「いちばんやさしいDXの教本」著者が勧める“DXそっくりさん”の始め方
デジタルトランスフォーメーション(DX)によるビジネスモデルの変革が叫ばれても、自社でどうやってDXを進めればよいか迷っている人は少なくありません。中小企業向けのDXを支援するディップの執行役員で、「いちばんやさしいDXの教本」著者、進藤圭さんは「いきなりDXを目指さず、DXそっくりさんから始めましょう」と話します。DXのハードルを下げる「DXそっくりさん」とは何か、ツギノジダイが開催したセミナーで解説しました。
デジタルトランスフォーメーション(DX)によるビジネスモデルの変革が叫ばれても、自社でどうやってDXを進めればよいか迷っている人は少なくありません。中小企業向けのDXを支援するディップの執行役員で、「いちばんやさしいDXの教本」著者、進藤圭さんは「いきなりDXを目指さず、DXそっくりさんから始めましょう」と話します。DXのハードルを下げる「DXそっくりさん」とは何か、ツギノジダイが開催したセミナーで解説しました。
DXとは、デジタルを業務効率化のためだけのツールではありません。総務省の令和3年版情報通信白書によると、デジタル化の進む社会・経済に合わせて、自身の組織やビジネスモデルを変革し、新たな価値を創出することで、競争上の優位性を確立させることだといいます。
グロービス経営大学院の吉田素文教授も、DXについて次のように指摘しています。
情報が価値の中心になる世界に合わせて、戦略や組織の動かし方を再設計することがDXの本質です。しかし残念ながら、特にバックオフィスの文脈では、単にITモデナイゼーション、すなわち情報インフラの更新や新技術の導入のみを指していることが少なくありません。それでは、得られる果実は少ないでしょう。
第四次産業革命時代のDXの本質とは グロービスの吉田教授が解説
DXの成功例として挙げられるのは、小売・流通改革に成功したAmazonや、DVDレンタルから動画配信サービスへと転換したNetflixなどグローバル企業ばかりです。中小企業にとってみれば、どこか遠い世界の話のようにも感じてしまいます。
進藤さんは「わかります。海外の話ばっかりで不安になりますね」と話しながらも「それでも自信をもってお答えします、あなたにもできます」と言い切りました。
では、どうすればDXが実現できるのでしょうか。進藤さんがポイントとして示したのが、次の3つでした。
上層部がDX推進を掲げても、現場はまだ紙だらけ。ディップも当初はこうした状況からのスタートだったといいます。そんななか、いきなりDXに取り組むのは「素人が何もせずにオリンピックにいくようなもの」だと例えます。
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DXを進めようと仕事の流れを変えようとすると現場からの反対も出てきます。そこで、組織やシステムを変えることからではなく、まず成果から作りましょう、と呼びかけました。
DXやRPAという言葉を使わず、あえて「業務改善」と呼び、業務フロー全体ではなく、まずは3~5分程度の小さな業務を自動化できるところから始めれば、仕事の流れを変えることもありませんし、出費も10万円以下に抑えられます。
進藤さんは「自社の段階に合わせてデジタル化をはじめる」ことが大切だと話します。
まず業務内のアナログデータをデジタル化しなければ、DXのもとになるデータも集められません。そこで活用する手段の一つが、RPAです。
RPAとは、たとえば、販売管理システム上のデータから商品別、営業所別の毎日の売上データをグラフ化するなど、人間の定型でやってきたような業務を自動化するツールのことです。
デジタル化を広めるためには、まず小さな業務を自動化し成功体験を周知することが大切だといいます。
ただし、現場からすると、自動化を進めても売上を伸ばせるわけでもなく、きちんと評価されるのか不安に思います。そのためには、成功体験はITツールが主役ではなく、現場の人間の改善の取り組みが目立つように成果を伝えるよう進藤さんは勧めています。
RPAで一部業務の自動化が進み始めたら、次のステップに進みましょう。ただし、全社をDXするのは途方もない時間と労力がかかってしまいます。そこで進藤さんが勧めるのは「自社の強いところコアだけに集中投資してシステムを作ること」です。
強み以外の部分は、外のITツールをつなげてしまい、データにもとづく経営判断ができさえすればいいといいます。そのため、まず取り組むべきは「DXそっくりさん」なのです。
アルバイト・パート求人情報サイト「バイトル」などを運営し、人材サービスを提供するディップの強みは、1千数百人の営業部隊と十万を超える取引企業です。そこで、自社開発したのは、顧客管理システムCRMアプリ。そのほか、顧客のデータ化や顧客フォロー、受注管理は外部のITツールと連動させたといいます。
ここまで来ても、まだDXによるビジネスモデルの変革は遠くに感じられます。これに対し、進藤さんは「ビジネスモデルの変革は自社ができたものを売るのが早いです」と話します。
海外の成功事例として紹介されるAmazon、NETFLIX、Uberも自社でつくったデジタルの仕組みを他者に貸し出し、売るビジネス、つまり「フランチャイズ化」です。
ディップの場合もこれまで取り組んできた自社の経験をもとに、中小企業向けのDX支援事業を始めました。「無理やりDXしなくてもよいんです。デジタル化の先にDXになることもあります」
DXの事例として紹介される企業も最初からビジネスモデルの変革を目指していたわけではありません。進藤さんは「顧客に提供する価値の強みを最大化するためにデジタル化しただけ。そこに着目すれば私たちができることはたくさんあります」と締めくくりました。
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