目次

  1. 改正電子帳簿保存法とは
  2. 電子保存の義務化とは
  3. 青色申告の取り消しは否定
  4. 税制改正大綱
  5. 税務署への事前の届出は?

 電子帳簿保存法は国税関係の帳簿書類の保存について、コストや事務の負担を軽減するため、電子データでの保管を認めようと1998年7月に施行されました。この法律が、2022年(令和4年)1月に改正されます。

 改正の注意点の一つが、電子保存の義務化でした。電子データで受け取った請求書などの国税関係の書類について、これまで紙での保存が認められていますが、改正後は、データで受け取った電子データを紙に出力して保存することは認められず、電子データで保存する必要がありました。

 ただし、改正法の周知が進まないまま、施行日が迫っていました。

 こうしたなか、国税庁が公式サイトのQ&A(一問一答)形式で、「災害等による事情がなく、その電磁的記録が保存要件に従って保存されていない場合は、青色申告の承認の取消対象となり得ます」と回答していました。

 そのため、電子データの一部を保存せずに書面で保存していた場合、青色申告の承認が取り消されるのではないかとの懸念が出ていました。

 これに対し、国税庁は電子化に対応できていなくてもただちにペナルティを加えるものではないという見解を公表しました。

 さらに2021年12月10日に決定した2022年度(令和4年度)税制改正大綱に、改正電子帳簿保存法の猶予が盛り込まれました。

 改正電子帳簿保存法は2022年1月に施行されますが、メールなどの電子取引によって受け取った国税関係書類の電子保存の義務化は、2022年1月1日から2023年12月31日まで2年の猶予期間が設けられることになりました。当間は、紙による印刷保存でも対応できます。

 具体的には、次のように書かれています。

納税地等の所轄税務署長が当該電子取引の取引情報にかかる電磁的記録を保存要件に従って保存することができなかったことについてやむを得ない事情があると認め、かつ、当該保存義務者が質問検査権に基づく当該電磁的記録の出力書面(整然とした形式及び明瞭な状態で出力されたものに限る。)の提示または提出の求めに応じることができるようにしている場合には、その保存要件にかかわらず、その電磁的記録の保存をすることができることとする経過措置を講ずる。

令和4年度税制改正大綱(自民党公式サイト)

 施行直前になって発表された猶予制度ですが、それでも電子化に対応しなくてよいということではありませんので、今後に向けて電子化への対応を進めておくとよいでしょう。

 日本経済新聞が12月6日に電子帳簿保存法の猶予について報じた記事で「企業の申し出に応じて税務署長が判断する」と書かれた一文について、SNSなどでは「税務署への事前の届出が必要になるのではないか」との受け止めが出ていました。

 しかし、国税庁は「事前に税務署への申請をすることは必要ありません」と回答しています。