のようにマイルストーンとして設定します。
タスク | マイルストーン設定日 | 例 |
---|---|---|
日程をずらせないタスク | 開始日をマイルストーンに | あらかじめ日程が決定している「量産製造開始日」 |
遅れると以降に影響を及ぼすタスク | タスクの完了日をマイルストーンに | 試作開発が完了していること(完了しないと次工程の試作評価を実施できない) |
重要なイベント | 期待する判断結果が得られる時点をマイルストーンに | 新製品リリースの承認を得られること |
大きなプロジェクトでは、タスク数が多くガントチャートも膨大になります。その際は、マイルストーンに注目してスケジュール全体を俯瞰することで、プロジェクト内の重要ポイントに絞って確認できます。優先順位に従ったプロジェクト管理が容易になります。
プロジェクトに関与するメンバーが多岐にわたる場合、各担当者は自分の担当外の内容を理解していない可能性があります。全タスクを全員に周知するのは大変なので、マイルストーンを用いて説明するとよいでしょう。関係者が、プロジェクトの重要なポイントを理解することで、それぞれの役割や自分の受け持つタスクの重要性を認識するのに役立ちます。
プロジェクト全体の進捗をマイルストーンで管理すれば、プロジェクトの成否に関わる重要なポイントを押さえられ、プロジェクト全体の進捗状況を把握できます。
状況によっては、次のマイルストーンまでの日数が長い場合もあるでしょう。そのときは定期的に確認する定例会をマイルストーンとして追加して、中間進捗を確認する方法もあります。
マイルストーンを設定する際に、いくつか注意したいポイントがあります。マイルストーンは、プロジェクトを管理する手段にすぎません。無理に使おうとすれば、かえって足かせになります。関係者にわかりやすく、管理も容易なマイルストーンを設定することが重要です。
マイルストーンを多数設定しすぎると管理が大変になります。プロジェクトの納期・費用・品質に影響を及ぼす重要なポイントを見定め、必要以上に設定しすぎないことが大切です。
プロジェクト初期の段階で完璧なスケジュール計画を立案することは困難です。最初は、大まかなプロジェクトのスケジュールとマイルストーンを設定します。
その後プロジェクトを実行していくに従い、さまざまなことが明らかになっていきます。その過程で、必要に応じて計画を見直してください。
具体的には、タスクやマイルストーンを適宜追加調整するなどして、より現実的な計画に更新する方法があります。この方法を段階的詳細化といいます。例えば、最初に設定したルートへ進んでみたら、実は困難かつ危険であることがわかったとします。そのときに、より安全で確実なルートを見つけて、新たなマイルストーンを再設定するイメージです。
マイルストーンは、プロジェクトの道しるべです。プロジェクトの向かうべき方向を示し、正しい道へと進めるうえで役立ちます。
難しく考える必要はありません。まずは挑戦してみましょう。マイルストーンを設けて、マイルストーンを目指して進み、マイルストーンの達成を確認していくことで、プロジェクトを成功というゴールに導いていけます。
この記事が、皆さまのビジネスの成功にお役に立てば幸いです。
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