目次

  1. 顧客に高く評価された技術
  2. 理想の社風を描いたが・・・
  3. 若手を育てる文化がなかった
  4. 問題の原因は社長の態度に
  5. 多能工化を図る余力がない
  6. 「働きがい改革」に取り組む理由
  7. 社員に「どうか助けてほしい」
  8. 「働きがい改革」の3本柱とは
  9. 「働きがい改革」の成果
  10. 仕入れ先から教えを請われる
  11. 主体的に「考動」する風土へ
  12. 信頼関係づくりをコーチング
  13. 地域全体をもり立てる

 筒井工業は1963年、初代の筒井万司さんが溶剤塗装業として創業し、今は正社員50人を抱えます。創業当時、職人の腕と人数で優劣が決まる時代に出会ったのが、粉体塗装です。粉末状の塗料を静電気で製品に付着させ、高温で焼き付ける技術で、一般的な塗装に比べ、環境に優しく、耐久性に優れているといいます。

 同社は、粉体塗装を建材や自動車部品に用いています。製品の多くが屋外で使われ、塗装が数年ではがれては、意味がありません。同社は技術部を設け、引き合いや量産前の段階で、出荷後のリスクを検証し、対策や管理を徹底しています。下請けではなくメーカーとしてあるべき姿を貫く姿勢は、道路資材や自動車部品などのメーカーに評価され、無借金経営を続けています。

筒井工業が誇る粉体塗装

 同社は、創業者と縁があった経営コンサルタントが2代目、銀行から転職した経理担当が3代目の社長を務め、2017年に現社長の前島靖浩さん(48)が4代目となりました。新卒入社のプロパー社員では、初の経営トップでした。

 前島さんはその4年前、創業者に呼ばれて4代目を打診され、「社名も経営理念も変えてもいいぞ。筒井工業を未来永劫続く会社にしてくれ」と言われました。前島さんは「会社に必要なのは人財。未来永劫続くための基礎をつくることが、私のミッション」と腹をくくりました。

筒井工業4代目の前島靖浩さん

 4年間専務を務めて社長になった前島さん。「社員みんなでおみこしを担ぎ、わっしょいわっしょい、お祭りのように仕事を楽しんでいる。自分はそれを端で眺めてニコニコしている」という理想の社風を、脳裏に描きました。

 ところが、現実はその理想からかけ離れた厳しいものでした。

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