目次

  1. オープンファクトリーとは
  2. オープンファクトリーの意義
  3. ガイドブックが提示 町工場・地域・参加者のメリット
    1. 町工場
    2. 地域
    3. 参加者
  4. おおたオープンファクトリーの事例
  5. 全国各地のオープンファクトリー
  6. オープンファクトリー開催手順
    1. 最初の一歩
    2. 参加者・支援者を集める
    3. 実行委員会の開催
    4. 告知・集客・予約
    5. 当日ガイド・マップの作成
    6. イベントの準備・設営・撤収
    7. ボランティア
    8. 開催
    9. 報告

 町工場でのものづくりの現場を体験・体感してもらうイベント「オープンファクトリー」が全国各地で開催されています。まずは、その経緯から紹介します。

 町工場が集まる地域は、住宅と工場が隣接するところも少なくありません。一方で、後継者不足や人手不足などから廃業を決める町工場も増えています。

 たとえば、東京都大田区は1980年代、9000社を超える製造業の事業所数がありましたが、2016年には半分以下の4229社にまで減りました(大田区ものづくり産業等実態調査報告書から)。

 廃業となった工場は、どんどん真新しい戸建て住宅やマンションへと姿を変えていきます。2021年のおおたオープンファクトリーでガイドを務めた「ハタノ製作所」の代表波田野哲二さんは「一度住宅が建ってしまうと、工場に戻ることは難しくなります。だからこそ、いま町工場の魅力を広く知ってほしいんです」と話します。

 様々な課題があるなか、普段はなかなか見ることのできない町工場を身近に感じられるイベントとして、オープンファクトリーの取り組みが全国各地で広がりました。

 ただし、オープンファクトリーを開催するには、土日に操業したり、準備に時間がかかったりと町工場には少なからず負担もかかります。

町工場を訪れた子どもたち(ファクトリズム実行委員会提供)

 それでも開催することにどんな意義があるのでしょうか。大阪府八尾市など府内各地の町工場が参加するオープンファクトリー「ファクトリズム」で、実行委員長を務める太田泰造さんに質問すると、次のような答えが返ってきました。

コミュニティーの形成がもっとも大事だと考えています。直接の売上につながっている例もありますが、BtoBの企業の場合、大企業やデザイナー、クリエイターとイベント内で出会ったりしています。

また約1ヶ月前には、参加企業43社がプレイベントを開催し、お互いの工場を見学しあうなかで、あらたな取引がつながっている例があります。たとえば、ファクトリズムの基調講演をしたスノーピーク山井会長が錦城護謨へ来社し、新しいアウトドア製品の開発がスタートしています。

八尾の北部にある会社が集まり、八尾北連合として、ファクトリズム以降もプロダクト制作のため定期的に会合をしていると聞いています。

友安製作所で言えば、工場やオフィスのリノベーションやブランディングムービーの受注、コラボレーション商品の共同開発につながっており、ビジネスの広がりが見られます。

また売上以上の効果として人の変化が挙げられます。たとえば、今まで企画下手だったり、しゃべり下手だったりしたスタッフがファクトリズムの広報研修を通じて成長しました。このイベントを通じて、社員同士や社長とのコミュニケーションが生まれて、ほかの社内プロジェクトも盛り上がり、モチベーションが上がったという声をたくさん聞いています。

ファクトリズムを通じて、まちへの認識も大きく変わってきています。こんなにも誇れるものづくりが身近にあったんだということに気づいたと、来場者やボランティアの学生から意見が出ています。中には、就職活動中の学生が中小企業で来年就職することになる事例も生まれています。

 このほか、2014年度の経済産業省の補助金を活用してソーシャルデザイン研究所が作成した「オープンファクトリーガイドブック」は、町工場、地域、来場者それぞれにメリットがあると指摘しています。

  • 見せる・伝えることを真剣に考え社員教育にも役立つ
  • 子どもたちや後継者にモノづくりや地域の魅力を伝える
  • 自社を主役とするファンづくりがビジネスにつながる可能性がある
  • 普段は認められていない自社の価値が評価される喜び ・製造卸・製造小売などへの業態転換、多角化へのきっかけづくり

