目次

  1. 業務改善助成金とは その目的と対象事業者
  2. 賃金引き上げの厳格なタイミングと申請期限
  3. 助成の対象となる費用と上限額
  4. 2025年度からの業務改善助成金の注意事項

 厚生労働省の公式サイトによると、業務改善助成金は、事業場内で最も低い賃金(事業場内最低賃金)を30円以上引き上げ、同時に生産性向上に資する設備投資などを行った場合に、その費用の一部が助成されるものです。

 最終的な助成金は、設備投資などにかかった費用に助成率をかけた金額と助成上限額を比較し、いずれか安い方が支給されます。最大で600万円(事業主単位での上限額)が支給される可能性があり、賃上げと経営改善を同時に進める事業者にとって魅力があります。

 この助成金の対象となるのは、以下の要件を満たす中小企業・小規模事業者です。

  • 中小企業・小規模事業者であること(大企業と密接な関係を有する企業、いわゆる「みなし大企業」は対象外)。
  • 事業場内最低賃金と地域別最低賃金の差額が50円以内であること。
  • 解雇や賃金引き下げなどの不交付事由がないこと。

 申請は、工場や事務所など、労働者がいる「事業場ごと」に行います。ただし、同一事業場での申請は年度内1回までとなっています。

 第2期の業務改善助成金を申請する上で、注意点のひとつが、「賃金引き上げのタイミング」です。地域別最低賃金が改定される場合、その発効日の前日までに事業場内最低賃金を引き上げておく必要があります。

 たとえば、10月1日に新しい地域別最低賃金(1000円→1050円)が発効される場合、発効日の前日(9月30日)までに事業場内最低賃金の引き上げ(1005円→1050円)を完了し、就業規則等にも事業場内最低賃金が1050円であると、定める必要があります。

 また、複数回に分けての賃金引き上げは認められない点も重要です。引き上げ後の事業場内最低賃金額は、就業規則等に明記することも求められます。2025年度(令和7年度)の第1期の申請期間はすでに終了しており、第2期のスケジュールは以下の通りです。

  • 申請期間: 2025年6月14日~申請事業場に適用される地域別最低賃金改定日の前日。
  • 賃金引き上げ期間: 20925年7月1日~申請事業場に適用される地域別最低賃金改定日の前日。

 第3期以降の募集については、厚労省の公式サイトで告知される予定です。事業完了期限は原則として2026年1月31日ですが、やむを得ない事由がある場合は、理由書の提出により2026年3月31日とできる場合があります。

 助成の対象となるのは、生産性向上に資する設備投資等にかかった費用です。具体的には、以下のような経費が例として挙げられます。

  • POSレジシステム導入による在庫管理の短縮。
  • リフト付き特殊車両の導入による送迎時間の短縮。
  • 国家資格者による業務フロー見直し経営コンサルティング。
  • 顧客管理情報のシステム化。

 助成額は、「設備投資費用×助成率」と「助成上限額」を比較して、いずれか低い方の金額となります。助成率は、申請事業場の事業場内最低賃金が1000円未満の場合が4/5、1000円以上の場合が3/4です。ただし、2025年度の地域別最低賃金の目安はすべての都道府県で1000円を超える見通しとなっています。

 助成上限額は、引き上げる労働者数と事業場内最低賃金の引き上げ額(30円、45円、60円、90円の各コース)によって異なります。

事業場内
最低賃金の
引き上げ額
引き上げる労働者数 助成上限額
事業場規模 30人未満の事業者 左以外の事業者
30円以上 1人 60万円 30万円
2~3人 90万円 50万円
4~6人 100万円 70万円
7人以上 120万円 100万円
10人以上 130万円 120万円
45円以上 1人 80万円 45万円
2~3人 110万円 70万円
4~6人 140万円 100万円
7人以上 160万円 150万円
10人以上 180万円 180万円
60円以上 1人 110万円 60万円
2~3人 160万円 90万円
4~6人 190万円 150万円
7人以上 230万円 230万円
10人以上 300万円 300万円
90円以上

1人 170万円 90万円
2~3人 240万円 150万円
4~6人 290万円 270万円
7人以上 450万円 450万円
10人以上 600万円 600万円

 「引き上げる労働者数」の数え方にも特徴があります。事業場内最低賃金である労働者の賃金を引き上げた結果、賃金額が追い抜かれる労働者も、「引き上げる労働者」に算入されます。ただし、いずれも申請コースと同額以上賃金を引き上げることが条件です。

 2024年度から2025年度にかけて、いくつかの主な変更点があります。

  • 事業主単位での申請上限が600万円になりました。
  • 「みなし大企業」は対象外となりました。
  •  基準となる事業場内最低賃金労働者の雇用期間が、「3ヵ月以上」から「6ヵ月以上」に変更されました。
  •  事業完了期限が、2026年1月31日になりました。

 これらの変更点も踏まえ、最新の交付要綱・要領を必ず確認することが重要です。過去に業務改善助成金を活用した事業者も、再度対象となります。

 不明点は、業務改善助成金コールセンター(0120-366-440、受付時間は平日9:00~17:00)へ。