増える女性起業家、SNSだけに頼らないスキルの売り出し方のコツ
全国で起業する女性が増えており、木更津市産業創業支援センター「らづビズ」に寄せられる相談も増えています。スキルや知識を活かす仕事は初期投資があまりかからず人気なのですが、見せ方に悩んでいる起業家は少なくありません。そこで、らづビスでは、スキルを商品として売り出したいときに明確にする3つのポイントについて、2人の女性起業家を例に紹介します。
全国で起業する女性が増えており、木更津市産業創業支援センター「らづビズ」に寄せられる相談も増えています。スキルや知識を活かす仕事は初期投資があまりかからず人気なのですが、見せ方に悩んでいる起業家は少なくありません。そこで、らづビスでは、スキルを商品として売り出したいときに明確にする3つのポイントについて、2人の女性起業家を例に紹介します。
目次
フリーランス管理栄養士の竹内寿美恵さんは、国立病院の管理栄養士を経験後、ヨガのインストラクターも務めました。さらに、ハラルやオーガニック、アレルギーに対する知識も豊富です。
2020年6月からフリーランスとして独立し、2021年1月にらづビズを訪れました。人の体と健康に対するスキルや興味が広範囲にわたっている反面、自分の「売り」や「見え方」をどう設定していけばいいのか、立ち位置に苦慮している印象でした。
相談中の竹内さんの言葉で印象的だったのは「フリーランスとして母として」という言葉でした。フリーランスとして仕事をしていくことを決め、小さなお子さんがいる母としてのあり方を深く考え、それを発信することで同じような立場の女性の役に立ちたい、そんな思いを持っていました。
そこで、スキルを「商品」としてどうデザインしていくかを一緒に見つけていくことにしました。このときに確認したのが次の3つのポイントです。
この3つに着目する理由は、「好きなこと」で話ができ、「得意なこと」でニーズを見つけ、「大事なこと」により自身の価値を最大限に発揮できるからです。
竹内さんの話を聞くなかでは、次のように整理できました。
↓ここから続き
好きなこと……「食」や「健康」の話や行動で人の笑顔が見れること
得意なこと……誰とでもフレンドリーなコミュニケーション力と集中力
大事なこと……ストレスのかからない生き方をすること
まず世の中の流れから、竹内さんの持っているスキルの中からどれを軸にしていくかを考えました。大きくはコロナ禍により変化した健康への意識の高まりから、「食」の「質」に対するニーズが今まで以上に高まることを予測しました。
組織に属している管理栄養士の報酬は必ずしも高くないのが現実ですが、「フリーランス」という立場を際立たせることにより、単なる管理栄養士という見え方ではなく、様々なスキルをミックスさせた上でのクリエイティブな「食」のプロとしてのポジションづくりを意識しました。
そのなかで「食」に関する新商品や新サービスを考えている企業に向けたアドバイスができる人物、という商品デザインが出来上がりました。
せっかく起業したわけですから、自分らしい生き方ができるように「デザイン」をするのが支援する側にとって最も重視する点です。竹内さんはこの「ポジション」を意識した発信により、ご自身の価値が周囲に伝わりやすくなり、単価の高い様々な企業案件が舞い込むようになりました。
もう一人の女性起業家、やなか真希さんは、専業主婦からストレスクリアのコーチとして、心と体の健康についてアドバイスする仕事を2021年から始めました。
元々、体の不調や、家族の悩み、ダイエットなど自身の経験から、心と体のバランスが崩れる原因と解決に興味があり、ヨガや心理カウンセラーを経て、2021年初めから本格的にストレスクリアを学ぶようになりました。
興味があった分野なので知識の習得には不安はありませんでしたが、今までの人生で営業や集客は未経験であり、ビジネス化に大きな不安がありました。
そんななかで、自分の過去と同じように悩める人の助けになりたいと、らづビズに相談に訪れました。自分のやっていることを多くの人に知ってもらうためにSNSで広げたいというのが最初の相談でしたが、何を売りにするのかが明確ではなかったのを覚えています。
話を聞くなかで、まずやなかさんを「商品」としてどうデザインしていくかを一緒に見つけていくことにしました。やなかさんの話を聞いていると、3つのポイントが次のように具体化されました。
好きなこと……マンツーマンのコミュニケーション
得意なこと……傾聴力と相手の深層を引き出すこと
大事なこと……過去に向き合ってきた家族間や夫婦間の悩みを、解決してきた自身の歴史とそこで発見した価値観