 ふだんはBtoBの仕事が中心で、消費者の反応が見えない、リアルなニーズをくみ取れないといった課題を感じている町工場は少なくありません。そこで、消費者と直接コミュニケーションをとるオープンファクトリーを通じて、自社ブランドづくりのきっかけになることもあります。

 また、子どもたちなどに自分の仕事を紹介することで仕事の意義を見直すきっかけにもなります。

 地域にとってのメリットは3つ挙げられています。

  • 地域全体の結びつきを強める
  • 地域に関心をもつファンを増やす
  • 立場・業種・職種を超えた地域コミュニティー創出

 住宅と工業が混在する地域に新しく移ってきた住民と工場の間では、騒音、振動、臭いを巡ってトラブルも生じやすいので、地域コミュニティーづくりも重要になります。

 また、課題の解決だけでなく、オープンファクトリーを通じて地域に何度も足を運ぶファンが生まれたり、若いクリエイターと職人などこれまでになかった掛け合わせが生まれたりする場としても期待されています。

 このほか、参加者にとってもものづくりへの理解を深める場となったり、ものづくりに興味のある参加者同士の交流が生まれたりする場にもなっています。

 2021年に開催されたオープンファクトリーの事例を紹介します。おおたオープンファクトリーは2021年で11回目を迎えました。様々なツアーが開催されるなかで、クリエイター向けの町工場ツアー「おおた技めぐり」に同行しました。

 「ハタノ製作所」の波田野さんのガイドに連れられて、最初に訪れたのが「安久工機」です。

 試作開発のなかでも、安久工機が得意とするのは最も初期段階。常務の田中宙さんは「考案した原理を調べるための装置をどう作るかわからないという段階からいっしょに考えて図面を引くのも私たちの仕事です」と話します。

 天井からつるされた蛍光灯に照らし出されたのは、人工心臓開発に関わったプロジェクトでつくった試作品や、東京大の研究室から依頼されたカオス理論を体現する装置など。参加したデザイナーたちが興味深そうにスマホのカメラにその様子を収めていました。

 その後も、樹脂切削加工の「シナノ産業」や金属切削加工の「三陽機械製作所」などの現場を2~3時間かけて周りました。町工場から一方的に情報を伝えるのではなく、参加したデザイナーからも普段つくっている作品の話や工場に加工依頼するときに気を付けているポイントなどを話していました。

 全国に広がったオープンファクトリーですが、2020年からはコロナ禍でイベントを中止する地域も相次いでいます。2021年の開催をサイトで報告していた例をいくつか紹介します。

 それでは、実際にオープンファクトリーを開催するにはどうすればよいでしょうか。

 「オープンファクトリー ガイドブック」内の運営ガイドが参考になります。項目を挙げるだけでもかなり多いため、一つひとつ整理しながら進めましょう。

 とくに、工場の現場では当たり前のことも、参加者にとってはわからないことがたくさんありますので、チラシやSNSで前もって周知するほか、当日も口頭で伝えた方がよいでしょう。たとえば、次のような注意点があります。

  • 動きやすい服装にし、機械に巻き込まれそうな上着やスカートなどを避ける
  • 運動靴やかかとの低い靴を履く
  • 写真撮影は工場の担当者の確認を取ってからにする
  • 立ち入りが危険な場所を明示する

 それでは、開催手順ごとに注意したいポイントを紹介します。

発起人集め
実行委員会の設置
ビジョン・活動内容を決める
事務局を立ち上げる

趣意書/募集要項の作成
参加者集め(個別訪問・説明会など)
支援者集め(依頼書の作成・訪問での説明)

参加者によるミーティング
予算の決定(参加費徴収・補助金申請など)
役割分担
事業計画
外部への業務委託

ちらし、DM等の作成・配布
ホームページの制作
SNSの活用
マスコミへの広報活動
他イベント会場等での告知
参加企業による集客・地域による集客
イベントやツアーの予約受け付け

参加者からの原稿集め/取材/確認調整
内容の編集/デザイン

会場の手配
備品の手配・配布

ボランティア募集
ボランティアの育成
当日の配置

各工場や参加企業での見学者受け入れ
ツアーの実施
インフォメーションの運営
当日の連絡調整
記録・写真撮影・取材
来場者アンケート実施

参加企業アンケートの実施
報告書の制作・報告
広報活動
反省会の実施