目次

  1. 新人を育てるのが上手い人の特徴
    1. 新人に仕事の目的を理解させている
    2. 新人の目標を把握している
    3. 新人に考えさせる機会を与えている
  2. 新人を育てるのが下手な人の特徴
    1. コミュニケーションが不足している
    2. 部下の自己判断を制限している
    3. できるレベルの仕事ばかりを与える
  3. 新人を育てるために必要な能力
    1. 観察力
    2. 共感力
    3. 傾聴力
    4. 指導力
    5. 洞察力
  4. 新人教育担当者を選ぶ注意点
    1. 教育経験の有無だけで判断しない
    2. 業務の負担を考慮する
    3. 新人との相性も大切
  5. 新人教育担当者を育成するポイント
    1. 管理職の育成力を高める
    2. 挑戦が称賛される風土を醸成する
    3. 育成ノウハウ共有の場を設ける
  6. 適切な担当者選びが新人の成長を左右する

 人はそれぞれ、生まれ育ってきた環境や性格、得意なこと、不得意なことが異なっています。持ち味が違うのです。育成担当者は、新人のありのままを受け入れられる素直さと、思いやりが大切です。また、育成担当者も、育成を通じて自らも学んでいるという謙虚さが必要です。

 新人を育てるのが上手い人は、新人に担当してもらう業務について説明する際には目で見られる紙資料や電子資料を用いて、わかりやすく噛み砕いて説明しています。新人が理解できない専門的な言葉は言い換えるなど、理解してもらえるように努め、イメージを深められるように過去の実例も紹介しながら説明できるのも特徴です。

 そして、その業務が会社や組織にとって、どのような位置づけにあるのか、どんな目的があるのか、経営理念やビジョンとも関連付けながらイメージさせることが大切です。

 新人に担当してもらう業務を決めたら、あわせて新人の目標を設定することが、新人自身の成長のためにも、新人に会社に貢献する人材になってもらうためにも大切です。

 この時点では、新人の力量は、採用試験、学生時代の成績だけが判断材料で、はっきりとは見極められません。過去に採用した新人の目標を参考にしたり、新人の専門性を加味したりなど、今いる社員の目標を参考に決めていくしかできないでしょう。ただ、このように検討して設定した目標であれば、ベストとは言えなくとも、ベターなものになっているはずです。

 新人を育てるのが上手い人の多くは、こうした新人の目標を把握しています。担当業務が会社・組織や顧客、社会にどのように役立っているのか、新人に理解してもらうには目標に関連付けての教育が不可欠です。育成担当者が新人の目標を知っていなければ、新人教育が小手先のスキル・技術の向上だけとなってしまいがちです。

 せっかちな育成担当者は、新人が四苦八苦している姿や、見当違いの処理をしているのを見て、自分がやった方が早いと安易に考え、自ら新人の仕事をやってしまうケースもあるかもしれません。

 しかし、このようなケースは新人が自分なりに考えているにもかかわらず、その機会を奪っていることになります。育成担当者は新人から、何がわからないのか、どこで行き詰っているのかなどを聞いて、適切な助言を与えるようにしましょう。少しだけ、育成担当者が見本を見せることもよいです。

 また、仕事ができる育成担当者は、新人も同じようにできるだろうとつい考えてしまい、新人に「この書類を仕上げておいて」とだけ言って、どのようにやればいいのか、そのために何を参考にすればいいのか、どのような目標にためにこの仕事をするのか説明しないことがしばしばあります。何もわからない、解決の糸口がない状態で、仕事をしなさいと言われても、新人は途方に暮れてしまいます。

 いずれの場合であっても、新人のモチベーションは下がってしまいます。

 一方で、新人を育てるのが上手い人は、考えるためのヒントとなることは、適切に教えています。教えすぎてしまうと、受け身の姿勢となって、自律的に考える力を養うことができません。新人が自ら考えられるよう、自ら考える力が付けられるよう、新人の特性に合わせた育成をできるのが新人を育てるのが上手い人の特徴です。

 また、育成が上手な人は、失敗しても叱ることなく、そのプロセスを認めるなど、新人の努力、頑張ったところを見つけ出して承認します。「失敗してもいいんだ」と思えるようになれば、失敗を恐れずにチャレンジできるようになります。チャレンジ精神は新人に成長の機会を与えることにつながります。

