目次

  1. 自社ブランドに注力する理由 認知度を高める基盤
  2. 自社ブランドが切り拓くOEMという新たな販路
    1. 自社ブランドからOEMの受注が増えた谷川木工芸
    2. 下請け体質脱却へ 栗原式は自社ブランド経由の相談も
  3. 自社ブランドとOEM 二正面戦略の注意点
  4. 成功事例に学ぶ、ブランドとOEMを両立させる勘所
  5. 自社ブランドとOEMで描く中小企業の未来図

 中小企業に自社ブランドが必要な理由は、自社の技術や企画力、商品力を示すことができるからです。BtoB商品はそもそも開示できない商品も少なくありません。また、独自のコンセプトやストーリーを伴ったブランドは、顧客の心に残り、価格競争から脱却しやすくなります。

 たとえば、大阪府泉佐野市の神藤タオルは、安価な海外製品との競争を避け、品質にこだわった独自性の高いタオル開発でブランドを確立しました。

 「泉州タオル」の伝統製法を継承しつつ、「インナーパイルタオル」や「2.5重ガーゼタオル」といった革新的な製品を生み出し、百貨店やセレクトショップという新たな販路を開拓しています。これは、自社の技術力や品質へのこだわりをブランドという形で顧客に伝え、選ばれる理由を創出した好例です。

神藤タオル6代目の神藤貴志さんは28歳で経営を引き継ぎ、伝統技法を生かしつつ創意工夫にあふれたタオルを送り出す環境を整えました
神藤タオル6代目の神藤貴志さんは28歳で経営を引き継ぎ、伝統技法を生かしつつ創意工夫にあふれたタオルを送り出す環境を整えました

 ブランドは、製品やサービスの品質に対する顧客の信頼感を得るための役割を担います。一貫した品質管理や優れた顧客サポートはブランドの信頼性を高めます。

 さらに、優秀な人材の獲得にもつながることも少なくありません。水門メーカー「乗富鉄工所」(福岡県)はキャンプ用品などデザイン性の高い商品開発を手がけ、デザインを軸にした経営を進めるうちに、若者の採用に成功し、アート系イベントや建築など新たな仕事の相談が舞い込むようになり「ステージが変わった」と実感しています。

チャーハンを調理するメッシュパン
チャーハンを調理するメッシュパン

 中小企業が持つ専門技術や職人技といった無形の価値は、ブランドを通じて初めて市場に理解されるともいいます。このブランド構築の過程は、自社の強みは何か、誰に届けたいのかを深く見つめ直す機会ともなり、経営戦略をはっきりさせる役割もあります。

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