14年前の2008年9月15日、アメリカの大手証券会社のリーマン・ブラザーズが米連邦破産法11条適用の申請を発表し、経営破綻しました。

リーマン・ブラザーズの破綻翌日の日経平均株価は急落した=2008年9月16日、東京・丸の内、朝日新聞社

リーマン・ブラザーズの資産規模は6390億ドル(約66兆5000億円※2008年当時)で、当時のアメリカの証券業界では4番目の規模でした。

リーマン・ブラザーズの経営破綻を報じる2008年9月16日付朝日新聞夕刊

信用力が低い個人や所得が低い人を対象にした住宅ローン「サブプライム・ローン」が焦げ付くサブプライム危機が直撃し、リーマン・ブラザーズは2008年3〜5月期決算で、1994年の上場以来初めての当期赤字に転落しました。

2008年6〜8月期決算も2四半期連続で赤字見込みとなったことで顧客や取引先の信頼を失い、事業継続が困難となりました。

身売り先を探してアメリカやヨーロッパの金融大手各社と交渉したものの、不調に終わったことで破綻に追い込まれました。

負債総額は6130億ドル(約63兆8000億円※2008年当時)。アメリカ史上最大の倒産でした。

 

さらに、この日はアメリカ証券第3位のメリルリンチがアメリカ銀行2位のバンク・オブ・アメリカに身売りすることで合意したという発表もありました。

わずか1日で大手証券2社が破綻と救済合併に追い込まれ、アメリカを象徴する金融街、ウォール・ストリートに衝撃が走りました。

リーマンの経営破綻をきっかけに、世界は「100年に一度」といわれる金融危機、そして大不況に陥りました。

リーマン・ブラザーズ経営破綻の日本への影響を報じる2008年9月17日付朝日新聞朝刊

2008年9月17日付朝日新聞朝刊によると、ニューヨークに進出している日本の大手銀行は相次いで損失計上を迫られ、大手金融機関のリーマン関連債券は約2100億円にもなりました。

金融機関の先行きへの不安から、アメリカや日本をはじめ、先進国や新興国では投資や消費が低迷し、多くの産業、雇用は大打撃を受けました。日本では倒産も相次ぎました。

世界的な景気減速のあおりを受けてドル売り円買いが加速し円高が進んだことも、輸出企業を中心に企業業績にとって大きなダメージになりました。

 

日経平均株価も急落し、2008年10月27日には東証1部上場銘柄の9割が値下がりしました。

株価指数は全業種でマイナスとなり、トヨタ自動車やソニー、パナソニックなど日本を代表する企業の株価は年初来安値を更新。日経平均株価は、リーマンが破綻した9月15日からひと月余りの間に5051円(41・3%)も下落し、26年ぶりの安値を記録しました。

株価の低迷は長期化し、日経平均は2009年3月にはバブル崩壊後最安値の7054円を記録しました。

日経平均株価の26年ぶり安値を報じる2008年10月28日付朝日新聞朝刊

日本のGDP(国内総生産)は2008~2009年の2年連続でマイナス成長になりました。アメリカ経済の混乱が日本の企業や暮らし、財政など経済全体に大きなダメージをもたらすことになりました。

さらなる危機を防ぐため、各国は大胆な景気対策に乗り出します。アメリカでは2009年1月に発足したオバマ政権が7870億ドル(約74兆円)規模、中国も4兆元(約56兆円)規模の対策を発表。

日本でも当時の麻生太郎首相(現・財務相)が積極的な財政出動を推進し、たびたび補正予算を編成。新興国向けの金融支援のためにIMF(国際通貨基金)向けに最大1000億ドルを融資する考えも各国に伝えました。

市民団体の年越し支援緊急相談会。リーマン・ショックで勤め先が倒産し、路上生活になった若い男性も相談に訪れていた=2010年12月29日、東京都新宿区、朝日新聞社

民主党への政権交代を経て2012年12月には安倍晋三氏が再び首相となり、金融緩和と積極的な財政政策を柱とするアベノミクスを進めました。

金融緩和の効果で株高と円安は進んだものの、日本経済の低成長は依然として課題です。

 

2020年のコロナショックでは、世界中の中央銀行が大規模な金融緩和を進めました。

2022年に入り、各国で歴史的なインフレが問題化しています。

 

(朝日新聞社の経済メディア「bizble」で2021年9月15日に公開した記事を一部修正して転載しました)