目次

  1. 価格交渉促進月間フォローアップ調査とは
  2. 価格交渉の進展と残る課題
  3. 労務費転嫁の状況と「労務費指針」の重要性
  4. 価格転嫁の全体像と個別コスト要素の課題
  5. 発注側企業の説明責任とサプライチェーンの課題
  6. 支払い条件の適正化に向けた進捗と課題

 今回の価格交渉促進月間フォローアップ調査は、2024年10月から2025年3月末までの期間における中小企業と発注企業間の価格交渉・転嫁状況を把握するためのものです。

 調査の一つは、約30万社の中小企業を対象としたアンケート調査で、6万5725社から回答が得られ、回収率は21.9%でした。
もう一つは、全国の中小企業から価格交渉の内容や転嫁状況について幅広くヒアリングを行う「下請Gメン」による調査です。

 調査結果によると、直近6ヵ月間における価格交渉の状況は全体として改善の兆しを見せています。「価格交渉が行われた」企業の割合は89.2%と、前回調査から約3ポイント増えました。特に、発注企業側から交渉の申し入れがあったケース(31.5%)も約3ポイント増えました。

価格交渉の状況
価格交渉の状況

 しかし、その一方で「コストが上昇したが、発注企業から申し入れがなく、発注減少や取引停止を恐れ、交渉を申し出なかった」などの理由で「価格交渉が行われなかった」企業が依然として10.8%存在していました。

 中小企業庁は「協議に応じない一方的な価格決定の禁止」を盛り込んだ「中小受託取引適正化法」のさらなる周知を進めるとしています。

 価格交渉をした企業のうち73.2%が労務費についても交渉を実施しており、前回調査から約3ポイント上昇しました。

労務費に係る価格交渉の状況
労務費に係る価格交渉の状況

 しかし、「労務費が上昇し、価格交渉を希望したが出来なかった」企業が6.4%と、いまだ一定数存在し、回答企業の中からは「労務費については自助努力で解決すべき部分であるとして、交渉の協議を拒否された」といった事例も寄せられています。

 コスト全体の価格転嫁率は52.4%となり、前回調査から約3ポイント改善しました。企業のうち83.1%が「一部でも転嫁できた」と回答し、転嫁できなかった割合は減少しています。

 このデータは、価格転嫁の状況が改善傾向にあることを示唆しますが、依然として転嫁できない企業とできる企業の間で二極化が見られ、転嫁が困難な企業への対策が引き続き重要です。

価格転嫁の状況【コスト要素別】
価格転嫁の状況【コスト要素別】

 コスト要素別の価格転嫁率を見ると、原材料費は54.5%と比較的高い水準にあるものの、エネルギー費(47.8%)と労務費(48.6%)となっています。

価格転嫁に関する発注側企業による説明
価格転嫁に関する発注側企業による説明

 価格交渉は行われたものの全額転嫁には至らなかった企業のうち、38.2%が「発注側企業からの説明はあったものの、納得できるものではなかった」または「発注側企業からの説明はなかった」と回答しました。

 前回よりは1.4ポイント改善しましたが、価格交渉の場が設けられたとしても、その内容が不十分である場合があることを示しており、発注側企業には価格に関する十分な説明が必要です。

サプライチェーンの各段階における価格転嫁の状況
サプライチェーンの各段階における価格転嫁の状況

 サプライチェーンの各段階における価格転嫁の状況を見ると、1次請け企業では53.6%の転嫁率であるのに対し、4次請け以上の企業では40.2%と、取引段階が深くなるにつれて価格転嫁率が低くなる傾向が明らかになりました。

 取引代金の支払いについては、81.8%が全額現金で支払われていると回答しました。手形や電子記録債権、ファクタリングの利用がある場合でも、交付から入金までの期間(サイト)が60日以内である割合は63.6%に上ります。

手形等の支払サイト期間・割引料負担の状況
手形等の支払サイト期間・割引料負担の状況

 しかし、27.5%の企業は、サイト期間が60日を超える上に割引料を受注側企業が負担しているという実態が確認されました。