経産省、Amazonなどに透明化法にもとづく勧告 出品者の手数料めぐり
経済産業省は2024年8月2日、特定デジタルプラットフォームの透明性及び公正性の向上に関する法律(プラットフォーム取引透明化法)にもとづき、アマゾンジャパン合同会社と、Apple Inc.およびiTunesに対し、提供条件等の開示に関する勧告を出しました。アマゾンジャパンは今回問題点が指摘された手数料について、新たな自動モニタリングシステムを導入する予定だといいますが、経産省はこれについても詳しい報告を求めています。
経済産業省は2024年8月2日、特定デジタルプラットフォームの透明性及び公正性の向上に関する法律(プラットフォーム取引透明化法)にもとづき、アマゾンジャパン合同会社と、Apple Inc.およびiTunesに対し、提供条件等の開示に関する勧告を出しました。アマゾンジャパンは今回問題点が指摘された手数料について、新たな自動モニタリングシステムを導入する予定だといいますが、経産省はこれについても詳しい報告を求めています。
経産省の公式サイトによると、プラットフォーム取引透明化法とは、デジタルプラットフォームにおける取引の透明性と公正性の向上を図るための法律で、デジタルプラットフォーム提供者に対し、取引条件等の情報の開示、運営における公正性確保、運営状況の報告を義務付け、評価・評価結果の公表等の措置を講じます。
経産省の公式サイトによると、今回、アマゾンジャパンが勧告を受けたのは、プラットフォーム取引透明化法が定める、提供条件の開示の方法等や提供条件の変更の事前開示などを遵守していないと経産省が判断したためです。
違反事実について経産省の勧告をもとに整理しました。
まず出品者がAmazonで商品を出品する際、出品者用ポータルサイト「セラーセントラル」で、UPC、ISBN、EANなどの製品コードを使って商品情報を登録します。
出品者がAmazonで販売活動する場合、月間登録料、出品手数料、基本成約料、販売手数料などを、アマゾンジャパンに支払う必要があります。
このうち、販売手数料とは、販売された商品ごとに課せられる手数料であり、商品の販売価格に手数料率を乗じて計算します。出品者は商品登録時に商品カテゴリーを選択しますが、このとき、出品者が選ぶ商品カテゴリーとは別に、アマゾンジャパンが決定する手数料のカテゴリーがあることに注意が必要です。
しかし、出品者の選択した商品カテゴリーと適用される手数料カテゴリーが異なり得ることや、それを前提にアマゾンジャパンが適用される手数料カテゴリーの決定主体であることはわかりやすく開示されていませんでした。
アマゾンジャパンが出品者に対し、出品者の選択した商品カテゴリーとは異なる販売手数料カテゴリーを適用し、商品カテゴリーに対応する販売手数料より高額な販売手数料を徴収することがあったといいます。
2024年5月14日、アマゾンジャパンは手数料に関する説明ページを新設・更新しましたが、アマゾンジャパンが適用される手数料カテゴリーの決定主体であることは示されていなかったり、手数料カテゴリーに属する判断基準は示されていなかったりと、経産省はまだ不十分な点が残っていると指摘しています。
出品者は、商品情報を登録すれば、実際に当該商品が販売される前でも、セラーセントラルの「在庫管理」の画面で、当該商品に適用される手数料カテゴリーを確認することができました。
また、出品中の商品については、セラーセントラルで「出品レポート」のうち「手数料見積もりレポート」を出力することでも現在の販売価格に基づいた販売手数料の見積額を確認することができました。
ただし、出品者が手数料カテゴリーを確認するには、以下の手順が必要でした。
さらに、「手数料見積もりレポート」では、販売手数料の見積額を確認することができても、適用される手数料カテゴリーを確認することはできず、アマゾンジャパンに問い合わせるか、「在庫管理」の画面での確認作業が必要でした。
一度、ある商品につき特定の手数料カテゴリーで販売手数料が請求された場合、その出品者には、特段の事情がなければ同種商品につき同じ手数料カテゴリーで販売手数料が計算されるものと考える正当な期待が発生しており、手数料カテゴリーが変更される旨の通知などがなされていなければ、出品者自らが積極的に探索して手数料カテゴリーを確認することを期待することは困難である、と経産省は指摘しています。
透明化法の求める開示がなされたと評価されるためには、単に抽象的にアクセスが可能であったというだけでは足りず、出品者に対して、透明化法所定の日までに、メールなど出品者が通常認識できる手段で、手数料カテゴリーの変更にかかる事実を通知するか、もしくは、「在庫管理」画面での手数料の変更の確認を促す必要、だとしています。
そのため経産省は「アマゾンジャパンが、一度出品者に対して販売手数料を請求した商品にかかる手数料カテゴリーの変更前に、その内容を開示していたと評価することはできない」と判断しました。
アマゾンジャパンからは、手数料カテゴリーの新たな自動モニタリングシス
テムを導入する予定だといいます。
登録されている商品情報を解析し、アマゾンジャパンの正しいと考える手数料カテゴリーに分類されていないと判断した場合、90日前の事前通知のうえアマゾンジャパンの正しいと考える手数料カテゴリーに分類し直し、以後の販売分について正しい手数料カテゴリーに基づいた販売手数料を適用する予定です。
これに対し、経産省は「透明化法を遵守しているといえるためには、出品者に対する通知文に、変更の内容及び理由が、出品者の理解及び予測可能性の観点から十分に記載されていることが必要となる。このため、この点も含めて履行の確保及び経済産業省への報告を求める」と記しています。
アマゾンジャパンへの勧告は以下の通りです。
Apple Inc.およびiTunesが勧告を受けたのは、プラットフォーム取引透明化法が定める、提供条件の開示の方法などを遵守していないと経産省が判断したためです。
提供条件の開示の方法について、開示する提供条件が日本語で作成されていないものであるときは、日本語の翻訳文を同時に付すことを求める一方、やむを得ず翻訳文を同時に付すことができない場合は、開示の時に期限を明示して、当該期限までに翻訳文を付せば足りるとされています。
ただし、2021年3月~2023年12月、一部の提供条件の開示の時に、翻訳文を同時に付さなかったことに加えて、期限の明示をしていませんでした。
その後、Appleは、2024年1月以降は、商品等提供利用者向けの通知に、翻訳文は1ヵ月を期限に自社webサイト上で提供する旨を含める運用を開始しましたが、期限を経過しても翻訳文を付さなかった事例が生じたことを踏まえ、経産省は勧告が必要と判断しました。
勧告内容は以下の通りです。
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