目次

  1. 随時改定とは 標準報酬月額を改定する手続き
    1. 随時改定を忘れた場合は?しなかったらどうなる?
    2. 給与が変わっても随時改定が必要のないケースもある
  2. 随時改定の手順3ステップ
    1. ステップ①固定的賃金の変動(トリガー)の有無を確認する
    2. ステップ②2等級以上の差が発生しているかを確認する
    3. ステップ③月額変更届を提出する
  3. 随時改定にありがちなイレギュラーパターンへの対応方法
    1. 事例①複数回にわたって固定的賃金が変動する場合
    2. 事例②ねじれ状態の場合
    3. 事例③定時決定と時期が重複する場合
    4. 事例④交通費の支払い方が変わる場合
  4. 随時改定の届出後、いつから反映?
    1. ①公文書の確認・改定額の連絡
    2. ②社会保険料の変更反映
  5. 仕組みを理解し、毎月遅れのないように

 随時改定とは、昇給や降給など給与額に変更があったときに、その変動を社会保険料額に反映させるための制度です。

 社会保険料は毎年一回更新されます(これを定時決定と言います)が、一定の要件を満たすような給与変更があった場合には、年度の途中であっても定時決定を待たずに変更の届出を提出する必要があります。これを随時改定と言います。提出する書類の名称が「月額変更届」であることから、月額変更とも呼ばれます。

 給与額と社会保険料額に大きな乖離が出ると、将来受け取る年金額等に影響が出てしまうため、随時改定は漏れなく、かつ遅滞なく行わなければなりません。

 定時決定については、記事「算定基礎届の書き方 社労士が作成手順や注意点を画像つきで解説」もご確認ください。

随時改定の概要 昇(降)給等の固定的賃金の変動に伴って標準報酬月額が大幅に変わった際、年一回の定時決定を待たずに標準報酬月額を改定する手続き
随時改定の対象企業 社会保険に加入しているすべての会社
随時改定の対象となるケース 次の3つの要件をすべて満たす場合
①昇給や降給などにより固定的賃金に変動があった
②変動月からの3ヵ月間に支給された報酬の平均月額に該当する標準報酬月額と、従前の標準報酬月額との間に2等級以上の差が生じた
③3ヵ月とも支払基礎日数が17日以上である
随時改定のタイミング 上記①から3ヵ月間の給与支給が行われたあと
随時改定時に作成する書類 被保険者報酬月額算定変更届(通称:月額変更届)
随時改定時に作成する書類の提出先 日本年金機構の事務センターまたは管轄の年金事務所
随時改定時に作成する書類の提出期限 要件を満たしたあと、速やかに

 随時改定を届け出た結果がいつから反映されるかというタイミングも、給与の締日・支払日によって異なり、手続きを難しく感じさせる要素です。この点は「随時改定を行った後の手続き」の項目でご説明します。 

随時改定の主な流れ
随時改定の主な流れ(デザイン:増渕舞)

 随時改定の届出を行わなかったり、虚偽の届出を行った場合には、罰則として「6か月以下の懲役」または「50万円以下の罰金」が規定されています(健康保険法208条他)。ただし、随時改定を忘れたり行わなかったりすることでこれらの罰則が適用されることは、実務上ほとんどありません。

 一方で、定時決定の際や年金事務所調査で手続き漏れを指摘された場合には、遡及して届出を行う必要があります。

 過去分の社会保険料が変更となると、従業員から追加で差額徴収が必要になったり、手続きが複雑になったりなど、手間が大幅に増えることとなります。

 毎月確認し、手続きが遅れず漏れないようにすることが何より大切です。

 一方で、昇給や降給など給与額に変更があったとしても、随時改定が必要のないケースもあります。随時改定の要件を再度記載します。

 ①昇給や降給などにより固定的賃金に変動があった
 ②変動月からの3ヵ月間に支給された報酬の平均月額に該当する標準報酬月額と、従前の標準報酬月額との間に2等級以上の差が生じた
 ③3ヶ月とも支払基礎日数が17日以上である

 必要のないケースを例示すると、

 ・上記①〜③のいずれかに該当しない場合
 ・ねじれ状態の場合(固定的賃金は上昇したが標準報酬月額は下がった、もしくは固定的賃金は低下したが標準報酬月額は上がった場合)

 などが挙げられます。

 次に記載するステップで、随時改定が必要な対象を確認し、届出を行いましょう。

 随時改定の届出は、次の手順で行います。

 毎月決まって支給している賃金(=固定的賃金)に変更があるかどうかを確認します。

 固定的賃金とは、基本給、役職手当、固定残業代、通勤手当(実費精算を除く)、歩合給など、毎月決まった額を支払う賃金のことです。残業代、実費精算の通勤手当はこれに該当しません。

