建設業法・入契法、担い手確保へ一部の改正規定を2024年9月施行
建設業の担い手確保を目的とした建設業法及び公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律(入契法)の改正について、「労務費の基準」や工事契約の調査を建設業法に位置づけるとする一部の改正規定が2024年9月1日に施行されることになりました。業務にどのような影響があるのか、改正法の全体像とポイントについて紹介します。
建設業の担い手確保を目的とした建設業法及び公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律(入契法)の改正について、「労務費の基準」や工事契約の調査を建設業法に位置づけるとする一部の改正規定が2024年9月1日に施行されることになりました。業務にどのような影響があるのか、改正法の全体像とポイントについて紹介します。
目次
国土交通省の公式サイトによると、建設工事の適正な施工と品質の確保、担い手の確保のため、2014年と2019年に、建設業法・入契法と品確法を一体として改正してきました(それぞれ「担い手3法」「新・担い手3法」)。
それでもなお、就業者は減っており、現場の担い手の確保に向けた対策を強化する必要があります。
これらの課題に対応し、必要な担い手の確保を目的とするための「第三次・担い手3法」として、関連する法律が改正されました。
担い手3法とは、政府提出の建設業法と公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律(入契法)、議員立法の公共工事の品質確保の促進に関する法律(品確法)の3つのことを指します。
この記事は、建設業法・入契法の改正内容を中心に紹介します。
国交省によると、全産業の平均賃金が年494万円に対し、建設業の賃金は年417万円と低く、就労時間も全産業平均が年1954時間に対し、建設業は2022時間と長いこともあり、担い手の確保が難しくなっています。
さらに昨今の資材高騰分の価格転嫁が進んでおらず、下請事業者の労務費を圧迫しています。こうしたなか、時間外労働規制等にも対応しつつ、処遇改善、働き方改革、生産性向上に総合的に取り組むために建設業法・入契法が改正されました。
改正建設業法・入契法のポイントは以下の3つです。
それぞれについて詳しく紹介します。
まず、建設業者に対して労働者の処遇確保を努力義務化するとともに、そのうえで、国は建設業者の取り組みについて調査・公表し、中央建設審議会が「労務費の基準」を作成するのに役立つよう報告するものと定められました。
そのうえで、労務費等の確保と行き渡りのため、中央建設業審議会が「労務費の基準」を作成・勧告することとし、受注者と注文者の双方に対して著しく低い労務費等による見積り書の作成や変更依頼を禁止します。違反発注者には、国土交通大臣等が勧告します。
あわせて、受注者における不当に低い請負代金による契約締結を禁止します。
つぎに、資材高騰に伴う労務費へのしわ寄せ防止です。資材高騰など、請負代金や工期に影響するリスクがある場合、請負契約の締結までに受注者から注文者に通知するよう義務化します。
また、資材価格変動時の請負代金等の「変更方法」を契約書の記載事項として明確化します。さらに注文者に対し、リスク発生時は、誠実に協議に応ずることを努力義務化します。ただし、公共工事発注者の場合は、誠実に協議に応ずる義務を定めています。
最後は、働き方改革と生産性向上です。
通常よりも著しく短い工期で請け負う「工期ダンピング」などによる⾧時間労働を抑制するため、受注者における著しく短い工期による契約締結を禁止します。
また、ICT活用等を要件に、遠隔通信の活用などによる現場技術者に係る専任規制の合理化や、ICTの活用で施工体制を確認できれば提出を省略可とするなどを盛り込みます。
さらに、元下間でデータ共有などについてICT活用による現場管理の「指針」を国が作成し、多くの下請業者を使う「特定建設業者」や公共工事受注者に対し、効率的な現場管理を努力義務化します。
こうした改正建設業法・入契法は公布日(2024年6月14日)から1年6ヵ月を超えない範囲で、政令で定める日から施行すると定められています。ただし、一部の改正規定は前倒しで施行されます。
建設業従事者の処遇確保等に関する取組状況を国が調査・公表する権限と、中央建設業審議会が「労務費の基準」を勧告する権限の創設は2024年9月1日から施行されます。
資材高騰に伴う労務費のしわ寄せ防止及び現場技術者の配置の合理化等のICTを活用した生産性の向上に関する規定は、6ヵ月以内に施行予定です。
同じように、通常必要な労務費の額を著しく下回る見積や契約の禁止、工期ダンピング対策の強化は、1年6ヵ月以内に施行予定です。
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