 新人が期待どおりに成長しないばかりか、新人のモチベーションが上がらず、やる気をなくしエンゲージメントが上がらないです。その結果会社・組織を辞めるとなれば組織にとって損失になってしまいます。新人がそのようなことにならないよう、育成担当者のスキルアップも望まれます。

 新人の人材育成には、育成担当者と新人の信頼関係が不可欠です。信頼関係を構築していくには、「おはよう」や「ありがとう」といった日常の些細な声掛けなどを含む、コミュニケーションが欠かせません。そのため、コミュニケーションが不足している人が育成を担当すると新人育成は上手くいかないでしょう。細やかなコミュニケーションがあることで、新人も上司に質問がしやすいと感じるものです。

 コミュニケーションを活性化するには、新人の仕事ぶり、そのプロセスや成果など、その事実を新人に伝え承認していきます。事実は否定的に考えるのではなく、肯定的にとらえてモチベーションが上がってくるように話すのがいいでしょう。言葉一つで、新人の自己効力感は大きく違ってきます。

 親切心で、細かく指示してしまうと、新人は統制されていると感じ、やる気を失う可能性があります。そして、育成担当者への信頼感を失ってしまいます。

 新人にある程度仕事を任せることで、自分で考え解決しようとする創意工夫が生まれます。仕事に対して楽しさが出てきて、育成担当者への信頼感が高まっていき、成長が加速していきます。その結果、新人が会社・組織の戦力となることでしょう。

 育成担当者は、新人の能力レベルを見極めて、仕事を割り振るようにします。始めは簡単な仕事でやってもらい、その仕事ぶりをみて少しずつ難易度を上げていきます。しかし、できるようになっても同じ仕事ばかり与えていると、成長が感じられず、モチベーション低下につながります。

 新人に仕事や課題を与える際には、新人の実力よりも少し上のレベルのものにしましょう。その仕事や課題ができたときに、仕事の面白さや達成感を感じ、モチベーションが向上します。また、エンゲージメントの向上にもつながるでしょう。

 新人を育成するために必要な能力として、以下の5つの能力が必須とされています。これらの能力は、人材育成を図るうえで重要な柱となります。観察力で相手の状況を把握し、共感力で信頼関係を築き、傾聴力で本音を引き出し、洞察力で本質を見抜き、指導力で成長を促します。

 観察力は、人材育成に必要な能力のうち、ベースとなる能力です。育成には、相手、部下のことを知ることが第一歩です。『孫子』でも、「彼を知り己を知れば百戦殆からず」と、ここでいう彼とは敵ではあるものの、相手を知ることが重要であると述べています。

 新人の仕事ぶりを観察して、得意なことや苦手なこと、強みや持ち味、価値観、スキル・知識レベルを把握します。観察力は、部下を理解し、適切なサポートをしていくための基盤です。

 共感力は、新人が考えていることや気持ちの変化を、感じ取ることができる能力です。高い観察力があって、新人の表に見えている特性を把握することができても、新人の考えや表には出ていない心の内に共感できなければ、適切な育成はできません。

 例えば新人が失敗したとき、その失敗を責めるのではなく、相手の気持ちを受け入れながら、失敗の原因をともに考える姿勢が大切です。育成担当者に共感力があれば、新人は安心感を持ち、信頼関係を築きやすくなります。

 傾聴力は、新人の話をしっかりと受け止め、その内容を深く理解できる能力です。聞くのでなく、聴いて、新人が話した言葉の裏にある真の意図、相手が気づいていない感情まで、読み取ることが求められます。

 例えば、新人が「難しい」と言ったとき、その言葉の裏にはどんな課題や不安が隠されているのかを引き出します。傾聴する力があれば、新人が自分の本音を安心して話せるようになるでしょう。

 指導力は、新人を人として適切に導き、成長を促すことができる能力です。

 例えば、新人に目標を設定させ、その達成に向けて、相手にあったアドバイスを提供できることが挙げられます。育成担当者に指導力があると、新人のスキルアップや意欲の向上を効果的にサポートできます。単に指示を出すだけでなく、新人自身が主体的に成長を目指せるように促すことが大切です。

 洞察力は、物事の本質を見抜く能力です。

 例えば、新人が自分でも気づいていない悩みや課題を感じ取り、先回りして、相手に知らせフォローを行うことができる力が、洞察力です。問題が顕在化する前に未然に防いだり、相手にとってより効果的な育成をしたりすることが可能になります。