 固定的賃金の変更があった月から3ヵ月分の給与額の平均額を算出します。この際、支払い月ベースで確認することに留意します。

 つまり、給与が当月末締め翌月25日支払いの会社で、4月分(=5月25日支給分)から昇給した場合、確認するのは5月25日支給分、6月25日支給分、7月25日支給分の3ヵ月分です。

 加えて、上記の期間中、支払基礎日数がすべて17日以上であることを確認します。

 支払基礎日数が3ヵ月とも17日以上である場合には、3ヵ月分の給与額の平均額を等級表に当てはめます(等級表は全国健康保険協会のWebサイトで確認できます)。変更前と変更後で2等級以上の差があったときは、変更後賃金が支払われてから4ヵ月目に、随時改定の届出が必要です。

 比較する給与額の平均額は、残業代や実費精算の通勤手当をすべて含んだ総額です。①とは異なり、固定的賃金に限られないことは留意しておきましょう。

 随時改定が必要な社員については、変更後賃金が支払われてから4ヵ月目に月額変更届を提出します。

 先ほどの例(当月末締め翌月25日支払いの会社で、4月分(=5月25日支給分)から昇給した場合)で言えば8月です。

 詳しい書き方は、日本年金機構の「随時改定に該当するとき(報酬額に大幅な変動があったとき)」を参考にしてください。

 また、月額変更届は算定基礎届とよく似ています。下記の記事も参考にしてください。

 随時改定を行うにあたって、判断に迷う事例4つと、それぞれの対応方法をご紹介します。

 固定的賃金の変動が発生したあと、3ヵ月以内に再度固定的賃金が変動した場合は、それぞれの固定的賃金の変動を随時改定のトリガーとしなければいけません。固定的賃金変動が毎月発生しているときは、その都度、2等級以上の差が生じているかを確認し、随時改定の可否について判断します。

 ねじれ状態(固定的賃金の増減と標準報酬月額の増減が一致しない)の場合、随時改定の対象にはなりません。

 例えば役職手当がアップしたことで固定的賃金は上昇したものの、残業手当などの非固定的賃金が減額し、結果的に2等級以上、標準報酬月額が下がった場合は、随時改定の対象外です。

 定時決定の期間である4月・5月・6月に昇給や降給があり、随時改定要件を満たす場合、定時決定よりも随時改定が優先されます。

 具体的には、定時決定の反映時期を待たずに、随時改定の反映時期から社会保険料額が変わる、ということです。

 交通費については、毎月定額を支払っているか(例:定期代支給)、実費精算をしているかで、随時改定のトリガーとなるかどうかが異なります。

 前者は固定的賃金として扱うため、定期代の支給額に変動が生じた場合、随時改定の要件に当てはまるかどうかを確認します。一方で、後者は毎月の支給額に変動があっても随時改定の対象とはなりません。

 なお、定額支給から実費精算に、実費精算から定額支給に、支払い方が変わる場合、それ自体が随時改定のトリガーとなることにも留意が必要です。

 随時改定は、月額変更届を提出して終わりではありません。社会保険料の変更を、適切なタイミングで給与明細に反映する必要があります。

 手続きが完了すると、年金事務所から「健康保険・厚生年金保険資格取得確認および標準報酬決定通書」が発行されます。

 決定通知書の標準報酬月額を確認したら、従業員には給与明細に追記するなどして、社会保険料の等級変更の旨を伝えます。

 社会保険料の変更を反映するにあたっては、自社の社会保険料の徴収タイミングを正しく理解しておく必要があります。

 自社が翌月徴収の場合、変更した月の翌月に支給する給与から社会保険料額を更新します。

 先ほどの例(当月末締め翌月25日支払いの会社で、4月分(=5月25日支給分)から昇給し、8月に月額変更届を提出した場合)で言えば、翌月徴収の場合、8月分から社会保険料額が変わるため、給与明細としては9月25日支給分から変更後の社会保険料額が反映されることになります。

 変更後の額は、再度随時改定の要件に該当しない限り、次回の定時決定まで(8月分まで)適用されます。

 随時改定を正しく行わずに年金事務所への届出などが漏れていると、定時決定や年金事務所調査の際に届出のやり直しや訂正を求められます。その結果、社会保険料の不足分を遡って徴収されることもあります。

 給与額の訂正が相次ぐと、手間が増えるだけではなく、従業員との間の信頼関係に影響を与えかねません。また、そもそも手続き漏れに気づかなかった場合は、従業員が将来受け取れる年金額にも影響が発生します。

 随時改定の仕組みを正しく理解し、毎月確実に届出を行うようにしましょう。