目次

  1. 働き方改革推進支援助成金とは 広い活用範囲
    1. 労働時間短縮・年休促進支援コース
    2. 勤務間インターバル導入コース
    3. 労働時間適正管理推進コース
  2. 働き方改革推進支援助成金の対象となる9つの取り組み
  3. 2022年度補正予算案、賃上げ加算の拡充方針

 厚生労働省によると、働き方改革推進支援助成金とは、生産性を高めながら労働時間を縮減するなど働き方改革に取り組む中小企業や小規模事業者、事業主団体への助成金です。

 年々要件は厳しくなっていますが、活用範囲が幅広いのが特徴です。たとえば、生産性を向上させたいときに新たに機械・設備を導入することや、手書きでミスの多かった始業・終業時刻の記録をICカード式に切り替えること、作業のムダを見つけるために依頼する外部専門家のコンサルティングなどに活用できます。

 2022年度(令和4年度)は次の4つのコースが設定されています。

  1. 労働時間短縮・年休促進支援コース
  2. 勤務間インターバル導入コース
  3. 労働時間適正管理推進コース
  4. 団体推進コース

 この記事では、このうち、労働時間短縮・年休促進支援コース、勤務間インターバル導入コース、労働時間適正管理推進コースを中心に解説します。

 2020年度から、中小企業に、時間外労働の上限規制が適用されています。労働時間短縮・年休促進支援コースは、生産性を向上させ、時間外労働の削減、年次有給休暇や特別休暇の促進に向けた環境整備に取り組む中小企業事業主に向けた助成です。

 支給対象となる事業主は、次の3つすべてに該当する必要があります。

  1. 労働者災害補償保険の適用事業主である
  2. 交付申請時点で、後述の「成果目標」の設定に向けた条件を満たしている
  3. すべての事業場で、年5日の年次有給休暇の取得に向けて就業規則等を整備している

 さらに、以下の「成果目標」から1つ以上を選択し、すべての事業場で達成を目指す必要があります。

  • 2022、2023年度に有効な36協定で、時間外・休日労働時間数を縮減し、月60時間以下、または月60時間を超え月80時間以下に上限を設定し、所轄労働基準監督署長に届け出る
  • 年次有給休暇の計画的付与制度を新たに導入する
  • 時間単位の年次有給休暇制度を新たに導入する
  • 交付要綱で規定する特別休暇(病気休暇、教育訓練休暇、ボランティア休暇、新型コロナウイルス感染症対応のための休暇、不妊治療のための休暇)のいずれか1つ以上を新たに導入する

 上記の成果目標に加えて、指定する労働者の時間あたりの賃金額を3%以上または、5%以上の賃金引き上げを成果目標に加えることができます。

 助成額は、以下1~3の上限額および4の合計額、または対象経費の合計額×補助率3/4のいずれか低い方となります。助成額は最大で490万円です。

  1. 成果目標1の上限額:事業実施前と後に設定する時間外労働と休日労働の合計時間数に応じて50万~150万円
  2. 成果目標2の上限額:50万円
  3. 成果目標3、4の上限額:それぞれ25万円
  4. 賃金引き上げの達成時の加算額(引き上げ人数と引き上げ率で変動)

 詳しくは、厚労省の公式サイトへ。

 勤務間インターバルとは、健康保持や過重労働の防止のために勤務終了後、次の勤務までに一定時間以上の休息時間を設けることで、2019年度から、制度の導入が努力義務化されました。

 支給対象となる事業主は、次の5つすべてに該当する必要があります。

  1. 労働者災害補償保険の適用事業主である
  2. 勤務間インターバルを導入していない事業場(※1)既に休息時間数が9時間以上の勤務間インターバルを導入している事業場であって、対象となる労働者が当該事業場に所属する労働者の半数以下である事業場(※2)、既に休息時間数が9時間未満の勤務間インターバルを導入している事業場(※3)のいずれかに該当する事業場を有する事業主である
  3. すべての対象事業場で、交付・支給申請時点で、36協定が締結・届出されている
  4. すべての対象事業場で原則、過去2年間に月45時間を超える時間外労働の実態がある
  5. すべての対象事業場で、交付申請時点で、年5日の年次有給休暇の取得に向けて就業規則等を整備している

 支給対象となる取り組みは、以下の成果目標の達成を目指す必要があります。さらに、指定する労働者の時間当たりの賃金額を3%以上または、5%以上で賃金引き上げを行うことを成果目標に加えることができます。

