目次

  1. 短時間勤務制度とは
    1. 短時間勤務制度が設けられた背景
    2. 短時間勤務制度の対象者
    3. 短時間勤務制度の対象にならない労働者への必要な措置
  2. 短時間勤務制度のメリット・デメリット
    1. 企業側のメリット・デメリット
    2. 労働者側のメリット・デメリット
  3. 短時間勤務制度を導入するための手順
    1. ステップ1.対象者範囲の決定
    2. ステップ2.手続方法・社内様式の決定
    3. ステップ3.就業規則の作成
    4. ステップ4.社会保険の取扱いの確認
    5. ステップ5.短時間勤務制度の周知
  4. 短時間勤務制度を導入したあとは
  5. 短時間勤務制度導入の参考事例
  6. 短時間勤務制度と短時間正社員制度の違い
  7. 育児・介護休業法改正と併せて短時間勤務制度の見直しを

 短時間勤務制度とは、1日の所定労働時間がフルタイム労働者と比べて短い勤務制度のことです。

 短時間勤務制度は、育児・介護休業法によって対象となる従業員が希望した場合に適用することが、企業に義務付けられています。

 そのため、短時間勤務制度というと、育児・介護休業法における「育児のための短時間勤務制度」、すなわち原則として1日の所定労働時間を6時間に短縮する制度を指すことがしばしばあります。今回はこの「育児のための短時間勤務制度」にスポットをあてて解説します。

 同法は、2022年4月から順次改正施行されていますが、短時間勤務制度措置の義務付けは変わりありません。もし、育児・介護の短時間勤務制度について就業規則上に規程がない場合は、早めに制度を整備しておきましょう。

育児・介護休業法における「短時間勤務制度」の概要
育児・介護休業法における「短時間勤務制度」の概要(デザイン:増渕舞)

 女性の年齢階級別に見た労働力率(就業者と就業意欲のある者)は、学卒後の年代で上昇し、その後、結婚・出産期に一旦低下し、育児が落ち着いた時期に再び上昇するM字カーブを描くと言われていました。

 総務省統計局の「労働力調査」によれば、1989年にはM字カーブの底にあたる30~34歳女性の労働力率は51.1%であり、約半数が就業していない状況でした。2000年になってもM字カーブ底の同年齢階級の労働力率は57.1%で、OECD(経済協力開発機構)平均66.1%を下回っています(参照:統計が語る平成のあゆみ p.5│総務省統計局)。

 こうした状況から、育児・介護による離職を防ぐため、2009年に育児・介護休業法が改正となり、その際に「所定労働時間の短縮措置」制度が新設されました。

 改正から8年後の2017年には、M字カーブの底が20ポイント近く上昇し、20歳以降の各年齢階級でOECD平均を上回っています(参照:同上 p.5)。女性の育児離職の状況は、制度新設によって改善していると言ってよいでしょう。

 2020年には、「所定労働時間の短縮措置」として短時間勤務制度は、68.0%の事業所で導入されています(参照:令和2年度雇用均等基本調査 p.20│厚生労働省)。

 育児・介護休業法では、次のいずれにも該当する従業員が希望した場合、企業は短時間勤務制度を講じる必要がある(1日の所定労働時間を5時間45分~6時間にしなければならない)としています。

育児のための短時間勤務対象者
  1. 3歳未満の子を養育している
  2. 1日の所定労働時間が6時間以下ではない
  3. 日々雇用される者ではない
  4. 短時間勤務制度が適用される期間に育児休業(産後パパ育休含む)をしていない
  5. 労使協定により適用除外とされていない

 なお、5.の労使協定では、以下の従業員を適用除外とすることができます。

  • その事業主に継続して雇用された期間が1年に満たない者
  • 1週間の所定労働日数が2日以下の者
  • 業務の性質又は業務の実施体制に照らして、短時間勤務制度を講ずることが困難と認められる業務に従事する者

 まとめると、育児・介護休業法改正後でも「入社1年未満の従業員」は、労使協定締結によって短時間勤務制度の適用除外とすることができます。

 労使協定で除外していない場合には、希望するフルタイム従業員のほぼ全員が、短時間勤務制度の適用対象となります。

 労使協定で適用除外としている場合、入社1年未満の従業員に対する短時間勤務制度の適用を拒否しても、法律的に問題はありませんが、離職防止や就業意欲の向上のために次のような措置をとる企業もあります。

  • 労使協定による除外を無くす
    →短時間勤務制度対象者の枠が広がる
  • 始業・終業時間の繰り上げ・繰り下げを可能にする制度を別に設ける
    →送迎等の時間に合わせられる
  • 在宅勤務制度を適用する
    →通勤時間としていた時間を育児に充てられる

