持つと初年度176万円かかる「ブラックダイヤモンドカード」 何がすごい
かつて“キャッシュレス後進国”と言われた日本。近年はクレジットカードや電子マネーの利用が進み、「どのカードがお得?」「ポイント還元率は?」といった会話も日常の風景になりました。業界を30年以上取材してきた岩田昭男さんが、“キャッシュレス狂騒曲”を冷静に見つめ、利点や問題点を分析します。
かつて“キャッシュレス後進国”と言われた日本。近年はクレジットカードや電子マネーの利用が進み、「どのカードがお得?」「ポイント還元率は?」といった会話も日常の風景になりました。業界を30年以上取材してきた岩田昭男さんが、“キャッシュレス狂騒曲”を冷静に見つめ、利点や問題点を分析します。
目次
クレジットカードにはいろいろな種類があります。
ゴールドカードやプラチナカードといった、ワンランク上のカードに憧れを持つ人もいるでしょう。
年会費の相場は、ゴールドカードで1万~3万円、プラチナカードで5万~10万円です。
そうしたカードは基本的に、社会的信用や収入が高くないと持てません。
特典もそれなりに充実したものが用意されています。
最近では、さらに上のステータスカードが出てきました。
特に、2021年11月に登場したラグジュアリーカードの「Mastercard Black Diamond」(以下、ブラックダイヤモンドカード)は、年会費が超高額なことで注目されています。
いったいどんなカードなのか、解説していきましょう。
ラグジュアリーカードは2008年にアメリカで生まれ、日本では2016年から発行されている金属製クレジットカードです。
ゴールドカードやブラックカードなどのステータスカードを展開しています。
今年で日本上陸5周年になるのを記念し、新たに登場したのがブラックダイヤモンドカードです。
このカードのどこがすごいかというと、なんといっても年会費が66万円(税込)と高いことでしょう。
それと別に入会金が110万円(税込)かかりますから、初年度で合計176万円(税込)も必要です。
このため、選ばれた(招待された)人だけが持てるのです。
まずはラグジュアリーカードの下位カードであるチタンカード、ブラックカード、ゴールドカードのいずれかを持ってクレジットヒストリー(利用実績)を磨いてください。
そして、十分な資格があると判定されたら、ブラックダイヤモンドカードの招待状が届きます。
こうしたステータスカードを出しているカード会社は、日本では他にアメリカン・エキスプレス(アメックス)とダイナースクラブがあります。
最も歴史があるのがアメックスで、次がダイナースクラブ、3番目がラグジュアリーカードです。
それぞれが飛び抜けたステータスカードを1枚ずつ発行しています(いずれも招待制)。
アメックスは「センチュリオン」という幻のカードです。
アメックス本社は出していると公式に認めていませんが、実物は出回っています。
年会費は38万5000円(税込)、入会金は55万円(税込)で、合計93万5000円(税込)です。
ダイナースクラブカードは「ロイヤルプレミアムカード」の発行を2021年に始めました。
年会費55万円(税込)、入会金も55万円(税込)で、合計110万円(税込)です。
そこに今回、ラグジュアリーカードが合計176万円(税込)のブラックダイヤモンドカードで割り込んできたのです。
ラグジュアリーカードは後発なので、とにかく新しいサービスに積極的です。
まず、招待制ではないクレジットカードとしては初めて金属製(チタン)のカードを出し、関係者を驚かせました。
さらに、レストランの送迎にリムジンを使えるようにして喜ばれています。
コロナ禍でも会員数は伸び続け、特にアクティブな個人事業主から大きな支持を集めています。
そして今回、ブラックダイヤモンドカードを出しました。
マットブラック(光沢を抑えた黒色)の券面に天然ダイヤモンドを埋め込んだゴージャスなカードで、関係者を再び驚かせたわけです。
なぜ最上位カードをダイヤモンドにしたのでしょうか。
広報担当者に聞くと「ラグジュアリーカードの最上位はこれまで、金属製のゴールドカードでした。さらに上にふさわしいものを考えたところ、ダイヤモンドという案が出たのです。ゴールドの上はダイヤモンドしかないという思いでした」とのことです。
そして、券面に埋めたダイヤモンドには、クラフトマンシップ(職人技)があふれています。
天然ダイヤの輝きが増すようにカットし、磨き上げています。
その時、カード券面に載せるのに大きすぎてはいけないし、小さ過ぎてもいけない。
その加減が難しいのです。
特に大きすぎるとATMに入れた時に問題が起きかねません。
それを避けるため、1個1個のダイヤモンドを職人たちがカットし磨き上げて、ハイジュエリーに匹敵する「純度」を獲得しているのです。
この作業に大変な時間がかかっているといいます。
ブラックダイヤモンドカードに関して、券面に埋めたダイヤモンドは最も重要な要素と言えます。
しかし、他にも特筆すべきサービスはいろいろあります。
招待を受けて入会すると、まず、大手航空会社の日本―ハワイ便往復ビジネスクラス相当のマイルが年1回プレゼントされます。
マイルはそのまま国際線航空券に換えることもできますが、ホテル宿泊や国内便などいろいろな使い方が可能です。
さらに、ニューヨーク発のファッションブランドサイトGILTの目利き担当者が、個別にヒアリングの上、その人に合ったギフト(1回15万円相当)を年2回プレゼントしてくれます。
また、パークハイアット東京スパ&フィットネス施設「クラブ オン ザ パーク」を、都度料金(5500円)で週1回、特別メンバーとして利用できます。
本来なら計500万円以上する入会金、保証金、年会費は不要です。
ポイント還元率は業界最高水準の2.0%です。
25万円利用ごとに1万1000円分のワイン買い物クーポンに交換することもでき、この場合は商品還元率が最大4.4%になります。
また、1000万円の納税や経費決済で20万円のキャッシュバックがあるなど、ポイントやマイル関係のサービスが充実しています。
このほか、国内外で利用できるマリオットギフトカードや東急ホテルズと提携した選べるホテルギフト(最高20万円相当)が毎年プレゼントされます。
こうした豪華なサービスを一緒に吟味・整理してくれるのがコンシェルジュです。
このコンシェルジュの存在が旅行や出張の成否を左右します。
一般的に1人の顧客に対して1人のコンシェルジュがつきますが、ブラックダイヤモンドカードでは1人の顧客に3人の専任コンシェルジュがつきます。
顧客1人に1人のコンシェルジュでは、24時間付き添えないため、不満の声も上がります。
そこを改善しようと、3人がチームを組んで24時間、継ぎ目なく対応できるようにしました。
さらに、ラグジュアリーカードは会員同士のつながりを大切にしているそうです。
ブラックダイヤモンドカード会員同士や、個人事業主を始めとする経営者同士が交流できる場を提供しています。
すでにビジネスでいくつかの成果が表れたといいます。
ブラックダイヤモンドカードの魅力は、マイルやホテルギフトなど多様な選択肢の中から自分好みのサービスを選べるところでしょう。
毎年提供される優待特典を1人で、あるいは家族で楽しめます。
国内外に旅行したり、豪華ホテルに滞在したり、静かな自然の中でコテージに滞在したりと、いろいろな使い方ができます。
型にはまらない生き方を求める人のための、新しいカードと言えます。
特に若い人の中には、ブラックダイヤモンドカードのようなユニークなカードを「人生の目標にしたい」という方もいるかもしれません。
知っておいて損はない1枚と言えます。
(朝日新聞社の経済メディア「bizble」で2021年12月12日に公開した記事を転載しました)
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