ここからデザインを始めました。心理カウンセラーやストレスクリアコーチという肩書はやなかさんのパッケージの一面でしかありません。それだけで「商品」を魅力的に構成するには足りません。
数々のスキルや知識はあくまで背景であり、前面に出すべきは「悩みを解決してきた経験」と「実体験からの現実味のある言葉」だと考えました。
長年にわたり悩みのタネとなっていた持病により何に対しても前向きになれなかった数年間、そのことで内向的になり距離ができていた家族との関係、片付け一つもできないようになっていた自分があったそうです。一方でそれをわかりながらも這い上がるように一歩一歩克服してきたもう一人の自分がいました。その「彼女」こそが今回の主人公であると見つけました。
ありのままの自分の経験を過去の自分自身へ語りかけるつもりで、そしてすぐに反応はなくても少しずつ浸透させるように発信していった結果、やなかさんに共感し話を聞いてほしいという女性経営者たちだけでなく、コロナ禍によりストレスを抱えていた男性経営層からも相談が来るようになり、こうした人たちの悩みの解決や心の問題の解消をすることでビジネス化への道筋ができ上がりました。
この2人のように、自分の将来や働き方を自分自身で切り開いていこうと考える女性が増えていることを相談窓口の現場から感じています。
スキルや知識を活かす仕事は、初期投資があまりかからず人気なのですが、その反面、「売り」や「見せ方」、つまり商品化のデザインがされていないまま走り出すことが多く、SNSだけに頼り、いつまで経っても誰にも刺さらず、時間だけが過ぎてしまっている方が多いのも事実です。
SNSはあくまでツールであり、中途半端な「商品」は誰の支持も共感も生まれません。たとえば、トレーナーやコンサルタントなど専門性の高いスペシャリストの場合は自分自身が「商品」となります。
モノの商品とは違い、カタチのないものをビジネス化するにはそれなりにハードルが高くなります。そこで重要なことは、「売り」にすべきパーソナリティの洗い出しとその人固有の特性をどれだけ磨けるかにかかっています。
だからこそ、2人の起業家の事例でも「好きなこと」「得意なこと」「大事なこと」の3つをはっきりさせ、ビジネスへと組み立てることにこだわりました。
個人を「商品」とする場合、3つのポイントが同一線上になるようビジネスを設計することで、自分らしい生き方の獲得、成功の法則へとつながります。好きなこと・得意なことはわかりやすいですが、大事なこと=その人のこだわりや譲れないことが欠けてしまうと、パーソナルなブランディングは完成しないのです。
一面を見るだけでなく、人は様々なスキルの多面体なのでピボットを効かせることでその個性を発揮し、時代に合った面を前に出すことで生き抜く力になります。
個人でも企業でもそれぞれ固有の特徴に光を当て、売れる切り口を発信するのですが、時代の変化により求められる切り口は変わります。
竹内さんの場合は、管理栄養士がピボットの軸足であり、向いている方向はコロナ禍で子供や家族との生活の変化に戸惑う母親としての同世代への共感性、これは企業がターゲットとする顧客像の一部であり、ある意味当事者の一人で説得力があるわけです。
やなかさんの場合は、人並み以上の困難を克服してきた経験が軸足で、向いている方向はコロナ禍で先行き不透明から心理的に悩みを抱える経営者、ここは自分に近い人ではなくまったく関係がない利害関係のない自分の心を相談できる信用できる人を常に探しているというニーズがあり、やなかさんの飾らない人柄と語り口が口コミで伝わることを期待していました。
これからの時代、規模を追求するビジネスだけでなく、個人が活躍できるビジネスをどれだけ数多く生みだせるかも重要だと考えています。
(続きは会員登録で読めます)
ツギノジダイに会員登録をすると、記事全文をお読みいただけます。
おすすめ記事をまとめたメールマガジンも受信できます。
おすすめのニュース、取材余話、イベントの優先案内など「ツギノジダイ」を一層お楽しみいただける情報を定期的に配信しています。メルマガを購読したい方は、会員登録をお願いいたします。
朝日インタラクティブが運営する「ツギノジダイ」は、中小企業の経営者や後継者、後を継ごうか迷っている人たちに寄り添うメディアです。さまざまな事業承継の選択肢や必要な基礎知識を紹介します。
さらに会社を継いだ経営者のインタビューや売り上げアップ、経営改革に役立つ事例など、次の時代を勝ち抜くヒントをお届けします。企業が今ある理由は、顧客に選ばれて続けてきたからです。刻々と変化する経営環境に柔軟に対応し、それぞれの強みを生かせば、さらに成長できます。
ツギノジダイは後継者不足という社会課題の解決に向けて、みなさまと一緒に考えていきます。