 仕事ができる社員=育成能力がある社員ではないことに注意が必要です。新人の育成は重要な仕事だという責任感がある社員、そして、思いやりのある社員が望まれます。

 社内研修講師の経験があり教え方が上手いと評判の社員、同僚に仕事を教えるのが上手いと評判の社員、こういった社員であれば、新人にも上手く教えられるだろうと思いがちです。講師やOJTの経験は、新人教育には欠かせない能力です。

 しかし、新人が育成担当者に求めていることは、教え方の上手さではなく、いつでも相談や質問がしやすいこと、優しく穏やかに接してくれること、問題が起きた時に一緒に解決してくれることなどです。いわば新人に寄り添っていける能力が、新人教育担当者には必要です。

 社員はみな、自らの業務を抱えて多忙を極めています。この状態で、新人教育を上乗せしてしまうと、新人教育担当者になった社員は、育成のための時間を確保することが難しくなってきます。

 また、新人は十分な教育・指導を受けることができず、不満が溜まっていき、この会社で仕事をしても成長できないと考え、辞めていってしまいます。このような悪循環に陥らないようにするため、新人教育担当者になる社員の業務の一部を減らして、他の社員に担当してもらうことを検討します。

 業務量の軽減が難しい場合は、ビジネスマナーなど普遍的なスキルは、社外講師のセミナーとかeラーニングを活用すると、新人教育担当者の負担を減らしつつ、新人のスキルアップも図れます。

 新人と教育担当予定者との相性が、第三者として見ていて、どう考えても合いそうにないと思えたら、その社員は教育担当にしない方がいい場合もあります。最初の印象は尊重した方が無難です。

 新人は、自分自身より年齢が上で、経験豊富な教育担当者を前にすると緊張します。教育担当者は、いつも笑顔で挨拶をして、日常のささいな声掛けもし、時には趣味などの雑談もして、新人が困ったときなどにいつでも相談しやすい雰囲気づくりに心がけます。

 社内には新人教育を任せられる人材がいない、と感じてしまうこともあります。適当な人材がいない場合は、新人教育担当者を育成していなければなりません。新人を育成する教育担当者も育成していくためには、管理職に育成能力が必要となってきます。

 現場において新人教育の責任者となるのは、管理職です。管理職が教育担当者の育成指導ができなければ、新人の育成は上手くいかないといっても過言ではありません。そのためには、管理職の育成能力を高めることが、最重要課題といえるでしょう。

 管理職の育成能力を高めるには、管理職の評価項目に「人材育成」の項目を入れ、業績を上げるだけでなく人を育てられることで、優秀な管理職として認めらえるという組織風土を作る必要があります。定期的に管理職に対して、育成研修を実施して、部下との関わり方や育成テクニックを学ぶ機会を提供していきます。

 挑戦すると、失敗のリスクが伴います。その際、会社・組織として、その失敗をどう評価するかで新人のモチベーションが異なってきます。

 教育担当者は、挑戦した結果失敗したとしても、挑戦したこと自体を称賛しましょう。必要以上に叱って、新人が委縮することのないように注意します。

 そして、どうして失敗したのか、今後どう改善していけばいいのか、しっかり分析して今後の糧にしていきます。このように挑戦が称賛、評価される組織風土であれば、新人も挑戦がしやすい環境になります。

 また、新人育成のための、担当者を育成するときは、会社・組織として挑戦が称賛される風土を醸成し、新人育成がしやすいように環境を作ることも大事です。

 新人の育成をしていくと、そのノウハウが蓄積されていきます。ノウハウを教育担当者の個人的な能力にとどめておかず、会社・組織全体に共有できるような環境を作りましょう。

 新人への育成の記録を、日報などに記録しておき、年後にその記録を洗い出して整理すると、育成のマニュアルができあがってきます。マニュアルを会社で共有し、ブラッシュアップを繰り返すことで育成ノウハウがよりよいものとなります。

 新人がその会社・組織でもっと多く接するのが、育成担当者です。育成担当者の技量、やる気が、新人の能力向上、成長に大きく影響されます。

 新人を育てるのが上手い人の特徴を理解し、新人育成を実施してみましょう。この記事を参考にしていただき、新人教育にお役立てくだされば幸いです。