新規導入(※1に該当する場合)

 新規に所属労働者の半数を超える労働者を対象とする勤務間インターバルを導入すること

適用範囲の拡大(※2に該当する場合)

 対象労働者の範囲を拡大し、所属労働者の半数を超える労働者を対象とすること。

時間延長(※3に該当する場合)

 所属労働者の半数を超える労働者を対象として休息時間数を2時間以上延長して、9時間以上とすること。

 「成果目標」の達成状況に応じて、助成対象となる取組の実施に要した経費の一部を助成します。助成額は最大で340万円です。 助成額は休息時間数や成果目標によって変わるほか、賃金引き上げの達成時の加算額(引き上げ人数と引き上げ率で変動)もあります。

 詳しくは厚労省の公式サイトへ。

 2020年度から、賃金台帳等の労務管理書類の保存期間が5年(当面の間は3年)に延長されています。生産性を向上させ、労務・労働時間の適正管理の推進に向けた環境整備に取り組む中小企業事業主を助成するものです。

 支給対象となる事業主は、すべての対象事業場で、次の5つに該当する中小企業事業主です。

  1. 労働者災害補償保険の適用事業主である
  2. 交付決定日より前の時点で、勤怠(労働時間)管理と賃金計算等をリンクさせ、賃金台帳等を作成・管理・保存できるような統合管理ITシステムを用いた労働時間管理方法を採用していない
  3. 交付決定日より前の時点で、賃金台帳等の労務管理書類について5年間保存することが就業規則等に規定されていない
  4. 交付申請時点で、36協定が締結・届出されている
  5. 交付申請時点で、年5日の年次有給休暇の取得に向けて就業規則等を整備している

 成果目標としては、次の3つすべてを達成する必要があります。

  1. 新たに勤怠(労働時間)管理と賃金計算等をリンクさせ、賃金台帳等を作成・管理・保存できるような統合管理ITシステムを用いた労働時間管理方法を採用する
  2. 新たに賃金台帳等の労務管理書類について5年間保存することを就業規則等に規定する
  3. 「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」に係る研修を労働者及び労務管理担当者に対して実施する

 上記の成果目標に加えて、指定する労働者の時間当たりの賃金額を3%以上または、5%以上で賃金引き上げを行うことを成果目標に加えることができます。

 助成額は、目標達成時の上限額および賃金引き上げの達成時の加算額の合計額、または対象経費の合計額×補助率3/4のいずれか低い方となります。助成額は最大で340万円です。

 詳しくは、厚労省の公式サイトへ。

 働き方改革推進支援助成金のうち上記3つのコースの助成対象は幅広いのが特徴です。

  1. 労務管理担当者に対する研修
  2. 労働者に対する研修、周知・啓発
  3. 外部専門家(社会保険労務士、中小企業診断士など)によるコンサルティング
  4. 就業規則・労使協定等の作成・変更
  5. 人材確保に向けた取組
  6. 労務管理用ソフトウェアの導入・更新
  7. 労務管理用機器の導入・更新
  8. デジタル式運行記録計(デジタコ)の導入・更新
  9. 労働能率の増進に資する設備・機器等の導入・更新(小売業のPOS装置、自動車修理業の自動車リフト、運送業の洗車機など)

※研修には、業務研修も含みます。
※原則としてパソコン、タブレット、スマートフォンは対象となりません。

 2022年度補正予算案では、企業規模30人以下の事業主を対象に賃上げ加算を拡充する方針が示されました。

 これまでの賃上げ加算は、賃金を3%以上引き上げた場合、その労働者数に応じて、助成金の上限額をさらに15万円~最大150万円(5%以上の場合は、24万円~最大240万円加算)とするという内容でした。

 2022年度補正予算案では、賃金3%以上の引き上げについては助成金の上限額をさらにに30万円~最大300万円(5%以上の場合は、48万円~最大480万円加算)とすることが示されました。具体的には次の通りです。

賃上げ人数 3%引き上げ 5%引き上げ
1~3人 15万円⇒30万円 24万円⇒48万円
4~6人 30万円⇒60万円 48万円⇒96万円
7~10人 50万円⇒100万円 80万円⇒160万円
11~30人 1人あたり5万円(上限150万円)⇒1人あたり10万円(上限300万円) 1人あたり8万円(上限240万円)⇒1人あたり16万円(上限480万円)