目次

  1. 税制改正大綱とは
  2. 中小企業に関わる税制改正
    1. 賃上げ税制の拡充
    2. 交際費特例は2年延長
    3. 法人版事業承継税制は申請期限のみ1年延長
    4. 不動産取得税の特例措置は2年延長

 財務省の公式サイトなどによると、税制とは、国の税金の仕組みのことです。経済社会の変化に対応できるよう、予算づくりと一緒に毎年見直されています。主な流れは以下の通りです。

8月:省庁が財務省主税局に要望提出
9月:経済団体から要望
10月:与党税制調査会が要望とりまとめ
11月:与党税制調査会が小委員会、総会で議論
12月:与党税制調査会が税制改正大綱を発表
1月:閣議決定
2月:内閣が国会へ法案を提出し、国会で審議
3月:改正法が成立

 このうち、税制改正大綱とは、各省庁からあがる税制改正の要望などを受け、与党の税制調査会が中心となって翌年度以降の税制改正の方針をまとめるものです。いわば税制に関する法律改正のたたき台です。

 2022年度(令和4年度)の税制改正大綱は、2021年12月10日に決定し、自民党の公式サイトで公表されました。このなかから中小企業に関わる部分について紹介します。

 今回の税制改正で注目された内容の一つが、賃上げ税制の拡充です。これまで中小企業向けの賃上げ税制は、1.5%以上の賃上げで給与増加分の15%を減税しています。

 2022年度税制改正大綱によると、この賃上げ税制を改正し、人員を増やした分も考慮されることになりました。つまり、全従業員の給与支給額を前年度より1.5%以上増やせば、法人税の15%、2.5%以上なら30%を法人税から控除します。

 これに加えて、従業員向けの教育訓練費を前年度より10%以上増やせば、控除率が最大で40%になります。

支出 前年度費の増加率 法人税の控除率
全給与支給額 1.5%以上 15%
2.5%以上 +15%
教育訓練費 10%以上 +10%

 大企業や中堅企業の場合は要件が異なりますが、同じように3段階で控除率を上げる形になっています。

 中小企業の交際費や接待費のうち、800万円までを経費とし、課税対象外の「損金」に算入できる交際費特例は2021年度末が期限でした。しかし、2022年度の税制改正では、この特例を見直さず、2年延長することを決めました。

 後継者が取得した一定の資産について、贈与税や相続税の納税を猶予する「法人版事業承継税制」の申請期限を1年延長し、2024年3月末までとなりました。

 「事業承継税制」は2018年1月から10年間の特例措置として、2023年3月末までに計画を都道府県に提出した場合に対象となっていましたが、この申請期限が延長されました。ただし、申請期限は1年延長されましたが、特例措置は2027年12月末までのままです。申請を検討している場合は、早めの準備が必要になります。

 中小企業者などが、中小企業等経営強化法の認定を受けた経営力向上計画にもとづいて合併、会社分割または事業譲渡により、ほかの中小企業から不動産などを取得するとき、不動産取得税の軽減を受けられる特例措置がありました。

 これまでの特例措置は、2022年3月31日までとされてきましたが、これが2年延長されます。

 一方で、地域住民による主体的な健康の維持・増進を積極的に支援する「健康サポート薬局」について、中小の事業者が不動産を取得する場合、不動産取得税の課税標準の特例措置があったのですが、この措置は廃止となります。