 また、子が3歳以上となった場合でも、子が小学校就学前までは企業に努力義務があります。

 次に、短時間勤務制度の導入によるメリットとデメリットを見ていきます。

メリット デメリット
企業 ・従業員の定着を促す
・採用の門戸が広がる
・短時間勤務制度の規程が必要
・短時間勤務の管理が必要
労働者 ・育児の時間をとれる ・給与が減額される

 それぞれ、詳しくご説明します。

 企業側のメリットとしては、育児による離職を防ぎ、定着を促すことがあげられます。採用の面でも、応募者の範囲は広がることでしょう。

 デメリットとしては、短時間勤務制度の規程整備があります。また、制度利用者がいるときには、時短の賃金計算や適用している従業員の仕事量の調整といった管理が必要になります。

 労働者側のメリットとしては、育児の時間がとれることによりワークライフバランスが充実することがあげられます。

 デメリットとしては、カットされた労働時間分の賃金が減額されることがあります。時間が得られる分、賃金が減るのは苦しいところですが、社会保険に加入している場合は以下の制度を利用できる場合があります。

  • 育児休業終了時報酬月額変更届(社会保険料を短時間労働分の給与に合わせた保険料に変更する手続き)
  • 厚生年金保険養育期間標準報酬月額特例申出書(給与が減額されても将来の年金受給額が従前の給与額で計算される手続き)

 短時間勤務制度を利用している育休明けの労働者がいる場合は、これらの制度の手続き漏れが無いか注意しましょう。

 では、実際に短時間勤務制度を導入するための手順を解説します。次の5ステップで進めるとよいでしょう。

  1. 対象者範囲を選定
  2. 手続方法・社内様式の決定
  3. 就業規則の作成
  4. 社会保険の取扱いの確認
  5. 短時間勤務制度の周知

 対象者の範囲は、従業員の年齢構成や、今後採用する人材のゾーンも踏まえて決めましょう。

 短時間勤務制度の対象者でも述べたように、法律では、労使協定締結により入社1年未満の従業員を制度の適用除外にできます。

 ですが、労使協定による適用除外を用いず、入社してすぐの従業員も短時間勤務制度を利用できるようにすることも可能です。

 なお、制度対象者を「入社3年以上」などとすることは法の基準を下回るためできません。

 短時間勤務制度は、育児・介護休業法の他の制度と異なり、申出期日や制度適用期間などが法令で定められていません。そのため社内で手続きに関する期日や方法、様式を決定する必要があります。厚生労働省の「社内様式例 p.11」を活用するとよいでしょう。

 ここでは、適用を受けようとする従業員にとって過重な負担とならないよう配慮することが求められています(参考:育児・介護休業法のあらまし p.108│厚生労働省)。

 例えば、以下のような決まりは望ましくありません。

  • 申出期日を1か月より前とするもの ※「1か月前までとする」は問題ありません
  • 適用期間を1か月単位とするもの

 範囲や手続方法を定めたら、それを就業規則に記載していきます。労使協定による適用除外がない場合の規程例を下記に引用しますので、参考にしてみてください。

(育児短時間勤務)

第◯条

  1. 3歳に満たない子を養育する従業員は、申し出ることにより、就業規則第◯条の所定労働時間について、以下のように変更することができる。所定労働時間を午前9時から午後4時まで(うち休憩時間は、午前12時から午後1時までの1時間とする)の6時間とする(1歳に満たない子を育てる女性従業員は更に別途30分ずつ2回の育児時間を請求することができる)。
  2. 本条第1項にかかわらず、日雇従業員及び1日の所定労働時間が6時間以下である従業員からの育児短時間勤務の申出は拒むことができる。
  3. 申出をしようとする者は、1回につき、1か月以上1年以内の期間について、短縮を開始しようとする日及び短縮を終了しようとする日を明らかにして、原則として、短縮開始予定日の1か月前までに、 育児短時間勤務申出書(社内様式◯)により人事部労務課に申し出なければならない。申出書が提出 されたときは、会社は速やかに申出者に対し、育児短時間勤務取扱通知書(社内様式◯)を交付する。その他適用のための手続等については、第3条から第5条までの規定(第3条第2項及び第4条第3項を除く)を準用する。
  4. 本制度の適用を受ける間の給与については、別途定める給与規定に基づく労務提供のなかった時間分に相当する額を控除した基本給と諸手当の全額を支給する。
  5. 賞与については、その算定対象期間に本制度の適用を受ける期間がある場合においては、短縮した時間に対応する賞与は支給しない。
  6. 定期昇給及び退職金の算定に当たっては、本制度の適用を受ける期間は通常の勤務をしているものとみなす。

引用:育児・介護休業等に関する規則の規定例 p.36│厚生労働省

 労使協定により適用除外を定める場合は、上記の第2項を以下のものに差し替えてください。

《労使協定の締結により除外可能な者を除外する例》
本条第1項にかかわらず、次のいずれかに該当する従業員からの育児短時間勤務の申出は拒むことができる。
一 日雇従業員
二 1日の所定労働時間が6時間以下である従業員
三 労使協定によって除外された次の従業員
(ア) 入社1年未満の従業員
(イ) 1週間の所定労働日数が2日以下の従業員

引用:同上

 作成・改訂した就業規則は、労働者代表の意見を聴いたうえで、管轄の労働基準監督署へ提出しましょう。

 労使協定例は厚生労働省の「育児・介護休業等に関する規則の規定例労使協定例」を参考にしてください。

 短時間勤務でも、1週間の所定労働時間と1か月の所定労働日数がフルタイム労働者の4分の3以上である場合は、そのまま被保険者となります。

 育児による短時間勤務は、原則として1日の所定労働時間を6時間とするもので、労働時間4分の3の状態を維持しているため、短時間勤務を適用したからといって社会保険を脱退することにはなりません。

 作成・改訂した就業規則は周知されてはじめて効力を持ちます。また、2022年の改正育児・介護休業法では「妊娠・出産の申出をした従業員に対する個別の周知、意向の確認」が義務付けられています。

 従業員が上司に申し出た際に、誤った案内を行わないよう、管理職を中心に制度の周知をしましょう。研修を行うのも効果的です。

 また、実際に制度を利用しようとする従業員には、不安な部分である給与の減額、社会保険の取扱いのほか、育児による場合には「労働者側のメリット・デメリット」で挙げた制度(報酬月額変更届・報酬月額特例申出)が利用できるかどうかを説明するとよいでしょう。

 短時間勤務制度を適用している際によく起きるのが「フルタイム従業員の不満が溜まる」と「不意に不利益な取扱いをしている」の2つです。

 「フルタイム従業員の不満」は、短時間勤務制度適用者分の業務が、他の従業員に上手く引き継がれていない場合に起こりがちです。

 短時間勤務制度適用者が発生した場合、業務分担を当人同士で決定せずに、必ず管理職が立ち入って、業務内容・業務量を振り分けましょう。

 「不利益な取扱い」には、例えば短時間勤務制度の利用を理由にした解雇・雇用契約内容引下げの強要があげられます。

 ほかにも、短時間勤務を適用したからといって不就労時間分以上の賞与の減額も不利益取扱いとなります。これらは法律で禁止されているので注意してください。

 参考として物流会社の事例を取り上げます。ここは元々男性従業員が多い企業でしたが、運送のほか生活関連事業にも取り組むこととなり、育児中の女性も応募しやすくなるよう、次のように短時間勤務制度を導入しました。

  • 短時間勤務制度を小学校3年生まで利用可能
  • 短時間勤務のパターンを5パターン用意

 短時間勤務制度のほか、時間外労働の免除・深夜業の免除を小学校3年生までにするなど、育児との両立を支援する諸制度を充実させた結果、それまで応募の無かった新卒女性の入社希望が増えました。

 育児・介護休業法上の短時間勤務制度について解説してきましたが、育児・介護以外での場面でも短時間勤務制度を設ける企業が出てきました。

 育児・介護休業法の短時間勤務制度によらず、短時間勤務している従業員のうち、次のいずれにも当てはまる方のことを短時間正社員といいます(参考:「短時間正社員制度」導入・運用支援マニュアル p.3│厚生労働省)。

  • 期間の定めのない労働契約(無期労働契約)を締結していること
  • 時間当たりの基本給及び賞与・退職金等の算定方法等が同種のフルタイム正社員と同等であること

 育児・介護以外でも、例えば通院が必要な従業員、意欲・能力のあるパートタイム従業員などの確保に役立つ制度といえるでしょう。

 短時間正社員制度を設ける場合にも、就業規則の規程は必要となります。短時間勤務制度を導入するための手順に、「短時間正社員の待遇」や「フルタイム正社員との転換」をプラスして検討を進めましょう。

 2022年の育児・介護休業法の改正施行はニュースでも取り上げられることが多いので、従業員の注目度も高まっています。

 2022年10月には、産後パパ育休(出生時育児休業)制度が施行されるので、これから該当部分の就業規則を見直しされる企業も多いかと思います。

 すでに短時間勤務制度を導入されている企業も、これを機に、対象者や短時間勤務パターンについて、より従業員が利用しやすくなるよう見直ししてみてはいかがでしょうか。